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第一話:デイズブレイク

「えっと、今日は燃えるゴミの日だったよな」


カレンダーで曜日を確認し、ゴミを纏め、学校にいく準備をして家を出た。


「おはようございます」


「あら、悠斗君、おはよう。これから学校?」


「ええ」


「一人暮らし大変でしょう?」


「はい。でも、もう慣れましたよ」


お隣の若奥様との会話…あぁ、普通っていいな〜


「ふふふ、何かあったら遠慮なく言ってね。困ったときはお互い様だから」


「はい、では失礼します」


ごみを置いて学校に向かうことにする。幸い、ご近所にすんでいる人はいい人で何かと俺を気にかけてくれる。ありがたいことこの上ない


「おはよう宗我君」


「おはよう」


クラスメイト達に挨拶を交わし、席に着く。入学してから一ヶ月、新しい環境にはだいぶ慣れてきたが、いかんせん、今まで俺は学校というものに行ったことがなく、また、同年代の知り合いとのコミュニケーション経験も皆無。おまけに世間に疎く、共通の話題がない。


そもそも、俺は人間と言う生き物があまり好きじゃない。もちろん、中には良い奴も居るが、そんな奴はほんの一握りだ。


なので、積極的に自分から交流を持つような行動はおこしていない。


そんな要素から俺には特定の友人というものはいない。

挨拶くらいは交わすが、あくまでクラスメートとしての付き合いである。皆、趣味が合う同士のグループで固まり、昼食などを取っているが、俺は孤立しているのだ。まぁ、寂しくないと言えば嘘になるが、それでもあのまま人里はなれた場所で鍛錬に明け暮れるよりは遥かにましだ。いずれ良き、そう親友と呼べる人間と仲良くなり、可愛い彼女を作りたいと思う。


まぁ、全ては時間が解決してくれるだろう。


そう考え、俺は英語の教科書を取りだし予習を始めた。リードで当たりそうだからだ。


暫くして顔を上げる。和訳はまったく進んでいない。


(わからん…)


お手上げだった。


意思伝達魔法が使えるので語学は父さんの日本語しか分からない。母さんの異世界の言葉も、この魔法を用いて日本語に変換してたし…。つまり、何がいいたいかと言うと、英語はまるきっり分からないのだった。


(そもそも何故、言語を統一化しない?不便で仕方が無いぞ!)


愚痴を言いつつも、辞書をフルに活用しながらどうにか和訳を進めるのだった。


あっという間に放課後になる。俺は部活に入っておらず、バイトに勤んでいる。

そのバイトもやっと見付けたものだ。


今の俺は(・・・・)父親譲りの黒髪と母親譲りの碧眼と言う容姿をしているせいで何度か面接に落とされた。親は美人な母親に似の容姿なので整った容姿をしていると言っていて、実際、今のバイトはカラコンをつける事で一発採用だった。


ちなみに喫茶店のウエイターと言う接客業である。





バイトを終え帰宅。後は風呂に入って寝るだけなのだが…


「はぁ〜」


習慣とは恐ろしく、長年の鍛練が生活の一部となってしまっており、やらないと落ち着かず、眠れないのだ。


なので刀を持って、深夜の公園に結界を張り鍛練をしに行くのだった。



これが俺の基本的な生活のサイクルで普通の生活に満足していた。だが、この日…俺の日常は崩れてしまった……。



その日…俺はいつも通り、授業を終え、バイト先に急いでいた。そして、近くの公園に差し掛かった時…


「……子共の泣き声?」


聞こえてきた泣き声…行ってみると小さい女の子が何かを抱えて泣いていた。


小さい子に声をかけるのはよろしくないが、此処で見てみぬ振りはできない。


人間はあまり好きじゃないが、子供は好きだ。まだ純粋で穢れが無い。それが年を取るとどうしてあんなに性格が悪く、醜いものになるのだろうか?


言ってはおくが、俺は別にロリコンではない。


「どうした?」


怖がらせないように微笑みながら屈み視線を合わせる。


「この子が…」


抱いていたのは白い仔猫。


「木から落っこちたまま動かないの!」


確にピクリとも動かない…あまり気は進まないけど仕方ないか…


スッと手を翳し、猫に触る。


「……えっ?」


暫くして元気そうに目を開ける


「…もう大丈夫だよ」


軽く猫を撫でた後、呆けている女の子の頭をポンポンと撫でる。


「お兄ちゃんが治してくれたの?」


頷いて肯定を示すと、パァッと笑みを浮かべて


「どうやって!?あの光は!?」


「魔法でね…俺は魔法使い。名前は宗我悠斗」


普通はこいつ頭おかしいんじゃねