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連弾のオリハルコン  作者: 常日頃無一文
第1章:レッドハットXX
3/13

第3話:花災流(前篇)

 ギルド『レッドハットと愉快な仲間達』はこれから帝国を離れ、遥々海を越えて花見に行くと言っても、大筋においてその意味を違えていない。

 まだ語られていない事であるが、野良々が元々暮らしていた極東の国『大和』は、四方を海に囲まれた島国である。そして彼女自身、たびたび好んで漁師の船に便乗していたので、半日も海に竿を垂れて揺られて過ごすと言う日も、ことさら珍しくなかった。故に問題なし。

 飛鳥はそもそも、ゼンマイ式給士型メイドの特性として、あるいは使用人スキルとして、その弊害となる様な『船酔い』に類する機能はオミットされている為、彼女も同上。やはり問題なし。

 勿論のこと、この時化の中を巧みな操船技術と、阿吽の呼吸で帆を張り風を読む船員たちなど、言うに及ばす。

 そうすると、右へ左へ揺れる船室にて、朧なランプの明りの中、桶に向かってラージトードーのようにゲーゲーと呻いているのは、消去法的にギルド『レッドハットと愉快な仲間達』のギルドマスター、XXその人である。

 酔ってごまかそうと煽った葡萄酒も、無理して食べ終えた海の幸による夕食も、脱水症状にならぬようマメにとっていた水分も、今は全てこの桶の中である。

 次の依頼地が、住み慣れた大陸の南に位置するコルネリオ島と聞かされた時、XXは碌な検討もせずに遊軍ギルドカード『アリシア』を発動した。

 すると確かに、騎士に二言はないようで、彼女はすぐに愛馬に乗って単身参上し、大陸南岸までのルート設定とその旅程を作成し、移動手段には駿馬四頭を確保してくれた。

 七日の長旅を経て港につくと、岸壁には既に大型の軍船が手配されており、その巨体を波に揺すっていた。アリシアはのみならず、さらに全員分の帝国出国手続きから、コルネリオ島上陸許可証の発行までを、もう事前に済ませているという手際の良さだった。

 そしてさぁ一団は乗り込もうとして、一体何が詰まっているやら、港で揃えた大きな手荷物を上機嫌に運び入れようとしていたアリシアに対し、その肩にポンと手を置いたのはXX。

 ――。

「いやぁほんと助かったぜアリシア。あ~りがとぅ! ほんじゃまぁ見送りはこの辺で良いから」

 そうして港を離れていく船と、そこから手を振る笑顔のXXに対し、アリシアは大陸の南岸より大きな声で

「二度と帰ってくるな~~~! あほーーー!」


 そんな訳でコルネリオ島である。

 船内三泊四日を経て辿り着いた頃には、もうXXは身体中の水分のほとんどを桶に放ってカラカラに干からびており、グッタリと飛鳥に背負われての上陸となった。

 天候は生憎の曇り空。

 鬱蒼と茂る密林と、南国特有の極彩色の花々も、今は少し陰って見えた。天候との合わせ技で湿度がやけに高く、肌に張り付く空気は蜜のようで不快である。

「防腐剤、大丈夫やろかなぁ」

 野良々はギルドを代表して、コルネリオ島上陸許可証を村の入口門で提示しつつも、暗色の空に我が身を案じた。

 門衛が、彼女の差し出した三人分の許可証と、ギルドメンバーとを見比べ、確認を取っている。

「人間が一人、ゼンマイ式メイドが一体、アンデッドが一体か。ふむ、メイドに背負われているのがアンデッドだな?」

 言われて野良々が振り返ると、目をパチクリとさせている飛鳥の背には、ヨレヨレのXXが半ば息絶えていた。ときおりゾンビのような呻き声をあげては、飛鳥にヨシヨシと揺すられている。最高に格好悪い我らがギルドマスターに、彼女は苦笑しつつ、

「いや、あれが人間やねん。ギルドマスター。それで、ウチが死に損ないや」

 と親指で自らを指す。門衛がニヤっと笑った。

「……そうか。しかし、妙に生き生きしてるなあんた。アンデッドにしとくにゃもったいない」

「へへ。よう言われるわ」

 許可証にダンと『認可』の印を押してから、門衛がそれを野良々に返す。彼女は「おおきに」とそれを受け取る。

「待合酒場グウィンドリンは、村に入ってすぐ左手だ。依頼はもう大陸で取って来たと言うからには『カサイリュウ』に挑むんだな?」

「そうやけど、えっと。ウチら以外には誰かおるんかな? コルネリオの仇花やろうっていうのは?」

 門衛は頷く。

「お前さんらみたいな命知らずのギルドがもう一つだけいるね。ウッド・エルフ50人からなる『エレガント・ナルシスト・コンフィデント』。略して『エレナコ』だ」

「え、エレガント……、なんやその脂っこい名前は?」

 野良々は眉をひそめた。

「ああ、俺も聞いた時は笑いそうになって、堪えるのに必死だったよ。……しかし『洗練されて・自己陶酔で・自信家』だろ? ウッド・エルフにはピッタリじゃないか。で、今そいつらは待合酒場にいるよ」

 『森の守護者』の異名を持つ、ウッド・エルフ。

 一所に定住せず、森から森へ移り住む彼らには、天性の弓術が備わっており、その腕前は目隠しをしても、矢は生き馬の目を抜くと言われている。

 一見は人と変わらぬが、髪が絹のように白く、滑らかで、そして耳が異様に長い。そして総じて細身長身の美系である。しかしウッドエルフの一番の特徴は、その外見ではなく、内面にある。彼らは偏執的な選民思想といえるほど、自尊心が高く、見栄っ張りで、自己陶酔的である。さらにはそれが高じて、他の種族を徹底的に見下す事で良く知られている。

 門衛が苦笑する。

「だから、用事がないなら酒場にゃ行かない方が良いかもな。ウンと離れたとこに宿をとんな。『カサイリュウ』に挑む前に戦意を殺がれたくないだろ?」

 そうして三人、村へと入る。

 見上げると、村を覆う暗雲よりも、さらに遥かに天高いであろう一本の大樹が、遠景に聳えている。

 この島全体に枝葉を巡らせ、鬱蒼と茂らせ、あるいは花々で彩っているのが、まさかこのたった一本の仕業であるとは誰も思うまい。

 万年に一度のみ満開となり、そして散ると言われる神花『呪咲のコルネリオ』。

 付ける無数の花々は、小さいものは小指の先に始まり、大きなものは花弁一つで村一つにもなると言う。色や形は七色で、数は不可思議。それらは一万年をかけて花開き、咲き乱れ、しかし散るとなると一斉、僅か一日である。

 それらのもたらす、通称『花災流』の被害は、語源の『火砕流』の比ではない。

 怒涛となって押し寄せてくる七色極彩色の大津波は、島そのものの形を変えるほどの物量であり、島のみならず周辺の海域にも巨大な津波を巻き起こす大災害である。

 防ぐ術は唯一つ、神花の『最初の苗』を刈り取る事。

 太さ大きさは、青竹一本程と言われており、伐採にはさほどの労力は必要としないと目される。ただし、場所がしかし、大樹の根幹にあるとか、天辺にあるとか、そういう有り触れたものではなく、今は全くの不明。可能性となるのは、まさにコルネリオ島全体で、文字通り草の根を分けての探索となる。

