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第5話:精霊姫

――Side ???


「あーあー、えん姉ぇ達だけずるいよねぇ…」


とてつもなく広大な空間に一人の少女の言葉が響く。


そこには何もなく、色も無い。ただただ広い空間が広がっているとしか表現が出来ない。


そんな異空間に3人の女性達が顔を合わせていた。


「こら、こうちゃん。久しぶりに集まったのにそんな事いわないの」


「だってさぁ、ふう姉ぇ。毎日退屈なんだもん。それに集まったって言っても、ボクと闇ちゃんと風姉ぇだけじゃん」


愚痴を言うのは、光と呼ばれた、白く長い髪で赤い大きな瞳の美少女。顔立ちは整っているがまだ幼さが残るあどけない表情で頬を膨らませている姿は可愛らしい。


フリルのついた白い服。所謂ゴスロリファッションがその可愛さを一層に引き立てる。


そんな少女を嗜めるのは風姉ぇと呼ばれた、薄い翠色のミドルヘアーの美女。その瞳の色も翠で、嗜めるように光に注意をする。


その豊満な肢体を包むのは皮で出来たスカートと白いシャツにベストという格好で、どことなくエルフの服を印象付ける。


「ふぅ…そんなことを言っても、私たちには所持者マスターが見つからないんだから、仕方が無いでしょ?」


「何を悠長な!そんな事を言っているから、風姉ぇだけ行き遅れ…ご、ゴメンナサイ!!」


光の言葉に、風の視線が剣呑なものとなり、慌てて謝罪するが…


「う、うふふ……光ちゃん」


「(や、ヤバ?な、なんとか話題を変えないと……そうだ!)あ、あん。さっきから、静かだけど?どうしたの!?」


先程から一言も喋っておらず、ボーっとしていた少女に話を移し、話題の変更を図る光。


その闇と呼ばれた少女は光と瓜二つの容姿であるが、決定的な違いは髪が烏の濡れ羽色と呼ばれるほどの美しい黒髪と無表情な顔である。


そして、着ている服も同じゴスロリファッションだが色は黒。見事に対照的である。


「……うるさいわね」


闇は光を一瞥し、それだけを言うとあっさりと視線を戻した。


「なっ!?」


この二人、性格が正反対なこともあってか、決定的に仲が悪い。


「な、なにさ!そんなんだから鉄面皮で可愛げの無い暗い奴になるんだよ!それじゃ、一生所有者は見つからないね!」


「………」


「こ、このぉ!あぁ、無視ですか!?そうですか!」


「はぁ…どうして、炎姉様と水姉様といい、光ちゃんと闇ちゃんといい、仲が悪いのかしら」


困ったのもだわとため息を吐く風。図らずとも光の話題変更は成功したようだが、光の怒りは収まらない。


「なんとか言ったらどうなの!?」


「!?」


とことん無視していたが闇だが、何事か気がつき、無表情な顔を驚きに変えたかと思いきや、微笑を浮かべながら光の方を向く。


「どうやら、見つかったみたいよ」


「何がよ!?」


「あなたが、一生見つからないって言った私のマスターが」


勝ち誇ったような笑みを浮かべる闇。


「闇ちゃん、それって本当?」


「えぇ、風姉さん。少し前に大きな力を持つものがこの世界に召喚されたのを感知したので、ずっとそのお方を見ていたのですが……彼の器なら私を扱えることができると確信いたしました。それだけじゃありません、あの容姿と汚れなき美しい闇を秘めた愁いなる瞳…」


