傷跡
真夜中を告げる12時の鐘が
頭の中で鳴り響くんだ。
繰り返し、ただ君の事を想って書き綴ったこの『詩(叫び)』が
ゆらゆらと何処かへ消えていくのを
僕はただ虚ろな瞳で見つめるだけさ。
『愛してる』とか
『君を護る』とか
ありきたりな愛の言葉を囁いた。
穢れなく、素直で優しい君に
この『仮面』の下に潜めた醜い素顔を見せないのは
いつかは離れていくものだと知っているから。
繰り返し訪れる季節は巡って
君の居なくなった秋が来た。
ああ、どうして
僕らは出逢ってしまったんだろうね?
所詮僕らは別の人格。
交わることは、ないのにさ。
君の温度の欠けたこの部屋で
今日も眠ったフリをするよ。
『愛してる。』
保存ボックスに残った一行のメールは
君も知らない『本当の僕』。
気付いてしまったんだ。
―僕は君を心の底から愛してた。
馬鹿だろう?
君が居なくなってから気付くなんて、さ。
未送信メールに綴られた言葉は
『ごめん。』
『愛してた。』
たったの二行。
いつもの僕はどうしたんだろうね?
…でもごめん。
愛してる。
君が置いていったマグカップがあった。
思わず苦笑したよ。
マグカップの柄が赤いハートなんてさ。
君の居ないこの部屋に
まだ君のぬくもりを感じた。
愛してた。
…否、愛してる。
どうして、僕を庇ったんだ?
どうして、君が轢かれなければならなかったんだ?
残していったマグカップに
涙が落ちた。
…ああ、明日は君が居なくなった場所へ
君の大好きな季節外れの向日葵なんか持って
君へ伝えに行こう。
『愛してる』
と。
上手く君へと届いたのなら
僕は、幸せだ。
感想、アドバイスなどいただけましたら幸いです。
ここまでお付き合いくださり、誠にありがとうございました。