 最もこの方法とて、一万年前の伝承であるから、成功したところで『花災流』が止まると言う確証はない。コルネリオ村の村長が、書棚より引っ張り出してきた虫食い本の一節に、そうあるだけのことである。

 ちなみに一万年前は、これに挑んで失敗している。

 挑むのは大層悪い賭けである。

 それに大災害とは言え、それを主に被るのは南海の孤島である。村一つが潰れ、周辺の魚が数世代に渡って獲れなくなるが、しかしそれだけと言えばそれだけの事である。別段、他の大陸や島々に取っては如何ほどの事でもない。

 ならば何故、わざわざイージスのアテナまでを騙し打ちしてまで――いや別に嘘はいってないぜ@XX弁明――、ギルド『レッドハットの愉快な仲間達』が、こんな依頼を受諾したのかと言えば、

「おめぇ、後先の事考えた事ある? そんな楽しいピクニックみたいな依頼がな、15000Gで酒場に張られてたりするわけないでしょうよ?」

 村の東端にある安宿の一階にて、愛銃キャリッジリターンに油を差しつつ、まだ顔色の悪いXXはぼやいた。それを受けた飛鳥はションボリと項垂れつつ、

「ごめんにゃさい……」

 と謝った。要するに、ビスケット村に引き続いて飛鳥の独断である。

 ギルドの依頼受諾は、ギルドの誰であっても可能であるが、もちろんギルドマスターの許可を得て行うのが常識である。何故なら一度請け負った依頼を破棄する時は、ギルドライセンスを返上する時だからだ。こんな風にギルメンが独断受諾を二度も行い、それをギルドマスターが説教しつつも了承している例は、世界広しと言えどここぐらいのものだろう。

 当人は言ったところで否定するだろうが、少なくとも野良々の見立てでは、XXはギルメンにとことん甘い。明日こそが今生の別れとも知れぬ、使い捨ての雇われ兵であるはずのギルメンを、まるで家族身内のように慮り、大事にしているのだ。それはもうアホと形容して差し支えのないレベルである。何せ、彼のギルド手帳には飛鳥と野良々の誕生日が、しっかり赤でマークされているのだから。

 何でも飛鳥曰く、『っしっしっし、ノラリスや。誕生日の前日にはねぇ。欲しいものをご主人様の前で連呼しまくるに限りやすぜ?』だそうである。

 そうして試しに、丁度タイミング良くと言うべきか、先月が野良々の誕生日であった為に、彼女は夕食の席で、『あ~、そう言えば愛刀『撫子』の具合悪いなぁ、ラージトードーの油欲しいなぁ』とワザとらしくボヤいて見た。その結果、翌日のXXの対応に、彼女はアホかと思って泣きたくなって、泣いた。

 誕生日の朝、野良々が宿のベッドで目覚めたら、頭元にはリボンで包まれた箱があった。ベタベタである。彼女は『メンテナンス用品にリボンって』と苦笑して水色の包装を開いてみたら、しかし中にはピクシーの薄羽で作られた髪飾りが入っていた。

 手に取り、ポカンとなっていたらノックの音。慌てて後手に隠して

「あ、あいよ?」

 と返事をすれば、XXが「おはようさん」と入って来て、それから小鬢を差し出してきた。

「ほれノラコ、前にオメェが言ってたヤツだよ」

 野良々が、髪飾りを隠し持っている逆の手で受け取って見ると、それは濁りのない、透けるような琥珀色をした上質の油で満たされていた。

 知っている。これはラージトードーのものではない。希少価値の高いプライムトードーの油だ。

 XXは野良々の鼻をつんと指差し、そしてやや説教めいた口ぶりで言う。

「いいかノラコ。こういう命に関わるのは前もってサクサク言えよ? ギルドの必要経費としてやりくりするから遠慮すんな。おめぇらは身体が資本なんだからよ。で、こういう細々したところが命取りになったりするわけだ。油一つケチって死ぬような目に遭ってみろよ。お互い泣くに泣けねぇぞ? ま、説教はこんぐらい。で、それでだ。他に何か入用なもんあるか? これから俺、ちょうどラインフィードの弾殻買いに行くからついでに――」

「旦那って、アホって言われへん?」

 野良々は苦笑した。そしてその表情に「あん?」と怪訝な顔をしたXXだったが、やがて思い至り

「げ! まさかその油使えねぇのか!?」

 と真っ青になった。野良々は苦笑したまま頷いた。XXは片手で帽子の上から頭を抑えて俯き、嘆息。

「……マジかよおい。刀鍛冶のオッサンには極東の刀に一番効くヤツ頼むって言ったんだぜ? それで少々値が張るのもおしてきたっつうのに……まぁ確かに胡散臭いオッサンだったんだが、腕だけは確かだったもんだからついよお」

「ははは。こんなんで手入れすんのはな」

 苦笑した様な表情のまま、彼女はグスンと鼻をすすり

「床の間とかに飾る、名刀や宝剣ぐらいやで?」

 熱くなった目頭を拭いつつ背を向けた。このところ、と言うよりXXと行動を共にするようになってから、どうも野良々は涙腺が緩くなっている。飛鳥にしろXXにしろ、どうしてこうもしょっちゅう、自分を泣かせに来るのだろうか。

「ウチの数打ちの太刀なんかにな、……使われへん」

「ばーか」

 XXの声。

「宝剣だろうが名刀だろうがな、飾ってるだけじゃナマクラと変わんねぇんだよ。おめぇみてぇに前線に出てな、オークやコボルトやワイバーンなんかも紙きれみたいにスパスパやっちまう奴が持ったら、枝キレだって業物なんだよ。だから、ほれ。使えるならジャンジャン使え。使えねぇなら今から一緒に見に来い。それとよ」

 XXは続ける。

「実はそれのほうがもう少し値が張ってる。まぁ、気にいったから買っちまったが、よくよく考えたら男の俺がつける訳にもいかねぇし、飛鳥はカチューシャついてるしな。悪いがもらってくれ、それ」

 本当にワザとらしい。馬鹿みたいにワザとらしい。見はしなかったが、何の事かはもう分っている。だから野良々は隠し持っていたそれを、ピクシーの髪飾りを、前髪を横にまとめるようにして止めた。しかし、たぶん。自分の目は赤いし腫れているだろう。それに小さな髪留めとは言え、着飾るのは久しい。だから恥ずかしい。けれども

「……ど、どないやろか?」

 自分が出来る事と言えばこの程度で、だからそうして振り返ったら

 パン! 