うっとりと心酔する闇。先程の無表情が嘘のようで、実際に付き合いの長い光は口をあんぐりと開けて驚いている。


我に返った闇がそんな光を見て、鼻で笑い…


「…みっともないわよ」


「う、うるさいわよ!!」


そんな光を声を無視しつつ、手を広げ空間に黒い穴を作ると


「それじゃ、私行くから。行き遅れないように頑張ってね」


二人に対して最大級の毒を吐き闇は消える。


後に残された二人は…


「……ふふ……あなたまでそんな事を言うの?闇ちゃん、次に会った時覚えてなさい」


「何様のつもりよ!!次に会ったらけちょんけちょんにしてやるぅ!!って、風姉ぇ?」


「…うふふ、そういえば光も言ってたわよねぇ」


「ゆ、許してぇ!風姉ぇ!」


光の絶叫が、広大な空間に木霊した…







――Side Yuuto souga


なしてこうなったんじゃろ…


「ほら、いくぞ!!」


旋武を構え、俺と対峙する鈴ちゃん。


【あきらめな。こうなったらもう止められねぇよ】


俺を諭すように声をかけるのは旋武。人間ならポンポンと肩に手を置いてくれたことだろうが、生憎旋武は武器だ。


「やりましょうマスター。この者に身の程を教えて差し上げましょう」


ゴスロリ美少女もやる気満々だ。


はぁ……血気盛んだな最近の女の子は…


事の起こりは、前日の夜のこと…


三日前、俺達はようやく森を抜け街道に出た。そして街道沿いにあった小さな村で食料を購入し、出発したのが一昨日の昼のこと。


その後、街道沿いを歩いていると馬車が通りかかり、進む方向が同じだったのでちょっと失敬して走行中の馬車の荷台に飛び乗って距離を稼ぎ、昨日の夜にようやく国境を越えた。


そして、街道から少しはずれた森の中で、焚き火などの準備をし、慣れた手つきで野宿の準備をしていたのだが、唐突に鈴ちゃんが…


『悠斗、私と手合わせ願いたい』


とか、ぶっ飛んだことをほざいた事から始まった。



〜〜回想〜〜


「唐突過ぎて訳が分からんのだが……」


訳も分からんので、理由を問うと…


「悠斗の気配を感じる能力、身のこなし、猪を捕らえる技。そこから悠斗には相当な武を感じる。分かるのだ、強さが!武人なら強者と戦いたいと思うのは当然だ!」


あ〜随分とまぁ過大な評価を……けどさぁ…


「でもさぁ、こっちは丸腰よ?それに……お客さんみたいだ」


鈴ちゃんと火を囲んで交わしていた視線を向ける。薄暗い森の中から黒いフリフリのドレスを着た…所謂ゴスロリファッションの美少女が出てきた。


「貴様!?」


鈴ちゃんが立ち上がり、旋武を構えるが少女はそれを気にも留めず、無視する形で俺に視線を固定したまま微笑む。


「流石です。お気づきでしたか…」


「まぁね。君みたいな女の子だとは気がつかなかったけど。それに、気配の消し方は見事だね。鈴ちゃんが気付かなかったくらいだから」


「っ!?」


【けけけ、鈴ちゃんもまだまだだなぁ。刺客なら死んでるぜ?】


「黙れ!!」


旋武が少女から殺気がないので敵ではないと判断し、鈴ちゃんをからかい始める。そしてじゃれあう二人をまたも無視し、少女は俺に問いかける。


「どうして分かったのですか?私自身気配の消すのには自信があるのですが…」


「人の視線とか意識に敏感なんだよ俺。ん〜もしかして俺が召喚されてから度々感じていた視線も君のものかな?」


その言葉に、少女は驚愕の表情を見せる。ふむ、ビンゴだった訳ですか


「まさか、『遠見』まで見切っているとは思いませんでした。それではさぞ不快な思いをしたことでしょう。申し訳ありません」


「いや、別にそんなに気にしてないよ。それに気を使って俺が眠りに入った時にはやめてくれたでしょ。あと水浴びしてる時とかね」


茶化すように言うと少女の顔が今度は真っ赤に染まる。


「い、いえ!?本当に失礼を!」


ペコペコ頭を下げる姿が可愛らしい。出てきた時にはクールな印象を受けたんだけどな


「さて、そろそろ本題と行こうか。見たところ君は俺に用があるみたいだ…それに……君は……」


言いよどむ。言ったらこの少女は不快な思いをするのではないか?だが、俺の心配は杞憂に終わった。


「はい、ご察しの通り。私は人間ではありません」


やっぱな…


なんとなくそう感じていた俺とは違って鈴ちゃんが声を荒げる。


「人間ではないだと!?貴様、何者だ!?まさか、魔族か!」


そんな鈴ちゃんの言葉に、無表情になる少女。そして不快感を表すような声で…


「魔族?そんな存在と一緒にしないで欲しいわね。まったく、これだから人間って奴は」


「まぁ、異分子は排除したがるのは人間としては普通の感情だよ。不快な思いをしたと思うけど、鈴ちゃんはいい娘だからね、話せば分かってくれる。だからさそのくらいで勘弁してやってよ」


鈴ちゃんをフォローするように会話に加わると興味が失せたとばかりに俺に視線を移し、深々と頭を下げた後


「私は闇の精霊達を司る精霊の姫。闇姫あんきと申します」


【闇姫!?じ、嬢ちゃん精霊姫せいれいきだったのか?】


聞きなれない言葉に俺と鈴ちゃんが首を捻っていると旋武が唯一驚愕の反応をした。


「旋武?精霊姫とはなんだ?」


【あぁ、鈴嵐にもまだ話してなかったか。兄ちゃんも聞いてくれ】


そして、旋武が説明を始める。


纏めるとこうだ。


この世界の創造神。北欧神話におけるオーディンの立場にいるのが精霊王という存在で、その精霊王が生み出したのが六人の姫。


炎姫えんき水姫すいき風姫ふうき緑姫りょくき光姫こうき、そして目の前に居る闇姫あんき


それぞれ、炎、水、風、土、光、闇の属性を持つ精霊を統括している存在らしい。


「実際に統括してるのは私たちが作った上位精霊です。上位精霊が精霊を生み出し管理しているのです。私たちがするべき事は別にあります」


「それは?」


「人間達は精霊を使う術を得ました。それによって生じる問題の解決…それが私たちの役目なのです。簡単に言うと悪いことに精霊を使おうとする者を滅す…といったところで」


旋武の説明を闇姫。呼びにくいから今後、あっちゃんに呼称…が補足して行く。


【他にも精霊には中位と下位精霊ってのが居る。下位精霊が集合して意思を持ったのが中位精霊。つまりは俺っちみたいなのだ。んで、上位精霊以上となると実体を持っている】


「えぇ、結構博識ね。見たところあなたは緑姉さんの所の者ね」


【へ、へぇ!!お初にお目にかかりやす!あっし旋武と申しまさぁ!!】


「……どこの組のもんだ、おのれは」


妙なテンションの旋武に突っ込みつつ、俺は疑問に思ったことを問いかけた


「ねぇ、あっちゃん」


「あ、あっちゃん!?あ、あの…あっちゃんとは私の事でしょうか?」


「うん。それで、あっちゃん。聞きたい事があるんだ」


「な、なんでしょう?」


呼びなれない呼称に困惑するあっちゃんだけど気にする事無く…


「なんで、緑姫りょくきなの?」


「………は?」


目が点になり、呆けるあっちゃん。見れば、鈴嵐と旋武も固まっている。


「いや、だってさ、あっちゃんを始めみんな精霊の属性にそった姫だろ?なのになんで緑姫なんだろうって、普通なら土姫になるのに…」


「は、はい。それはですね…当初は土姫だったんです。ですが父上…いえ、精霊王にですね『私だけ可愛くなぁ〜い。パパァ〜』っと年甲斐も無く泣きまして、緑姫になったんです」


