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直後、後ろの方から、声が聞こえた。颯爽と足音を立てて優雅な感じでコチラへ歩いてくるではないか。その肩で風を切って歩くような独特の雰囲気。
「やあやあ。どう?一生ものの体験だったんじゃないか?誠くん」
やはり木戸くんだった。
「どうもどうも有難う。君のおかげで悪霊にも敵を討てたし。この子にも感謝されたよ」
俺は感謝と感動を大声で叫んだあと、少女が「エッ?」と声を出した。
「君は……状況が理解できてないみたいだね。えっと。ハルカちゃん?」
木戸くんはまたしても、初対面の人の名前を当てた。いったいこの人は何者なのだろうか?実は神様だったりして、と思いを駆け巡らせた。
「……なんで。私の名前を?」
「俺が、神だから」
木戸くんはこう豪語する。
「神様の、化身なのですか?」
晴香ちゃんと呼ばれたその少女はおそるおそる木戸くんに尋ねた。
「アレ? 木戸くん。最初俺と会ったときは人間だっていってなかったっけ?」
「ああ。人間だよ。ただし、俺は神と同じくらいの力を持ち、神のように崇高だからな」
「そういう事ですか」
晴香は納得する。
それから、木戸くんは俺と同じように、晴香に一から状況を説明した。
木戸くんが戦っていた悪霊が逃げ出してソイツらが俺たちを襲ってしまった事。
そしてそのお詫びにどんな悪霊でも一撃で倒せる必殺ワザの事も。
晴香は飲み込みが早かった。そのため、俺が使ったあの必殺技もすぐに理解した。
そして、俺たち三人は遊びで悪霊を次々とやっつけていこうと決めたのであった。
俺にはまだ木戸くんに尋ねたい事が山ほどあった。あの異世界の事。必殺技の事。彼の生い立ちの事。
まだまだ、素性は謎に包まれたままである。
だが、それはさておき、これから俺たちは至上最強の霊能力者なのだ。
とにかく、俺は確信した。木戸くんは悪いヤツではない。まるでオーラが違うのだ。
次元を超えたその独特さは、妙に崇高であると思える。俺たち凡人とは一線を越えていると直感させるのだった。
その日の夜の事である。俺はまたしても木戸くんに呼ばれてあの異世界へ意識を移動させた。そこには晴香もいた。
「やあ。こんにちは」
「はい。こんにちは」
そして、俺と晴香は黙って少し考えた。
「アレ。確か夢の中で呼ばれたんだよね。じゃあこんばんわか」
俺はそう言った。
「この世界はいつでも朝なんですね」
その時だった。ガラリと扉が開いてやってきたのは木戸くんだった。
その瞬間、俺は扉の向こうがどうなっているのかを知りたい衝動に駆られて立ち上がる。
「ちょっと待った。木戸くんその扉の向こう側……」
そういって扉を開けた。木戸くんは別に俺を静止する素振りもなく愛想よく扉の外側を見せてくれた。ふつうに廊下があった。その奥にまたいくつか部屋がある。
が、さほど殺風景ではなく。生活感あふれる普通の家。当たり前の民家だった。
「……ここ、異世界って本当か?」
俺は尋ねた。
「ああ。でも、間取りは俺の家だよ」
「間取りは、木戸くん家なのか?」
「ああ。俺は元々霊感がずば抜けて強かったからね。小さい頃から見えもしたし戦ってもきた。そして心の拠り所としてこの異世界を俺の念力で創造した」
「すげぇな」
「そういう事でしたか」