「ふわぁ!?」

 乾いた音と共に飛んできたカラフルな紙テープに思わず飛び上がると、入口では不立文字飛鳥がパーティークラッカーを握っていた。彼女は天使のような笑顔で

「ハッピーバスデイ! ノララ!」

 XXはポカンとしている野良々の顔を、顎に手を当ててマジマジと見つつ、そして髪飾りを見つつ

「うん。なかなか。悪くねぇな」

 恐らく野良々はこの時、顔が真っ赤だった。けれども、恥ずかしさよりもずっと上の感情があったので、だからそれを、素直に笑顔で以て口にする事が出来た。

「へへ、おおきに」

「さすが俺のセンス」

「自画自賛かいな」

 オチつきだった。XXはさらに腕を組み

「オメェは確か、えっと。14で一旦死んでそこから15年だからトータル29年か。29歳? それとも14歳? 29なら俺より上、そうでないなら下だな。どっちがいいよ?」

 へ? と彼女が頭にハテナを浮かべたら、XXはニヤっと笑った。

「ぶっちゃけるとケーキのロウソクの数だ」

 野良々はショックで茫然となった。

 しかしそれに気付かず、飛鳥はいつもの無意味なシタリ顔で「ちっちっち」と人差し指を左右に振り、

「へっへっへ。可愛いノラリスが29だなんて神様が許してもあたしが許さないんだぜ? そんなわけで今日は14のお誕生日で! なのでロウソクは14!」

「ん~安易じゃね? やっぱりここは実年齢で29の方が正しいような」

「ダメです! 野良々ちゃんは14!」

「いやだからその根拠がだな」

 と、不毛な事を言っている二人に

「……い、いや、別にどっちでもええけどさ。……その、一つお願いしてええ?」

 辛うじてそんな声を出してみたら、二人は顔を見合わせてキョトン。が、しかし。何かに思い至ったようで二人手を打ち、再び野良々の方を向いて

「おう、言え言え。どうせお前が食うんだ。チョコか? フルーツか? チーズもいいぞ? 昼間ならそういうのもいけんだろ?」

 XXはヒドイ勘違いをしていて

「アタシは野良々ちゃんの出身考えたら抹茶もありだと思うんですよ。いや、あるいはケーキじゃなくてヨウカンとかドラヤキとか!?」

 飛鳥もヒドイ勘違いをしていて

「ヨーカン? ドラヤキ? なんだそりゃ? 極東の食いもンか?」

「調査不足だね~ご主人様は。それでお誕生日サプライズとかどの口で仰いますやら」

「あ~もう良いよ今回は。折角本人がリクあるって言ってんだそれ聞こうぜ。で、ノラコ何食いたいよ?」

「いや、そんなんやのうてな……ははは」

 アホな話をしている二人の前で、とうとう野良々は堪えられなくなり、顔を両手で覆ってしまった。

「これ以上、ウチを泣かせんでよ……。笑わせんでよ……ははは。……ったくホントに」

 本当にアホらしくて、笑ってしまいそうで、嬉しくて泣きそうな、そんな馬鹿みたいに幸せな一日が、彼女に刻まれた。

 まぁまぁそんな事が先月にはあったのである。


「ちょいと酒場の耳長に挨拶してくるから、ノラコが倉庫から戻ったらそう言っといてくれ」

 XXは立ち上がり、腰に銃を納める。野良々は今、手持ちの防腐剤を湿気から守る為に奮闘中で、宿にはXXと飛鳥しかいない。

「ご主人様。あの、エルフさんのとこに行くんですか?」

 扉のノブを握っているXXに、飛鳥が心配そうに問う。彼女もウッド・エルフの性格の悪さは良く知っているので、それを気にかけているのだ。XXは肩をすくめた。

「これから見通しの悪いコルネリオの茂みの中をうろうろするんだ。『獣と間違えて誤射』されたって文句は言えねぇだろ? それの予防線張っておくんだよ。なに、心配いらねぇよ」

 そうして宿を出た。

 このメンツの中で、ウッド・エルフ達がまともに口を聞いてくれるのは、間違いなく人間であるXXだけである。ゼンマイ式メイドの不立文字飛鳥など、目端にも入れてくれないだろうし、アンデッドの野良々に至っては、即切り捨てられても不思議はない。

 最も彼らは人間でさえ犬猫としか思っていない為、XXとて酒場で歓迎されることはないだろう。犬猫とは例え愛玩用に飼育しているものあっても、表に待たせるものであり、食卓にあげていいものではない。まして見知らぬ犬猫とあらば、それは言わずもがな。不快だからという理由で射殺しても、誰も文句は言わない。なのでXXは命がけである。しかし、それでも今ならばまだマシである。戦場でいきなり鉢合わせする事の方が、よっぽど具合が悪い。彼らは狩りの目障りとあらば、人間程度、躊躇いなく矢を射かけてくるだろう。鬱蒼と茂る見通しの悪いコルネリオ島で、それは絶対に御免である。

 なので彼は、善後策として、自分達を『知っている犬猫』ぐらいにはしてもらおうと、そういう事情で、待合酒場グウィンドリンのドアノブを握る訳である。

 カランカランとベルの音を立てて、XXが扉を開けると、一階テーブルの全ての席を、既にウッド・エルフの連中達が占有していた。

 冷たい目線の矢が、XXに突き刺さる。

 まず慌てて飛んできたのは店の親父で

「お、お客さん! 今はエルフの皆さんがお使いなので、き、今日のところは」

「悪いがその挨拶に来たんだわ。なぁに迷惑はかけねぇよ」

 親父の肩をポンと気さくに叩き、中へ。

 店内をあからさまに不歓迎と軽蔑の沈黙が支配し、それの色がより濃い視線がXXに集中する。しかし、彼はその中をひょうひょうと歩き、リーダーと思しきエルフの元へ向かった。

 見分けるのは易かった。

唯一人だけ、XXを見ようともしないエルフがいたのだ。

 犬猫は愚か、精々、虫一匹入って来たというぐらいの感覚であろう。

 XXは帽子を軽く持ち上げて礼をし、

「お初にお目にかかるぜ。俺はギルド――」

「通訳を通してくれないか。虫ケラの言葉は解せぬ」

 目もくれずに、彼はそう言い捨てた。そして手元の酒を煽って、コトンとテーブルへ置き、一つ息を吐く。

「叩かれる前に失せろ。気に障る」

 周囲から、低い失笑が聞こえて来た。

 予想済みの対応である。

XXは「通訳ねぇ」と肩をすくめた。

「まぁそう言わずによ、同じ依頼を受けた者同士、一つ仲良くしてくれ。挑むんだろコルネリオに? こっちは俺含めて三人なんだが――」

 ピチャっと、そのエルフが煽っていた酒がXXの顔にかけられた。彼はさらに、その手に持ったコップを覗きこみながら

「……汚いな。折角の蜜酒に虫ケラの息が入った。おい、犬。さっさと代わりを持ってこい」

「へ、へい。ただいま」

 と、店の親父の忙しい足音が厨房の方で響いた。どうやらここのウッド・エルフ達は、店の主人を犬と呼んでいたらしい。

 XXは顔に張り付く酒も拭わず突っ立ったまま、二度三度頷き――と既に、そのエルフの額にはキャリッジリターンの黒い銃口が突き付けられていた。

 周囲のエルフ達がすぐさま立ち上がってXXに弓を構え、しかしリーダーのエルフは、部下達に軽く手を挙げて制す。

「……そこそこ早いな。流石はハエ」

 と軽口を叩き、大口径の銃口にも顔色一つ変えず、足を組んで不敵に笑った。XXも笑う。

「エルフの頭蓋は、50口径のオリハルコンを至近距離で喰らっても平気なのかい? 厚いのは面の皮だけじゃぁなかったんだな」

「図に乗るな虫ケラ。当りもせんものに」

 発砲音。

 カランカラン……と、薬莢の落ちる音。

 XXは引鉄を引いた。

 しかし当らなかった。

 交わしたのである。

 この距離でエルフが首を捻って交わしたのは、脅威的な反射神経と言う他はない。XXも微かに驚きを顔に出し、「ヒュウ」と口笛を吹いた。だがしかし、今度こそ。エルフのリーダーの顔からは余裕の笑みが消えていた。