どんな王だよ。仮にも神でしょうよアンタ。やっぱり神とはいえ娘に弱いのか


とか、そんな事を考えていると


「違うだろう!!悠斗、質問するのはそれじゃなくて!何しに此処に現れたか!?それを聞くべきじゃないのか!?」


旋武ぼけと長年コンビを組んでいる鈴嵐が突っ込む。


「あ、それも聞きたかったんだよ。なんで?」


ようやく話が軌道修正され、若干疲れた表情を見せるが、真剣な表情になりあっちゃんは語る。


「私たちは先程も申したように異変の解決を目的としています。ですが、私たち自身では世界に介入できないのです。世界に介入するには所有者マスター)という代行者を必要とします。私たちはそこの武器のようにエレメンツウエポンとなりマスターと共に任を遂行するのです」


…なんか、嫌な予感がしてきたぞ。期待するような目で見ないであっちゃん


「マスターは私達が己の持つ感性にしたがって選ぶのです。そして…私のマスターはあなた以外には考えられません。お願いです、私を貰ってください」


予感的中!!って、待て待て


「ちょっと待って。あのね、俺はそんな大層な人間じゃないよ。ぶっちゃけると、誰が何しようが関係ない。勝手にしろよってのが俺の信念だし。そりゃ、勝手にした挙句俺に害をなすってんならボコるけど」


基本的に他人の事情に首は突っ込まない。俺に危害を加えない人間は放置。だって、関係ないし


「それで構いません。その意見には私も同感ですから」


おいおい…


「それでいいのかよ?当初の任とはかけ離れているけど?」


それの言葉に、哀愁を帯びた瞳で苦笑いをするあっちゃん


「私は…他の姫たちとは違うんですよ……私の属性は闇。それだけで、人間達は忌み嫌い、禁忌とされている……ですから闇の精霊術を使うものは殆ど居ないんですよ」


なんとなく分かる。ようするに闇=悪という意識が人間にはあるんだろう。鈴ちゃんも思うところがあるのか悲痛の面持ちで静に聞いている。


「魔族は魔族で精霊を使用しませんから…問題は殆ど起こらないんです。仮に起こったとしても忌み嫌われている私が何故それを解決しなければならないでしょうか?そんもの崇拝されている他の姫がやれば済む事です」


確かに、普段は忌み嫌っといて、いざとなったら助けてくださいは虫が良すぎる。


じゃ…それじゃ……なんで


「分からないな……それじゃ、君は何を求めて俺に所有者マスターになれと?」


「忌み嫌われてるとはいえ、人間を滅ぼしたいとは思いません。ですが、他の姫たちのように嫌うもの達のために任を行う気もありません。私はただ、縛られたくない。自由になりたい……それだけなんです。先程も言いましたが、この世界では闇の精霊の力は禁忌とされています。ですが、時にその力に手を出す者も居ます。そして、その禁忌の力とされている物に手を出すのは…」


「碌な奴が居ないわけだ…」


「その通りです。何かしら野望を持つ者やこの世界を支配しようとする者……そんな人達をマスターにしたくありません。何より、マスターの条件に合わないんです」


「条件?」


「はい。マスターとなる条件は二つ。力と想いです。私たち精霊姫を扱うにはそれ相応の力の持ち主…私たちは器と呼んでいますが、それが足りないと力に耐えられずに身体の破壊が始まるのです。折角マスターとなられた方を死なせるわけには行きませんから、耐えられる器を持つ人物がマスターとなるひとつめの条件なのです」


「まぁ、そりゃそうだよな…死なすためにマスターにするわけじゃないし」


「はい…そして二つ目が想いです。これはマスターが私と似通った想いを心に抱いているということです。例えば、私が人々を救いたいから力を貸すことを信念にしているとしましょう。ですが、マスターが人々を滅ぼすために力を欲している。たとえ、器が合ってもまったくの正反対な信念では反発してしまい、契約自体が上手く行きません」


