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第三話:チャイナ少女と喋る武器

――Side ???


「許せん…絶対に許せん…」


豪勢な内装の部屋の中で、一人の男が怒りに震えてる…。


ミハイル・ムイ・グレーシス。悠斗を召喚した召喚師である…。


悠斗の攻撃によりダウンしていたが、ようやく目が覚め、こうして怒りに震えているのである。そんなミハイルに…


「ふぅ…ミハイル。いい加減にしろ。大体、いきなり見知らぬ世界に強制的に呼ばれたら誰でも怒る」


「それは分かっている!だからこそ僕は最大の誠意をもって友好的に接しようとした。だがな、いきなり…いきなりだぞ!この僕の顔に殴りかかったんだ!?信じられるか?カリウス!?」


カリウスと呼ばれた大男が話しかける。カリウス・ライベルト。赤い甲冑を纏い大剣を携えたこの国の騎士団長に当たる人物である。


「信じるも、信じないも…事実だろ?その手当ての後を見れば分かる…」


「くっ!ま、まぁいい!!あの生意気な女とともに僕に絶対服従させてやる!」


意気込むミハイルに付き合っていられんと部屋を後にするカリウス。そして、心の中で見知らぬ世界に突如召喚され、牢屋にぶち込まれた悠斗に同情の念を抱くのだった…




――Side Yuuto Souga


「………」


「ひっ、た、助け…」


「だからさ〜殺しはしないよ。まぁ、この人の武器を保管している場所とちょっとこの国のお金をくれれば…だけど」


兵士達の詰め所を奇襲し、やりたい放題であった…。今、脅されている一人を除いた数名は瞬く間に昏倒させられ、床に倒れている。


で、残った一人に対し、脅しをかけているのだ。そんな悠斗にチャイナ服を来た女性は唖然と眺めていた。


「…うん、そうそう。ありがと、じゃ、暫く眠っててね〜」


用が済むと、尋問していた兵士の首に手刀を落とし、気絶させ…


「…お前は悪魔か?」


そこで、黙っていた女性が口を開いた…


「むぅ、心外だな。半分以上はキミのためにやっていることだぞ…っと、えっと……鍵は、あったあった。さ、行こう。この部屋の隣に押収した品物があるんだってさ」


「だがな。金まで盗ることは無かろう?」


「逃亡生活に金は必要不可欠…命を奪っている訳じゃないし、お金を少しばかり頂戴したくらいで地獄には落ちないさ」


喋りながらもガチャガチャと鍵を開けて中に入る。


「…あった!私の『旋武せんぶ』」


中に入り、チャイナ服の女性が自らの獲物を見つけ飛びつく。


【おせーーよ。鈴嵐りんらんったく、辛気くせーところに何時までも閉じ込めやがってよ。で、大丈夫だったかよ?エロい事とかされてねーか?】


「………」


「ば、馬鹿!何を言っているんだお前は!」


【あぁ?捕虜にはエロい拷問って古今東西決まってんだろーが、けけけ、おまけにそんなムチムチしたいい体してんだからよ!】


武器が喋ってるとか、鈴嵐って名前なんだ?とか突っ込むところが多すぎるが…とりあえず…


「ねぇ、状況分かってる?今は、とっとと此処から出るのが先決でしょうに」


「す、すまない…その通りだ」


【ん?ははぁん…鈴嵐。けけけ、敵の男をたらしこんで脱出とは鈴嵐もやるようになったじゃねぇか】


「だ、黙れ!」


またも漫才をはじめるが、俺は無視しつつ部屋を出て…


「碌なモンがないし、そろそろ逃げないと手遅れになりそうだから逃げるよ」


金はあるし、必要なものは何処かの町で調達すればいい。そう結論付け、漫才コンビに一言告げて外に出た…



さてさて…外に出たのはいいが…


「…で、どっちに行けばいいんだ」


困り果てていた。突如召喚され、何の情報も無く牢屋に放り込まれたわけで…


当然、土地勘なんてもんは皆無であり、更に言えば、目的とかも無かったりする。


正直、逃げる前に方針位は決めとくんだったと公開しつつ、鈴嵐と呼ばれていた素敵なお嬢さんの方を見る…


「……ある程度の土地勘はある。着いてくるといい」


素敵だ…素敵るぎるぞ!あぁ、もう惚れちゃいそうだ…


当然のごとく嬉々として彼女の後に続いた…



移動しながら辺りを見回す。


文明は俺らの世界で言うと…中世くらいか…なんとなくヨーロピアンって感じがする。前に、母さんと一緒にやってたRPGのゲームを思い出すな……なんですか?異世界としてのデフォルト設定な訳ですか?