 その白い額には、薄らと汗が滲んでいる。

 交わしたその先に、既に銀のラインフィードの二つ並びの銃口が、ゴリっと額に押し当てられていたから。

 その引鉄も引かれていたら、今自分の頭はなかった。

「そこそこ早ぇな。流石は耳長」

 キャリッジリターンのみを下げ、XXは意趣返しの様なセリフを口にした。

「こっちの銀色は本来長物だ。それも対物(アンチマテリアル)だ。この距離ならオークを踵から撃ったって脳天に花が咲くぜ? ……良かったな」

 XXはさらに不敵に笑った。

「虫ケラが慈悲深くてよ?」

「き、着様……!」

 ウッド・エルフのリーダーは、部下の前で人間如きに面目を潰された屈辱に端正な顔を歪め、そして真っ赤に面相を染めた。すぐにでも殺してやりたいが、しかし次のアクションが起こせない。この人間が唯のハッタリでないのは、今ので十分に分ったから。

 自分はこの距離でも、恐らく銃弾を交わせる。交わせるが、交わした先でもう一丁を撃たれるだろう。

 撃たれたものを交わした先も撃たれる。

 そうなると、もうどうしようもない。至極単純な理屈ではあるが、しかしそれは極めて精度と速度の要求される神業である。言って簡単に出来るものではない。しかし今しがた、目の前の人間はそれをやってのけている。もちろんマグレかもしれない。が、そうでなければ、賭けに出て失うのは命である。簡単に乗るには代償が重過ぎる。

 部下も動けない。

 何せリーダーの命が掛かっているのだ。やはり勝手に矢を射かけるなど、そんな賭けには誰一人として出られない。

 その意味で、彼がここに辿り着いた時点で、大方の勝敗は決していたのである。たかが人間如きと侮っていたその心が、既に相手にチェックメイトを与えていたのである。瞬時にリーダーを見破り、警戒心を一切抱かせずに接近を許し、そしてこの早技。相当の手合と認めざるを得ない。

 ――――ぬかった。

「と、まぁ冗談はこんぐらいにしてだな」

 XXはそうした場の緊張など微塵も解さぬ様子で言い、アッサリと両方の銃をホルスターにしまった。それから何か言いかけた時、バンと乱暴に扉の開く音がして

「大丈夫か旦那!?」

 という野良々の声にXXは『しまった』と振り返ると同時、つがえっ放しだったエルフ達の矢は一斉に玄関扉に放たれて

「野良々!! っぐ!?」

 隙を突かれたXXは、一人のエルフに後ろから肩関節を決めるように固められ、テーブルに頭を叩きつけられる様に拘束された。

 それでも肩の関節を軋ませつつ、歯を食いしばって顔をあげると、入口扉では無数の矢が刺さった棒立ちの死体少女――――はいなく、ザーっとそれらがバラけて足元に落ちて、木屑となって積もっていた。

 カチンという、冷たい納刀の音。

 目にも止まらぬ抜刀術で、彼女は飛来する矢の全てを斬り伏せ、叩き落としたのだ。

 隣には、身体の前にデイジーを盾として構えた飛鳥もいる。

 まさに敵中のように、彼女の青い瞳は鋭くすがめられている。

 咄嗟の機転と技術で、二人は一命を取り留めたが、しかし窮状は何も変わらない。XXが今や人質となっているし、エルフ達も第二の矢を番えていて

「待てい!」

 怒声は、エルフのリーダーである。

 XXが見上げると、その顔は煮えたぎったマグマのように紅潮し、肩まで震わせて怒り心頭の様子だった。明らかに逆鱗に触れられた様な、そんな激情に見える。

 目線の先は、アンデッドの野良々。

 人間にさえ卑下され、軽蔑されるアンデッドの野良々が、よりにもよって自尊心と優越と、傲慢の塊の様なウッド・エルフの前に現れたのである。それは考える間もなく最悪で、考えれば致命的だった。

 リーダーは既にXXなど眼中にない様子で、ダンと席を乱暴に立ち上がり、ズカズカと玄関まで歩いて行き、野良々の前で仁王立ちした。そして彼女を真正面から睨みつける。

 野良々もまた、前に庇い出ようとした飛鳥を制し、自分よりも遥かに背の高いそのウッド・エルフに、剣豪ならではの鋭い眼光を放つ。

「えらい物騒な歓迎するんやな、エルフってのは? 頭の悪いオークでも、もう少しはマシやったで?」

 彼女の挑発に、いよいよ顔を紅潮させるウッドエルフのリーダー。しかしさらに、彼女は小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、

「森の守護者やって? 笑わせんなや。どう見たかってこんなもん、森の狼藉もんやろ?」

 吹っかけるように言った。彼女はウッド・エルフ達の注意を、XXから自分に向けようとしているのである。最善かどうかは別として、これは極めて冷静な判断と言える。まだ二人は、XXとの関係をこの場では明らかにしていない。故に上手くいけば、XXが人質となっていることを悟られず、状況を運ぶ事が出来る訳である。

 しかしもちろん、そんなことをして野良々が無事に済む訳はない。だからXXは顔を強引にあげて

「お、おい! エルフの――」

「お黙り虫ケラ」

 XXの喉に、冷たい曲刀の刃が添えられた――この段になって、彼は自分を拘束している万力の様な力が、女のエルフによるものだと気付いた。

「お前の始末はね、死に損ないの後なの……フフフ」

 女のエルフは、その端正な顔をXXに寄せ、妖しく残忍な微笑みを浮かべた。

 同時、ついに忍耐の限界を超えたか、真っ赤な顔のリーダーは腰に帯びていた曲刀を抜いてそれを野良々に差し向けようとし、同時に彼女も剣のツバをキンと起こし

「この剣を捧げますユア・ハイネス」

 しかしエルフは剣を捧げ持って跪いた。

「……」

 ――――――――は?

 その場の全員が、同じ一字を頭に浮かべた。

 野良々はそして。

 目の前で片膝をついてるエルフのリーダーに。

 身に染みついた抜刀癖さえ消失し。

 目を点にした。

 そして彼は。

 エルフのリーダーは。

 顔を真っ赤にしたまま。

 野良々のその目を見つめる。

「これより私、テノール・ブリリアントは身も心も運命も未来も栄誉も、その全てを貴方に捧げる事をここに誓います。ユア・ハイネス、貴方が望むのならばこの耳を削ぎ、この髪を払い、この弓を捨て、翼竜の巣に飛び込む事もいといません。ユア・ハイネス、これより私は貴方の剣となって貴方の敵を払い、貴方の盾となって御身を守り、貴方の目となって良きを見定め、貴方の耳となって良きを聞き、貴方の手となり足となり、勝ち得る栄光を全て勝ち取り、その全てを貴方に捧げます。ユア・ハイネス、貴方が負うべき業の全ては私が全て負い、その全てを購い、その全てを全うすることをここに誓います。ユア・ハイネス、私の何もかもが貴方の何もかもと比べて卑しく、浅ましく、取るに足らず、惨めであれど、滑稽であれど、しかしこの心ばかりは貴方に劣らず純真で、純粋で、真実のものです。ユア・ハイネス、この熱き心を語るには100万言でも足りず、綴るには10万行でも及びません。ユア・ハイネス、どうぞ私に一介の下僕として貴方の側に傅き、侍り、そして生涯に渡ってお仕えする栄誉を、どうかお授け下さいませ。ユア・ハイネス」

「ふぇ!?」

 そして彼は、剣を思わず受け取っていた野良々の手を恭しく両手で取り、その小さな甲に口付した。

 野良々は今完璧に混乱している。ものすごく混乱している。それを察したリーダーのエルフが言う。

「長々と失礼致しました。端的に申し上げます。愛しています。結婚して下さい」

 エルフは全員弓を落としてぶっ倒れた。

 XXを拘束していた女もぶっ倒れた。

 XXもぶっ倒れた。

 野良々は顔を真っ赤にして硬直した。

 エルフのリーダーは真摯な眼差しをキラキラと向け続けた。

 飛鳥ばかりが、一人。呟いた。

「……………………恋って、すげぇ」

 言い忘れたが、ウッド・エルフはロマンチストであり一目惚れ体質である。


 その夜は大変な騒ぎとなった。待合酒場グウィンドリンの上座にて、世にも気高きウッドエルフと、世にも卑しいアンデッドが並んで座ると言う、世にも希な構図が描かれていた。

「ユア・ハイネス、コルネリオの100年花より獲れた極上の蜜酒などいかがですか?」

 と、熱病に浮かされたような顔をしながら、テノール・ブリリアントは黄金色に輝く美酒で満たされた盃を、野良々へ捧げ持っていた。彼女はでも、赤面しつつそれを両手で丁重に制止して

「い、いや、その、あの。ウチ、えっと、ぼ、防腐剤しか、今は、あ、あかへんっていうか」

「おおユア・ハイネス。これは至らぬ事を申し上げました。花も恥じらい蝶も羨む貴方に、卑しい私どもが口を付けた飲み物など、お気に召す訳もありませんでした。どうかこの大罪をお許し」

「ち、違う違う!! そんなんやないって!!」

 慌てて両手をサカサカ振っている野良々に、ギルド『エレナコ』のマスターであるテノールは、ただうっとりと見つめるばかり。彼女はその視線に耐えきれず、緊張で固まりつつ、視線を左右に泳がせて

「て、ていうかな。うちってアンデッドやのに。こ、こんなところにおったら、ほ、ホンマに、え、縁起悪い――」

「おおユア・ハイネス。このようなみすぼらしい席に貴方を繋ぎとめている私の大罪をお許し下さい。もしもアンデッドでなければ御隣に侍る事を許さぬと仰るのでしたら、すぐにでもこのテノール、この刀で喉を突いて」

「ちゃうーー!!!」

 本気で腰から曲刀を抜きかけたその手を抑え込み

「そ、そんなんアカン! 勝手に死になや!!」

 野良々は必死である。マジで死んでるだけ説得力アリアリである。そしてそんな彼女の手を両手でヒシと握って

「おおユア・ハイネス。このテノール・ブリリアント、貴方が死ぬなとそう仰られるのでしたら、例え千年万年億年の時を経ても今と変わらぬ姿でいることをここに――」

 というようなやりとりを、半ばヤケ酒を煽りつつ見ているのは、一番遠く離れた席にいる『エレナコ』の副リーダーであり、テノールの実姉であるソプラノ・ブリリアント。そしてそのヤケ酒に付き合っているのは、彼女に以前、曲刀を突き付けられていたXXである。

「なぁ、もうそんぐらいにしておいたらどうだ? ソプラノさんよ」

 さっきからもう、リッター単位でガンガンと酒を飲んでいる、この対面に腰かけた美しいエルフにXXは気遣いの声をかける。

 しかし彼女は「ああん!?」と噛み殺してきそうな目つきで彼を睨めつけ

「うっさいわね虫ケラ。……ヒック。あんたは黙って、私と同じペースでグビグビやってりゃ良いのよ」

 と、XXのコップに並々と酒を注いだ。

「……。ヒック。こんな極上の酒を、ただで飲めるんだから、ヒック。素直に喜びなさいよね虫ケラが。……はい乾杯」

 XXは言われるまま「はぁ、まぁ。そりゃ感謝だけどよ」と、コンとコップを当てる。

「特に、あのゼンマイ式の食費浮くとかまじで大助かりなんだが、良いのあれ?」

 一気飲みをしているソプラノを見つつも、彼がクイクイと親指で指した先では、周りのウッド・エルフをドン引きさせる勢いで、本来は給仕役のはずのメイドが、片っ端から皿の料理をドカ食いしていた。

 皿が両脇に次から次へ積み上がり、あっという間に山が出来て、それを親父がホクホク顔で下げて行く。しかしながら親父はホクホク過ぎて、もはや理解不能で、何だか目眩を覚えていた。なにせ店の半年分の売り上げが、既に彼女により消費されているからだ。ちなみにこれらは全て、ギルド『エレナコ』の経費で賄われるとのこと。

 無論、それには野良々も気遣っていて、横目でチラチラと見ていて、一応は声をかけておこうと

「あ、あ、あの、えっと。て、テノール……さん?」

「おおおお!?!?!? ユア・ハイネス!!」

「は、はい!?」

 ハシっと両手が握られて野良々がビクン。

「この卑しい私目の名前をお呼び下さいましたか!?!?」

「ふぇ!?」

 いちいちコレに付き合っていたら、遅々として話が進まねーので、彼女はそのまま、手を握られたまま本題へ。

「え、えっとな。その……う、うちの飛鳥がな、あ、あんなに好き放題食べてても……ホンマにええのん?」

 と目線の先では、ゼンマイ式がもうドンドコドンドコ、皿を空にしては下げさせると言う作業を、もの凄い勢いで繰り返していた。

 しかしテノールはニコリとし

「そんな瑣末な事など御気になさらずとも大丈夫です。ユア・ハイネス。貴方の御友人に御もてなしをさせて頂ける栄誉をこの身に――」

 XXはソプラノに御代りを要求され、視線を戻して突きだされたコップに蜜酒を注ぐ。

「随分羽振り良くやってるが、マジで大丈夫か? あんたんとこのボスは?」

 ソプラノは今や突っ伏すように、ベッタリとテーブルに張り付いているが、しかしまだコップからは手を離さない。

「ええ。このギルドだって、ヒック。弟が道楽でやってるようなもんだから。……金なら捨てるほどあるわよ。ヒック」

「ありゃ弟さんかい」

 確かにここから見るテノールは、ソプラノと似ていると言えば似ていた。どちらも非の打ちどころのない、美形であるという点で。

「そ。あれが弟……あ~あ、参ったなぁ。テノールの物好き奇行には一族も諦めきってたけどさ、よりによって人間のアンデッドに一目惚れだなんて。ヒック。今度ばかりは、もう完璧に見放されちゃうわね……何してんの虫ケラ? さっさと飲みなさいよ? あたしがついでやった酒呑めないっての?」

 ジト目にせかされ、XXはグイと開ける。

「……ふん。まぁ飲みっぷりは認めてやるわよ、人間」

「どうも。虫ケラから人間に昇格とはありがてぇわ」

 XXが置いたコップに間髪入れず、ソプラノがなみなみと酒を注ぐ。

「でも、調子乗ってたらまた虫ケラに格下げよバカ」

 そうして憎まれ口を叩いて、またグビグビと細い喉を鳴らすソプラノ。

「……」

 XXも、まぁ彼女の気持ちは分らないでもない。ウッド・エルフの感覚からすれば、人間などハエにも等しい存在なのだろうし、ましてそのアンデッドとなれば、ハエの死体ぐらいにしか思っちゃいないだろう。あるいはむしろ、動くだけもっと不快で、鬱陶しい存在と言えるかもしれない。言うなればハエのゾンビである。

 そんなものに対して、他の者ならいざ知らず、よりによって実の弟が熱烈な求婚を申し込んだ訳である。それも唐突にである。ヤケにもなろう。

 そうして考えてみれば、この一見自暴自棄のように、ヤケ酒を喰らって怒りを抑え込もうとしている行動は、あるいは不思議と冷静な対応の様に思えてくる。発狂して弟なり野良々なりに斬りかかっても、不思議はないぐらいの事なのだから。

 コトンと、コップがソプラノの手から転げた。彼女も同様にテーブルに突っ伏し、顔を横に向けている。

「ヒック……今回の依頼だって、世界一の花見をみんなでしに行こうとか。……ヒック。そんなバカみたいなノリで受諾したのよ、うちの弟はさ」

 ソプラノの切れ長の瞳が上に流され、XXに向けられる。

「流石のアンタでも、笑っちゃうでしょ?」

 XXは帽子の上から頭を掻き、

「あーー、まぁ」

「笑いなさいよ」

「はーー、まぁ。へへ」

 と曖昧に濁す。どうしよう、動機が飛鳥(うち)と同レベルだ。笑えない。

「……でもね。アタシは良いと思ってたの」

 ソプラノはムクリと起き上がり、今度は顎肘をついて嘆息する。顔は火照って色気があった。

「どうせこんなの達成できないだろうし、適当に遊んで満足したら、依頼をほっぽり出して引き上げるだろうってね。……それでライセンスを剥奪されて、ギルドごっこはおしまい。それで良いと思ってた。また森に帰れるって。……でも、なによ。あの展開は?」

 彼女の目線にXXも誘われ、そうしてしばらく、二人で上座を見つめる。

 エルフとアンデッドによる天然漫才が繰り広げられている。

 ソプラノが「ひぐぅ」と泣き始めた。両手で顔を隠して泣き始めた。

「うぇ、うぇ……。なんで、なんでこんなことになってるんだろうアタシ~~……ひぐぅ、うぇっうぇ」

 本気で気の毒になる、ガチ泣きである。

「うううう、うぇっうぇ……ひぐぅ……なんでよぉ~。うぇっうぇ」

「おいソプラノさんよ。大丈夫だって。恋愛なんてのは流行病や一時の熱病みてぇなもんだから、時間が経てばオメェの弟も野良々に愛想尽かすって」

 あまりにいたたまれず、XXはその頭を撫でてしまう。そしてエルフ的にはあり得ない気休めを言ってしまう。XXも酔っているのだ。サラサラと柔らかい。良い匂いもする。

 ていうかあのテノールってエルフはロリコンなのか。野良々の実年齢はともかく、外見は14の少女だぞ。14と言えばまだ中学2年生じゃないか。そんなのに求婚するとか法律的にも禁止されてるじゃないか。アイツ確実にタイーホだぞ。ニホンの警察なめんなよマジとか何とか、XXも相当酒が回っていて、意味の分らない世界の話を脳内でしていた。

「おお、ユア・ハイネス。あちらを御覧下さいませ。私の姉もこのテノールの奇跡の出会いに胸を打たれて感涙に咽いでおられます」

「いや、『咽いで』しかあってないんとちゃう?」

 XXはとりあえず、ソプラノのグラスに酒を注ぎつつ、頭を撫でつつ、昼に屋外にて、テノールと交わした会話の事を思い返した。


「なるほど、ふん。麗しき野良々様は着様率いる卑しいギルドに寛大な心で協力されており、その心に付けこんで貴様はこの無謀な依頼を受けたと言うのだな?」

「いやいや、別に卑しくはねぇだろ。それに付けこんでない」

 湿り気の帯びた、重く温い風が吹き抜ける中、コルネリオ村の外でXXとテノールは横並びして、村の遥か奥を見つめている。

 視線の先には、霧に霞みつつ、雲に上部を隠されつつで、全容が明らかでない、しかし巨大で荘厳な一本の密林『コルネリオ』が、鬱蒼と広がっている。

 この二人のギルドマスターが抱える、二つのギルドが呪咲コルネリオに挑むのは、明朝である。

「野良々様をたぶらかし、このような危うい任務に同道させようという貴様の卑劣さと軽薄さ、返す返すに万死に値するな。今ならまだ麗しい野良々様に免じて許してやるから、さっさと野良々様を解放して尻尾を巻いて帝国へ帰れ」

「無茶苦茶だなオメェ。そんで言いたい放題だな。が、もう野良々はやる気まんまんなんだわ。オメェだってそう見えるだろ?」

 XXはニヤっと笑い、テノールはそれを横目に見る

「ふん、ならば是非も無い。そうなればこの依頼の間、麗しき野良々様はこのギルド『エレナコ』が身命を賭して護衛するしかあるまいな。貴様らには任せられん」

「いや、まぁ援護してくれんのは助かるが、アイツはこっちにとても貴重な戦力なんだわ。猫の子みたいにホイホイ貸し借りできねぇの」

「分っている。そもそもウッド・エルフが人間風情に借りをつくるなど俺のプライドが許さん」

「いや、ノラコも元人間なんだが」

「麗しき野良々様を貴様ら風情と同列に語るな。あと次にノラコとか言ったらシバく。野良々様は俺の嫁」

「いますげー自分勝手な事言わなかったか?」

「まぁそれはさておき本題だ」

 テノールが、XXをここに呼びだした理由の一つを切り出す。

「実は俺達『エレナコ』は、随分と前にコルネリオの『最初の苗』の在り処を突きとめている」

 コルネリオの『最初の苗』。

 村に伝わる伝承によれば、それを刈る事によってコルネリオの花々はそれ以上の開花を止め、長い時間をかけて穏やかに蕾へと還り、『花災流』は未然に防げるのだと言われている。

今回の依頼で一番のネックと言われていたのだが、それの探索と発見であり、XXは船の中でゲーゲーやりつつも、ずっと島の見取り図と格闘していたのだった。しかし今、それは獲り越し苦労となったようである。そして同時に、今ようやく。このテノールの言葉により、XXは『エレナコ』が依頼を受諾した事に得心がいった。単に無謀なのではなかったのである。