だいたい読めてきたぞ…


「要するに、その想いがあっちゃんと同じ人が居なかったって事だな?」


「はい。大半の人間が私を拒絶しているのですから当然とも言えるでしょうが…唯一。魔族は闇を崇拝しています、中には同じ想いの者が居たでしょう。ですが…」


「魔族は精霊を使わない。器のほうに問題があるわけだな」


そりゃ、難儀な……


「そして…ようやく……ようやく二つの条件が揃っている人を発見したのです。それが…」


「俺なのね」


はぁ〜〜とため息を吐く。さて、どうしたものか……


実際に、この少女の言う事は分からないでもない。俺と似通った部分が多々あるからだ。


「……駄目で…しょうか?」


うぅ…涙目+上目遣いのコンボは反則に近いぞ?思わず反射的に了承してしまうところだった。けど、俺にも譲れないものが一つだけある。


「…一つだけ、条件がある。君はまだ俺の事を分かっていない。俺がどういった存在なのかを……」


俺は擬態を解き、本来の紫の瞳であっちゃん…いや、闇姫を見据える


「だから、君が俺という人間を知った時、それでもその気持ちが変わらないなら……その話し受けよう。じゃ、いってらっしゃい」


そして、俺は自身の記憶をマナに変えて闇姫へと送る。さて…どんな反応を見せるか楽しみだな




数分後、相対したまま硬直していたあっちゃんが動き出す


「おかえり…」


「……あなたは…憎くないのですが?人が…」


俺の記憶を見て、あっちゃんが聞いてくる。


「正直、最初は憎かったさ。けどね…あっちゃんと同じなんだよ。どうでもいい…そうどうでもいいんだ。先入観で忌み嫌うなら好きにすれば良い。そんな奴らを構うよりも、俺という一人の人格を認めてくれる……そんな人を探そうと思ったんだ」


あの女性ひとみたいな人を…


「……私の思ったとおり、あなたは私に似ていますね。だからこそ私はあなたに惹かれたのかもしれない」


微笑を浮かべながらあっちゃんはそう告げ、ゆっくりと俺に近づき


「…契約を」


「…いいんだな?」


「はい。あなた以上に私のマスターとして相応しいものが居るはずがありませんから」


「わかった」


なら、拒む必要は無い。仮に元の世界に帰る事になってもあっちゃんも連れてけばいい。まぁ、それによりこの世界のバランスが崩れるかもしれないが、知ったことじゃない。どうせ、俺は居なくなるんだしな。でも…


「契約ってどうすりゃいんだ?」


「好きな武器を思い浮かべてください。今後わたしはあなたを守護する剣です…後はこちらで行いますので」


むぅ…武器…武器……やっぱあれだな…


「では…契約です」


そして、唇にやわらかい…あっちゃんの唇が触れる。


すると、黒い光に包まれて…気がつけばあっちゃんの姿は無く…代わりに左手に漆黒の鞘に収まった小太刀が収まっていた。


その小太刀を抜いてみると…


月明かりに輝くその刀身も黒、柄も黒。色の濃度や明度は違うものの、見事に黒づくしである。


【これで、契約完了です。今後わたしはあなたの剣として、従者として共にあります】


旋武と同様、声が聞こえる。


「うん、よろしくね。でも、勿体無いな。女の子の姿の方が可愛かったのに」


【心配には及びません】


ポンっとコミカルな音を起て、目の前にさっきのゴスロリ少女verあっちゃんが現れる。


「申し上げたとおり、上位精霊以上は実体化が可能です。それはエレメンツウエポンになっても変わりません。もっとも、その間は精霊の力を失い、ただの武器になってしまいますが」