捕まっていたのも、この町にある城の敷地にある建物で、敷地内には召還された時の塔もあった。


そんな見学をしつつ進んでいると、前を歩いていた鈴嵐が手際よく町へと続く門の前の見張りを昏倒させていた…


「行くぞ、追っ手が来る前にできるだけ距離を稼いでおきたい」


「そうだね〜」


うぅ〜ん、完全に主導権を取られてしまった。いや、別にいいんだけどさ〜楽だし〜。


ってな訳で、一目散に城下町を脱出し、街道を外れて森の中へと飛び込んだ。



「はぁ、はぁ…」


「大丈夫?」


森へと入り、俺達は出来る限り距離を稼ぐために走っていたのだが、鈴嵐の息が上がり始めた。


無理も無いな…いつからかは分からんが俺よりも長く牢屋に入っていたわけだし…


「はぁ…だ…大丈夫…だ……」


「……此の辺で休もうぜ?」


「…はぁ、はぁ…気にするな」


「いや、気にしてねーよ。ただ俺が疲れた。休もうぜ」


暫く訝しげに俺を見たが、鈴嵐は提案を受け入れてくれた。


互いに木に寄りかかって座る。獣避け用の火は当然のごとく炊けない。追っ手に見つかるかもしれないからな。


森もそんなに深くないので、空に浮かぶ月明かりが俺達を照らしていた。


「こんな状況だからな…のんびりと眠るわけには行かない」


「そんなに気負うと疲れるぞ。そうだなせっかくだから、少し話をしようか?互いに自己紹介もしてないしな」


「ああ、では私から。私の名は『鈴嵐』という…先程は助けてくれてありがとう。礼を言う」


ぺこりと頭を下げられる。う〜ん、真面目な人だな。


「いいよ別に…。俺の名前は宗我悠斗…悠斗でいいよ」


互いに自己紹介を済ませる。さて、俺にとっては此処からだ本題だ。鈴嵐からなるべく情報を聞かないと…まずは…


「…鈴嵐はどうして捕まってたんだ?」


そう、彼女の事を知らなければ。彼女は俺と同じで召喚されて抵抗したから牢屋に入れられたのか、もしくはこの世界の人間であそこに居る連中と何らかの問題を起こしたのか…


俺的には後者の方が望ましいんだが…


「……大した事はしていない…ただ、私は私の主となるべき人間を探して旅をしていて……大国の一つ『クリアール』に訪れたんだ…だが、そこで他所の国の間者と間違われてな…なにぶんこの格好はあの国では珍しいから…」


……ふむ、後者か…


「危うく、主を見つける前に終わってしまうところだった…まだまだ私は未熟だな…」


自嘲気味に笑う鈴嵐。


【まったくだ…危うく俺まであんな辛気臭せー所に放置されるところだったじゃねーか!】


「ま、結果的に助かったんだからいいじゃん。これも教訓ってことにすれば…で…その喋る武器は?」


「っ!?」

【おっ!?】


ん?なんだ?なんで驚くんだ?


「聞こえるのか!?旋武の声が!?」


「聞こえるも何も…牢屋からべらべら喋ってたし…あんたも声に出てたぞ。もしかして…普通の人には聞こえないのか?だったら気をつけたほうがいい。一人でブツブツ言ってたら怪しいことこの上ないからな」


【ぶっ…ぶわっはっは!!いいねぇ!!あんちゃん!ひっさしぶりだぜぇ〜契約者以外に俺の声が聞こえる奴にあったのはよ!あんちゃん、相当出来るだろ!?】


「いんや〜お箸より重いものなんて持ったこと無いなぁ〜〜俺は。か弱くて貧者な優男なんでね」


(絶対嘘だ…)


胡散臭さそうな視線を送る鈴嵐を無視し、旋武という武器に向かって話しかける……傍から見てると俺も変人なんだろうな…


「で、お前は?」


【おお!俺様は旋武!緑のエレメンツウエポンだ!!】


エレメンツ?ウエポン?


「…すまん。言ってる意味が分からん。なんせ、俺はあのクリアール…と言ったか…あの国のボケに異世界から召喚されたんだ。だから、こちらの世界の知識は殆ど皆無なんだ」


俺の言葉に一瞬驚いたような表情を浮かべる鈴嵐。だが、俺の格好を一瞥し…


「なるほど…こちらの世界ではそのような服装のものは珍しい…だが『キャスト』なら話しは別だな」


またもや聞きなれない単語。だが、話しの流れから推察すると…


「…ふむ、俺らのような召喚されたものをキャストと呼ぶのか……んで、そんな呼び名があるという事は、召喚されたのは俺が初めてとかではなく、結構頻繁にそういう事は起きてるみたいだな…」


「…驚いたな…ユウトは見かけよりも頭がいいみたいだ」


むっ?それは俺が見た目馬鹿って事か?


