表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

第2話の2

 僕は言われるがままに病室を後にし追い掛けた。階段を下り出入口付近まで行くとさっきの女性がバイクに股がっていた。

 あの格好から予想はできたが、さすがに体のバランス的にもでか過ぎるバイクである。

 僕が立ち止まり呆気にとられていると、向こうから手招きをして僕を呼んでいた。急いで駆け寄った。

「自己紹介がまだだったな?俺の名前は

癒梨いえり 汲凪くなび

25歳独身、よろしく!」 腕をビッと振り、親指を立て、軽くウインクをして親近感を持たせたいらしいが、僕は

「は、はぁ…」と気のない返事しか返せなかった。

「取りあえず後ろに乗れ。話は帰ってから聞かせてやるよ。親父さんの事とかな…」

 親父…父親…。僕を殺そうとした父親……

 うつむき、少し考え中の僕にヘルメットを渡し、軽快にアクセルを吹かしている。その音は近所迷惑、騒音公害とでも言おうか、ハッキリ言って騒がしい。

 僕は行くべきか、行かないべきか、ハッキリした回答を出せないままだったが、突き出されたヘルメットをしっかり被り、バイクの後に乗り込み、掴まるところを探してしたら

「僕ぅ?恥ずかしがらずに俺に掴まりな。お姉さんは軟らかいぞぉ」

と謎の台詞を吐いたので素直に掴まる事にした。

「ん、――軟らかい…」

「よし!しっかり掴まっとけよ!―――じゃいくぞ!」

 強烈なホイールスピンをかまし、バイクは走りだした。こんな狭い道でどんだけ飛ばすんだよと言わんばかりのスピードで走りだした。明らかに無謀と言ってもいいぐらいのスピードで走りだした。


――――僕は落ちた。


 バイクは停止しヘルメットのシールドを開け汲凪さんは笑っていた。

「あははははっ、だから言ったじゃねぇか!しっかり掴まってろよって?死んじゃうぞ?それとも自殺志願者なのか?あははっ!」」 僕は服の汚れを払い、怒りの表情を見せながら無言でバイクの後に戻り、力一杯、力の限り抱き締めた。

「ぐぇぇ!痛い!痛い!ごめんごめん、今度は安全運転で行くから!ごめんな!」

 その後は安全運転とは言いがたいが僕を気にしてくれているのは分かるぐらいのスピードで路地を抜け、大通りをひた走り、また路地を走り、僕の知らない場所をひたすら走り、そしていかにも怪しい雰囲気の雑居ビルの前で停止した。「ふぅ、到着ぅ。このビルの三階が俺の事務所だから先に上がっててくれ!バイク置いたらすぐ行くよ」

 目的地に到着したらしい。ビルを見上げる僕。とりあえず、こんな所で見上げていても仕方ないので、言われた通り三階に行くことにした。

 このビルは七階建てのビルなのだが、エレベーターが設置されていなかった。その為に三階は階段。強制労働を強いられる事となった。

『癒梨探偵事務所』

 三階までたどり着き、ドアのガラスに書かれていた文字だ。

「探偵………」

 僕は探偵と言うものをよくは知らないが、何だかカッコいい感じはする。

 ドアノブに手をかけ左に半回転。そして軽く、恐る恐る押してみた。

「開かない…」

 何度もガチャガチャやっても開かない。

「ふぁ〜い。今開けま〜す!」

 中からやる気の感じられない声がし、ドアが開いた。と同時に吹き飛んだ。


――引き戸だったようだ。


「大丈夫ですかぁ?すいませぇんんん…怪我は無いですかぁぁ?」

 「大丈夫です。」と適当にあしらい、顔を上げると目の前にいたのは汲凪さんだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