やはりまともなギルドは、このように何かの勝算をきちんと見出してから、依頼を請け負うものである。

 最も受諾の動機までは知らないが、まぁそれも、うちのように『花見』といったフザケタものではないだろう。

 XXは頷く。

「そいつは何よりの朗報だ。で、場所はどこよ?」

「本来なら人間風情に教えてやる道理などないが、麗しき野良々様が紛いなりにも所属されているギルドに免じて教えてやる」

「面倒臭いなオメェ」

「うるさい。で、場所はコルネリオの頂上だ」

 飛鳥に背負われて村に入った際、ぼうと見上げた、あの暗雲さえ突きぬけるコルネリオの高さを思い出し、そして現実として改めて眼前に広がっているそれを見て、XXは軽く目眩がした。額に手を当て、頭を左右に振る。

「へぇ……考え得る最悪だな」

 溜息。

「然り。しかもコルネリオは下の根に近いほど植物らしくあるのだが、上の芽に近いほど動物的な凶暴さを見せ、頂上付近ともなれば最早獣のような有様だ。しかも巨大で強大だ。まず俺やお前などでは太刀打ち出来ん」

 キッパリと言った。

 それは船の中でも聞いた。

 コルネリオの1500m付近まで登ると、太い幹や枝には直径数メートルもあるような巨大な花々が咲いており、それらはまるで蛇のように茎や葉をウネらせ、常に獲物を探して飢えているのだ。そして何がしか侵入者を認めると、花はその巨大な花弁で噛みつくように襲いかかって捉え、肉食獣の歯牙のような雌蕊と雄蕊で骨と肉を砕き、飲み込んで滋養としてしまう。

 それを震えながら語った船員が、隻腕であったことをXXは思い返す。その話のリアリティと、それが無関係と言う事はあるまい。

「難儀だな。で、策はあんのか?」

「当たり前だ」

 これにもテノールはキッパリと言い、そして不敵に笑った。

「太刀打ち出来んのなら射抜けば良い。お前達も知っているとは思うが、ウッド・エルフには多少なり弓術の心得がある」

「生き馬の目を抜くのが多少ね。随分と謙虚だな」

 XXが半ばあきれるように笑った。そして続ける。

「で、その策とやらは?」

「まさに俺自身だ」

 テノールは誇らしげでもなく、奢る様でも無く、当然の様にしてそう言った。

「他のエルフのように、弓術に心得がある程度でコルネリオの花はどうにもならん。しかし、俺のように弓術にズバ抜けた天才ならどうにかなる。短く言えばそう言う事だ」

「今度は随分と傲岸だな。で、その根拠とやらは?」

「聞いて驚け人間風情。如何に困難な的であれ確実に矢が到達するというその神業をして、『アリアドネの糸』と謳われた伝説の射手、それはこのテノール・ブリリアントよ」

 ――アリアドネの糸。

 魔牛ミノタウルスの父であるクレタ島の王ミノスと、太陽神ヘリオスの娘パシパエとの間に生まれた娘、その名をアリアドネと言う。アリアドネは、ミノタウルスの生贄としてミノスに選ばれたテセウスに恋をし、彼がクレタ島の迷宮へ送られる際、アリアドネはテセウスに麻糸球を渡した。どうかこれを入口扉に巻きつけ、帰りに迷わぬ道標となさいますようにと。

 テセウスは言われた通りにして迷宮を進み、やがて奥深くで魔牛ミノタウルスと出会うも、これを見事討ち果たす。そしてアリアドネに言われた通りに糸を手繰って戻り、テセウスは迷宮より脱出に成功した。後にテセウスはアリアドネを妻とし、伝説的なアテナイの王となる。

 このテノール・ブリリアント通り名が、まさにそれに由来する。

 彼の射た一矢は、まるで狙った標的と矢が『アリアドネの糸』で結ばれたが如くに飛翔し、『発射の時点で命中が確約される』のだ。

 評するに曰く、『因果連結の一矢』。

 実際として、彼がこれまで射てきた万を超える矢の全てが、全く尽くの外れ知らずである。その偉業は、決してかの神話に劣るものではない。

 XXは思わぬ伝説との遭遇に、口笛を吹く。アリシア以来の大物である。

 そしてニヤリ。

「大体話は読めた。オメェがコルネリオの『最初の苗』を、つまり頂上を弓の射程圏内に捉えられるところまで登り切れば、コルネリオはゲームセットって訳だな?」

「然り。俺の弓がそれを殺し切る射程は、まぁダイレクトショットで距離400いうところだ」

「……」

「どうした?」

 XXは絶句していたのである。

「いや、弓隊が長距離射撃を目的として仰角45で射て精々100、銃弾でもダイレクトなら150ってとこだ。それを弓で400ってマジか?」

「ウッド・エルフの弓術を人間風情の物差しで測るな」

 テノールは腕を組んだ。

「今の予測は逆風に豪雨、ぬかるんだ地面に襲い来る獣花の群の中という、劣悪な状況を想定しての数値だ。晴天・無風・平地・静寂の何れかがあれば倍は望める」

 そう言ってテノールは、背負っていた真っ白な長弓を降ろして構える。構えるとは言っても、それは通常の弓構えではない。

 鋭くとがった弓の本弭――最も下の部分――を地面に突き刺し、それでも上部がエルフの長身を超える長弓の、その胴を長い手で握り、腰の矢筒より銛の様に大きな一本を弦に番え、引き絞る。

 りゅうりゅうと音を立て、猛威と暴威を隠しきれぬ弓とは好対照に、テノールの目は冷たく眇められている。

「竜狩りの『アリアドネ』とは言え、この距離ではあそこしかあるまいな」

 矢の向きは、真っ直ぐにコルネリオの頂上。

 無論、暗雲に覆われている。

 風も強い。

 XXが見守る中、テノールが放った。

 無音。

 突風。

 XXは帽子を抑え、そこでようやく破裂音のような発射音。

 しばらく。

 暗雲の中から、遠くで何かが舞い落ちて、密林に消えた。

 シルエットからして、翼竜ワイバーンである。

 雲上700を駆ける空の強者ワイバーン。全身を固い鱗と筋肉に覆われたそれを、一撃で絶命させるには、柔らかな目を通して脳を狙うしかない。

 ――――こいつ、翼竜の目を抜きやがった。

 それもこの悪天候で。

 しかしテノールは、自らの神業に何一つ奢ることなく、ふん、と息を一つ吐いて弓の本弭を地面より引き抜き、背負い直して再び目線をXXへ。

「とにかく、コルネリオの道中にはあのような翼竜も出てくる。故に相当に険しい。俺達だけなら何も問題はないが、しかしあの麗しき野良々様がコルネリオに挑まれるとなると俺は気が気でない。死にそうだ。胸が張り裂けそうだ。焦がれそうだ。焼け死にそうだ。おお、ユア・ハイ――……何故ぶった?」

「いやちょっとイラっときた。すまん」

 ちなみにXXは、次もチョップする気でいる。

「ふん、今は野良々様の話題に付き許してやる。さて、ここが最重要だ」

 テノールはXXを呼びつけた、二つ目の理由を切り出す。

「今回の任にあたり、野良々様は一度お前達のギルドから離れて頂き、俺達『エレナコ』が護衛に当たらせて頂く。これが着様の言う『共闘』に対する最低限度の条件だ。もしもこれが飲めぬと言うのならば、俺達は今この瞬間より敵同士だ。野良々様を危険な目に遭わせるという輩は、例え野良々様の所属されるギルドのマスターとは言え容赦せん」