「ふふ、気を悪くしたなら謝る…」


俺の表情から考えていることを察した鈴嵐が微笑みながら謝る…


……ちっ、笑顔が可愛いじゃねーか!?女は卑怯だ!!


この世の不条理を呪っていると鈴嵐は一つ咳払いし…


「なら、順を追って話そう。夜明けを待って行動した方が安全だし…それにこの状況じゃどのみち睡眠なんて取れないから」


「心配しなくても襲ったりなんてしねーぞ?」


さっきの反撃を試みて見ると…


「///ば、馬鹿!いいから話を聞け!」


効果は覿面のようだ。この暗がりでも赤くなった顔が分かる。旋武は声を押し殺して笑っており、そちらを睨んでから鈴嵐は話しだした…



「この世界…ベルンティスに住む人々には精霊を扱う力がある……古の時代人々は精霊を使った術…精霊術で発展を遂げ、生活を豊かにしてきた…」


ほうほう、精霊とな…


【んでもって、その精霊術によって、精霊が憑依した武器。それが俺様たちエレメンツウエポンだ!エレメンツには属性ごとに色があってな!俺様は緑、草花から成長の恩恵を受けて、持ち主の身体能力の強化ができるんだぜぇ!鈴嵐が俺を軽々ぶん回せるのにもそれが作用してんだ。けけけ、だからよ。おれっちがいなきゃ、かよわい女の子さ。襲うならそん時だぜ!】


「あぁ、今後のために良く覚えておこう」


「///き、貴様ら!一体なんの話をしているんだ!!」


顔を赤く染めながら叫ぶ鈴嵐。うん、初で可愛らしい…


「で、キャストってのは?」


とりあえず、話の変える。鈴嵐は何度か深呼吸をし、心を落ち着かせ俺の問いに大して口を開いた…」


「精霊術の力で異世界の力あるものを召喚し、知識やその能力を国のために生かそうという考えの元、召喚されてきたものを私達はキャストと呼んでいるんだ…だが……」


いいづらいことなのか、言いよどむ鈴嵐。だが、やがて決心したのかゆっくり口を開き…


「召喚されたキャスト達は反乱を起こし、戦となったんだ。無理やり召喚された挙句、帰る手段は無い…などと言われたらそれも当然だ……キャスト達は人数こそ少ないが、元の世界の優れた知識と、この世界で身に付けた精霊術を応用させ高い戦闘能力をほこり、双方に多大な犠牲を与えて戦争は終結。今は、キャストたちが収める国、大和を建国したんだ」


「なぁ、ということはだ。俺が元居た場所に帰るすべは無いって事か?」


「…そうなる……」


やっぱりか…あ〜自力でどうにかするしかないのかぁ〜〜。ん?でも無理して帰る必要があるのか?こっちで平穏に生きるって言う道も…


と、あれこれ色々考えていると、鈴嵐が若干怒気を込めた声で…


「……クリアールめ…噂をこの目で確かめようとしたのだが、今更キャストを召喚するなどとは……何を考えているんだ」


「まぁ、相手の思惑はどうでもいいけどさ〜。あぁ、これからどうすっかな〜」


手持ちを確認する。奪ったローブと幾ばくかの金銭。住居なし、食材もなし、着替えもなし。衣食住全部が不安定だ…


「……大和に行ってみるのは?あそこは万が一キャスト達が作った国だから、待遇も寛大だと思うし、大陸有数の学園があるはずだ。この世界で暮らしていくための知識を学ぶにも事欠かないと思うし…私もそこに行ってみるつもりだ」


「そうだな…でさ、鈴嵐はまた主ってのを探すわけ?なんでそんな事をするのさ?」


「……それが私の村の決まりだからだ。私の村はメルティア王国内の南の偏狭の地にある。その村は戦を生業とする強者達の村でな…。その村では鍛えたその武を認めた主のために尽くす、どの国を贔屓するわけでもない。認めたのがただの農民だとしてもそのものを一生守りぬく。そんな一族なんだ…」


