第2話の6
「あーぁっ。ふぅー、汲凪姉さんは居なくなったようね。あの人といると気疲れしちゃうわ。」
香は大きく伸びをし、腰に手をかけながらしゃべっている。汲凪さんが居なくなった途端に態度が変わりすぎだろ。
「それにしてもあなたはほんっ…と弱そうね?私の仕事の邪魔しないでよね!」
「仕事って何をするんですか?僕には何もできませんよ?」
そう僕の問いにやや呆れ顔で、
「あんた何も聞いてないの?仕方ないわね、説明してあげる!ずばり、あなたの家族の監視よ。ま、汲凪姉さんから引き継いだ仕事ね。所在がつかめない今は残りの母と妹を捜す事からね。」
なるほど、汲凪さんから引き継いだ仕事ならわかった。つまりは生活は保証するから仕事を手伝えと言うことか。
「働かざるもの食うべからず……か」
依頼人は誰なのか?気になったが、誰だろうと僕は手伝わなくては生活がかかっている。ま、聞いたところで教えてくれるとは思わないけどね。
「何よ?文句ある?こっちだって仕事と割り切って、あんた見たいなのと一緒に住んだり仕事したりするんだから我慢しなさいよね!」
そりゃこっちの台詞だ。いくら生活がかかってるからとは言え。僕の苦手な奴、第4位に入るぞ。こいつは…
ちなみに1位は炒瑛菜さんです。ごめんなさい。嫌いじゃないですよ?
「何ボーッとしてるのよ!部屋に着いたら今後の事とか説明するからね!」
「はい!」
思わず威勢よく返事をしてしまった。
「じゃ、さっさと準備しなさい!時間は待ってくれないのよ!時は金なり。この給料泥棒が!」
別に金を貰っている訳ではないが、何かムカつく。反撃開始。
「……香さん。」
「何よ!」
「鼻毛でてるよ。」
「………!」
香は一瞬戸惑ったが次の瞬間には奇声を上げ、顔を真っ赤にし、少し涙目を見せながら部屋に戻ってしまった。
この際、鼻毛など出てようが出てまいが関係ない。本人は指摘されたことをたぶん信じる。あの性格なら尚更だろう。
「ざまあみろ。」
僕はまた部屋に1人取り残され、香が戻ってくるのを待った。
20分ぐらい待ってたら、まさにドンドンと言う擬音語がピッタリくらいの足取りで僕に向かってきた。ま、それくらいは予想済だ。
「あなた!ちょっとふざけないでよ!私が鼻……そんな物出てるわけないでしょ!」
「見間違いだったのかな?ははっ、ごめんごめん」
「見間違いなんてするんじゃないわよ!ふざけるな!笑うな!しゃべるな!」
うわぁ、本気で怒らせてしまったようだ。
「ほら!もう行くわよ!。無駄な時間を取らせないでちょうだい!別の部屋を用意してるから!何ボーってしてるの!本当に調教するわよ!」
仕方無しだが香の言うとおりにしたほうが無難だろう。僕は香と事務所を後にした。
「紅茶のお代わりおもちしましたぁぁぁ!」
その声を聞いたのは二階の階段を降りるところだった。
ごめん炒瑛菜さん。今度飲みます。
僕は心の中でそう思い香と事務所を後にした。
それから
二年がたった―――