 XXは、いい加減そろそろ言っておこうと思った。と言うより出会いがしらに見ているはずなのだが

「オメェな、野良々をさっきから随分と御姫様みたいに言ってるけど、アイツの腕前しら――」

「代わりにだ」

 最後まで話を聞かず、テノールは言った。

「そちらには『エレナコ』の副リーダーにして俺の実姉、ソプラノ・ブリリアントを同行させる」

 ちなみに今はビービーと泣いていて、他のウッド・エルフに当たり散らしている。

「聞いて驚け人間風情。彼女ソプラノ・ブリリアントは俺の弓の師であり、極東への遠征時に付けられた通り名は『天弓愛染』。名前ぐらい聞いた事があるだろう?」

 天弓愛染。

 確かに聞いた事はあるが、因果連結の一矢『アリアドネの糸』程の知名度はないはずだ。

 しかし極東にいた頃に付けられた通り名ならば、もしかしたら野良々が知っているやも知れない。XXは後で聞いておこうと思った。

「どうだ? 彼女ならば、戦力的にかなりの釣りがくるはずだ。それにソプラノ・ブリリアントがお前達のギルドに所属するならば、俺達は言うまでも無く共闘関係だ。誤射の心配もあるまい?」

「……一つ良いかい?」

「言ってみろ」

 XXは半眼ジト目を開始。

「おめぇ、単に姉の目をかいくぐって野良々とイチャイチャし」

「よし異論はない様だな。ではその予定で。ちなみに俺はこの依頼を達成したら、コルネリオの最上の花を手にして再び麗しき野良々様に求婚するつもりだ。そうなったときにはもちろんギルドを――」

「フラれたらどうすんだよ?」

 見も蓋も無い事を、XXは腕を組んであっさりと言ってみた。テノールはしかし、腹を立てる様子も無く素直に頷く。

「それならそれまでだ。しかしそもそもあの麗しき野良々様の愛が、この依頼を達成した程度で得られる等と考えてはおらん。しかし野良々様がこの依頼を完遂したいと考えておられるなら、このテノール・ブリリアントは一介の下僕として、それを全うするまでのことだ。それ以上はない」

 ウッド・エルフは傲岸で、高慢で、自信家で、自己陶酔的である。しかし、自らの愛と、それを注ぐと決めた相手に対しては誠実で、盲目的である。

 それ故、生涯の伴侶と心に決めた相手の事を語る時、ウッド・エルフは誰に対しても如何なる嘘も冗談も挟まない。ましてアンデッドをその相手として、ウッド・エルフがこのような事を戯言で言うかなど、そんなものは言うべくもない。だからXXには、テノールが本気で野良々の事を慕っているのだと、それは十分に理解する事が出来た。

 だから、しかし。

「もう一つ良いか?」

「言ってみろ」

「その、オメェは野良々の何処が良いんだ?」

 XXは尋ねざるを得なかった。一体彼女の何が、一人とは言えウッド・エルフの心をここまで釘づけにしてしまったのかを。

「ふん、着様には一生分らぬだろう。一目しか見ていない俺に理解できて、紛いなりにも傍に何日といたお前が理解できぬならな」

 テノールは言った。

「しかし一応、その欠片ぐらいを教えてやろう。野良々様は途方も無く美しく麗しく、そして貴きものを、その小さなお身体に持っておられる。お前達人間風情が察するには、まことに勿体ないほどのものをな。そんなものの前に、アンデッドだの人間だの、エルフだの、チリにも等しい事だ。それが何かを理解しろ等と、俺は何処の誰にも言わぬ。俺だけがそれを知っておれば良い」

 ……彼女の優しさはな。

 ボソリと最後に言った言葉を、XXはギリギリ耳にする事が出来た。

 そうして立ち去りかけたエルフの背中に

「おい、テノール」

 とXXは言った。

 呼びとめられて振り返る。

「今晩よ、一緒に飯どうだ? なんなら、お前の横に野良々を置いて、代わりにソプラノ嬢はこっちで引き受けるぜ? あぁ、けどアイツ、夜は諸事情でメシが食えないから、そこだけは勘弁してくれ」

 XXは肩をすくめて言った。テノールの顔がみるみると赤くなり、そしてごまかす様な咳払い。

「……う、うむ。それは実に、その、何と言うか、うむ。極めて評価の出来る英断だと言わざるを得ない。褒美に名前を聞いてやる。名は何と言う、着様?」

「ダブルエックスだよ。ただのダブルエックスだ」

 ほんの僅かの間だけ、テノールは眉をひそめた。

「……ダブルエックスか。悪くない名だな」

「そうか? 表記したってXXだぞ?」

「いや、赤い帽子を被ったダブルエックスなど、まるで英雄オリハルコンのようじゃないか?」

「……何だ。帝国にも詳しいのか?」

 XXは帽子のツバを下げて視線を外したが、テノールは「なに。姉が好きなお伽噺の主人公だ」と空模様を伺い始めたので、仕草には気付かない。

「世界中のあらゆる人間達の罪を購う為に、ゴルゴダの丘で自ら磔刑に処されることを選んだ神の子イイスス、その両手を罪深く穿った二つの釘。それを手にして世界中の小さな不幸を小さな幸福に変えていく男がいるそうだ。初めは帝国親衛隊の隊長として、その腕を炎のように振るって大いに戦果を挙げるも、大事の為の小悪と称して無関係な村々に戦火を広げる帝国のやり方に嫌気がさし、地位も名誉も財産も、許嫁までも捨てて、単身外に飛び出たのだそうだ。それ以後、その先々の活躍で付けられた通り名は『赤色の鬼札』『レッドハット・ダブルエックス』。その姿は隠せども、その圧倒的な力までは隠せない。噂は噂を呼び、すぐにそれが『オリハルコン』の仕業だと帝国は嗅ぎつけ、使者を送った。彼はしかし、再び三顧の礼で迎えようとした帝国の招きにも応じず、改めて行方を眩ませ、今の消息は知れぬらしい。……ふん、まぁもありもせぬ幻想だなそんなもの」

 それだけ言って、テノールは空から目を外し、待合酒場グウィンドリンの方へ引き上げて行った。

 XXはそれを今度こそ黙って見送りつつ、腰の後ろに差した短い二つの得物を気にしていた。

「……あぁ、幻想だわな」

 と。


どうも無一文です^^


コルネリオ攻略前に一応完結しておきました。

次回で一応、花災流は完結します。最近ノララが可愛いです。

しかしコメディファンタジー、書いててなかなか楽しいです。

そして書きたいネタはたくさんあります。


飛鳥とXXとの出会い(飛鳥が墓守に雇われていた時代)

野良々の極東時代(生前やらお師匠様やら)

XXの帝国時代(隊長と副隊長、他のメンバー)

ビスケット村が魔物に襲われた理由(オークが消えてコボルトが台頭)

ファンタジーに欠かせない魔法使い(ドジっ娘のとんがり帽子とか?)

どうでも良いサブクエ(飛鳥が勝手に受諾。ピクシー取りとか)

etc

いま適当に浮かんだのでもこんなけありますね。

上手に消化できればと思います。


ではでは後編で^^

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