「ふむふむ…それで鈴嵐も主を探していると?」


「あぁ、私達は16まで里の者に鍛えられる。そしてその後旅に出るんだ。男はそのまま主を見つけ、死ぬまで尽くし、女は…その…なんだ…」


ん?恥ずかしそうに顔を赤らめモジモジとする鈴嵐…やがて、意を決して…


「あ、主に…こ…子種を恵んでもらってだな…村に帰って子育てをするんだ……あわよくば、主の妾になり、一緒に添い遂げる……」


「………あ〜〜」


要するにだ。より良い遺伝子を求めて、子孫を優れたものにしようと…そんな所だろう…


「で、さっきの国には鈴嵐のお気に召す男は居なかったと?」


【けけけ…そういうこった!!鈴嵐が望んでるのは腕っ節のつえぇ男!だが、マッチョは嫌いと来たもんだ!つまり、優男で強い男ってわけだ。我侭な女だぜぇ】


「なっ!」


「ま、一生の問題だからな。いいんじゃねーのそれで?」


【それで、捕まってりゃ世話ねーけどな…クリアールに行ったのも優男が多いからって理由だ。最近、きなくせーから止めとけつったのによ!自分の目で見なきゃ信じられんと来たもんだ!】


「お前が居たのに捕まったのか?その恩恵とやらはどうなった?」


【あぁ、武器持ってで門を抜けられないんで、そこで兵士に一旦あずけたんだわ。んでもって、第二関門で身元確認で異常が無けりゃ、武器も返ってきてめでたしなんだがよ。その第二関門で捕まっちまったんだよ。おれっちがいねーから、当然かよわいまま。あれよあれよと、屈強な兵士達の慰み者に…】


「///せぇんぶ!!そ、そもも!に、にゃぐさみもろなんてみゃってない!!!」


小声で怒鳴るという高等技術でを見せる鈴嵐だが呂律がおかしい。、旋武はくぐもった声で笑っている。うわ〜武器にからかわれてるよ。ま、責任の一端は俺にもあるんだけどさ…


今の鈴嵐の言葉を正常に変換するなら『旋武!!そもそも、慰み者なんてなっていない!』だろう……にしても、本当にギャップがあるな。


見た目は凛としているのに、物凄い初だ。こりゃ、へたすりゃ悪い男に騙されるね……


【兄ちゃんはどうだい!?俺の声が聞こえるし!このじゃじゃ馬を貰ってやってくれねーーか?こう見えて可愛いところもあるんだぜ!?きっといい声で鳴くと思うがどうよ!?】


「そろそろ、やめてやれ。いい加減、可哀想だ」


真っ赤になって口をパクパクしている。つーか、緊張感ねぇな…まぁ、別に敵も近くには居ないみたいだし、緊張してたら疲れるだけなんだから、別にいいんだけど…


【へいへ〜い】


旋武がからかうのをやめ、鈴嵐が数回深呼吸をし、落ち着いたところを見計らって俺は口を開いた


「とりあえず方針は決まったな。さて、夜明けまではまだ少しある。さっきはああいったが無理にでも寝とけ。倒れたら元も子もない。なんなら、俺が優しく寝付かせてやろうか?」


「ひ、必要ない!!」


プイッとそっぽを向き、木に寄りかかると数秒たたずに寝息を立て始める鈴嵐…


「……寝てんじゃん………」


ああは言ったが、やっぱり疲れてんだな…


【……兄ちゃん、一緒に居る時だけでいいからコイツ頼むわ。戦闘時には結構つえぇんだけどよ。緊張感というか、警戒心が皆無なんだわ】


「戦闘を生業としてるんだろ?そんなんでいいのか?」


【元々、こいつはそんなんに向いてねーんだよ。生まれは自分で選べねーからよ。ま、俺様が常に起きてるから寝てる時まで警戒するって技術がいらなかったってのもあるけどなぁ】