「あぁ、問題ない。そっちの方が俺は嬉しいぞ」


何しろ可愛いしな。さてっと…


「ごめんね、鈴ちゃん、すっかり放置しちゃってとりあえず終わったから」


端で黙って事の成り行きを見守っていた鈴ちゃんに声をかける


「気にしないでも良い。これは当事者の問題で私たちは部外者だ。口は挟めない」


【そーゆうこった。しっかし、兄ちゃん、姫さんと契約しちまうとはな…やっぱ、只者じゃねぇな】


「当然です。私のマスターですよ?」


旋武の言葉に不敵に微笑みながら俺の腕を取るあっちゃん。何はともあれ、新しい仲間を得た。




さてさて、こんな経緯があり冒頭に至る。


その日はうやむやに終わったものの、鈴ちゃんは忘れていないらしく再度手合わせを申し込まれた。そして、今回は武器があるので丸腰という理由は使えない。


なにより、俺以外の面子がやる気満々なのだから始末に終えない。


「はぁ〜〜ま、いっか。あっちゃんにも慣れなきゃいけないしね」


そんな訳で手合わせが始まったのだが、勝負は一瞬でついた。


開始と同時に、右手を振り魔糸を鈴ちゃんの身体に巻きつかせ、動きを止める。


その奇襲に驚き、意識がそちらに向かった隙をつき、左手にある闇姫の切っ先を首筋に寸止めし


「はい、終わりっと」


決着は着いた。



「流石マスターです。正直、私の出る幕はありませんでした」


手合わせ後、まさしくOTZ状態の鈴ちゃんに気を使うことも無く、あっちゃんは嬉々として言う。そして、鈴ちゃんを一瞥し…


「最も…相手が弱すぎたのですが」


辛辣な言葉を吐いた。


その言葉がグサリと突き刺さったかのように、拳を地面に打ち付ける鈴ちゃん


「くそ…私が今までやってきたのはなんだったのだ?井の中の蛙だったというのか?」


「というより、戦い方の違いだと思うけど」


見てる感じ、鈴ちゃんの戦い方は一対一に慣れており、尚且つ一点突破。まっすぐ、純粋に一直線に向かってくる。


対して俺の場合、親父との一対一のほかに、母さんが作り出したゴーレムとの模擬戦。さらに、オカルト集団や狂信者どもとの実戦で多人数との戦闘にも慣れている。


さらに、戦い方も剣一辺倒ではなく、魔糸などの魔法を使った戦闘をする。


一言で言うと、戦い方に幅が無いのだ…


じゃんけんで言うなら、グーしか出せない鈴ちゃんに対し、俺はグーかパーが出せるって感じだ。


その事を鈴ちゃんに説明しつつ


「ぶっちゃけると相性が悪いんだと思うよ?しかも、今まで俺みたいに糸を使う奴と戦ったこと無いでしょ?でも俺は槍を使ってる奴と何度か戦ったことあるからね。その経験の差だよ」


槍とは多少違うが、十分修正が利くし、なにより間合いが読める分戦いやすい。


と、落ち込んだ鈴ちゃんを励ましてると…


「……マスターは…ずいぶんとお優しいのですね」


憮然とした表情でそう漏らすあっちゃん。ははぁん…


「嫉妬してるの?あっちゃん」


「なっ!?私は……いえ、はい。マスターは私の……私だけのマスターですから」


否定しようとするも、すぐさま認める。顔を赤くし、潤んだ目でそんな事を言う…


「あぁ!!可愛いなぁ、あっちゃんは」


よしよしと頭を撫でながら髪を梳く。


「子ども扱いしないで下さい……」


ぼそりとそう言いつつも、気持ち良さそうに目を細めて、されるがままになっているあっちゃん。


「鈴ちゃんも撫でてあげようか?」


「いらん!!」


顔を赤くしながら即否定する鈴ちゃん。むぅ…なんか悔しいぞ。


絶対いつか撫でてやろう…そう心に誓うのだった。









更新完了。


自分でも脅威の更新速度。ってか、出来てた奴を勢いだけでUPしただけなんですがねぇ…


今回の話で新キャラ登場+武器入手。


よいよ手がつけられなくなってきた主人公です。


今後どうなるのか?作者にも想像がつきませんが、のんびりいきたいと思いますので、温かい目で見守りつつ応援していただければ幸いです。


では、次回の更新でお会いしましょう。

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