第1話の1
「暇だね〜ゆーくん…」
「あぁ、暇だな……いいんじゃない。平和で」
雑に積まれた雑誌やゴミ袋。窓は一つ、カーテンは無い。中央にテーブルとイスが置いてあるが、それ以外特に目立ったものは無い。殺風景な八畳の空間。
ここが僕の部屋だ。
で、僕を呼んだ今にも眠りそうな面をし、
今にも倒れそうな体をし、
そして今、イスに座って足をブラブラさせているのが、
刈谷 香
背中まで伸びたストレートの髪が印象的な女の子。
顔は同年代とは見えないほど童顔だが体の方はと言うと…
顔の真逆で目のやり場に困るぐらいだ。
僕のことをゆーくんと呼ぶが僕の名前にはゆーなんて付かないのになぜか、呼びたがる。辞めろと言うと拗ねるから今はしかたなしに返事をしている。
背中にある大きな切り傷が。
これは、たぶん僕しか知らないだろうけど。
本人も忘れているだろう。
こいつとは友達と言うほど仲が良い訳ではないが、知り合いと言うには違いすぎる。
彼女…全く違う。
昔、同じ時間を二年も共有した仲。
今現在、同居している仲。
友達とか親友とかでは言い表わせないがあえて言うならば、
「共害者」
ってなるのかな?
僕達はある事件をきっかけに知り合い、
二年間も一緒に生活し
また今も一緒に生活している。
お互い無くてはならない存在。文字どおり存在のみが無くてはならないのである。
事件は今から十年前、僕が小学六年生の頃
桜が満開を向える時期に突然起こった。