確かに、寝顔は年相応の少女だな…


【それに、気を張ってて疲れてたんだろーよ。きっと、牢屋で私はこれからどんな卑猥な拷問を受けるのかな?とか考えてたんだぜぇ…】


「……後半の台詞がなけりゃ、いい感じで終わったのに………ま、構わん。いつまで一緒に居られるかは分からんがな」


それだけ言い、とりあえず今まであったことをまとめてみる。



1まず、学校帰りのバイトに行く途中に猫と沙那という少女に会う。


2猫の怪我治す。


3猫逃走。沙那が追いかけた後、魔方陣の展開を確認。助けようとしたものの巻き込まれる。


4ベルンティスという異世界に召喚され、我を失い暴れた結果、召喚師を殴打し、捕まり牢屋に。


5牢屋からの脱獄に成功し、逃げる途中で鈴嵐と旋武に出会う。


6無事、逃げ切ってこの世界の事を聞く。


で、今に至ってるわけだ……いや〜あはは、劇的な一日だったな……こんちくしょ〜〜


ん?ということはだよ。沙那とあの猫もこっちの世界に居る可能性が高いな。まぁ、生きてるかどうかは微妙だが…


俺と同時召喚されたにも関わらず、牢屋にもあの場にも居なかった…そこから考えると俺が正規召喚、向こうはイレギュラー召喚になった可能性がある。


イレギュラーの場合、世界間の時空と時空との狭間に取り残される場合がある。こうなったら生存確率はゼロだ。


もう一つ考えられるのが別の場所に召喚された可能性だ。この場合は、俺と同じこのベルンティスに居るという事になるが……あんな子供と猫にサバイバルのスキルがあるとは到底思えない。


となると、生きているとすれば、町なり村……人がある程度いるところに居るはずだ…


「なぁ、旋武。この世界には大和とクリアール、それに鈴嵐が居たメルティア王国…それ以外にはどんな国があるんだ?」


【大きいのはその3ヶ国と軍事国家シャリトスの四つだ。だが、あと、魔族たちの国ゲールシュティンとエルフの住むユミルがある。】


旋武の情報を元に、地図を想像すると、この世界の大きな大陸は三つ。北の大陸にゲールシュティン。南の大陸は森ばかりでそこにユミル。そしてここが丁度中央に位置する大陸で、この世界最大の大陸らしい。大和が大陸の北に位置し、南にクリアール。東にメルティア、西にシャリトスと他に小国が多数で形成されているらしい。


【メルティア、シャリトス、大和の3国は同盟国家でな。さっきも行ったように大和にある学院に貴族の坊ちゃんを始め、大勢の生徒が通ってる。そこで大和のキャスト特有の独特の知識とこの世界の精霊術との知識の交換の場という風になってる。まぁ、それと魔族が南下し侵攻してくる為の防波堤や胡散臭いクリアールの牽制って意味もあるだろうがな】



なる〜。


ともかく、沙那ちゃんが居るとしたら、この大陸のどっかって事か……う〜ん…


……どうにかなるか


縁があればきっと会えるだろうし……


よし、となったら俺も寝ようっと



Side クリアール


首都クリアールにある。ベネッセル城。その魔術師の塔の最上階に彼の部屋はある。


「逃げられただと!?」


翌朝、起きてきたミハイルは兵の報告を聞き、怒鳴り散らした。


「…で、どうするミハイル?この件に関してはお前が国王に任されているのだろう?」


ミハイルの立場はこの国の最高顧問魔術師。


「…我が偉大なる御先祖様のお告げが確かならば、あの女はともかく、男の方は『使徒』である可能性が高い……すぐに軍を編成し、探し出せ!!」


「…それは不可能だ…」


ミハイルの命令をカリウスが即座に否定する


「何故だ!!」


激昂するミハイルにややため息を吐きながらカリウスは告げる。


「……そもそも、何故我らがリスクを犯してまでキャストを召喚したと思っている?3ヶ国同盟に対抗するため。少しでも軍備を強化するためだろう?」


その軍を脱走者の追っ手に使うなどとは、強化どころか逆に衰える。そうなったら、他国の侵攻を受ける可能性が高い。


「ぐっ!!捨て置けと言うのか!!」


(使徒…神の使い……神に愛された者か……)


ミハイルの祖先は偉大なる大魔術師である…その死の直前に予言したのは、異界から現れる使徒の事。


神に愛され、絶大な力を持つもの…味方につければ、これ以上の戦力増強は無い。


「別にあの少年が使徒と決まっている訳ではあるまい。どのみち、牢屋に一度ぶち込んでいるのだ。探し出したところで協力を仰ぐのは難しいだろう…」


「し、しかしだな!!この件が大和に露見すれば色々ややこしい事になるぞ!!」


「…それは、外交に頑張ってもらうしかなかろうな」


「くっ!?では、各地に駐在する軍に手配だ!国境を越えさせるな!!」


「…了解した」


確かにその手段は有効だ。街や村で宿なり、食料を調達せねば逃亡生活はままなるまい。もっとも…


(この街から脱獄したのだ…すんなり捕まるとは思えんがな…)


そうは思っても、他に手段も無い…カリウスは言われたとおりに各地の駐屯軍に指令を飛ばした。















更新完了。


読んでくれている人、ありがとー。


久遠です。ようやくデイズ更新。卒論の締め切りが迫っている中、見事なまでの現実逃避w


ちまちま、更新していくんでまた読んで下さい。

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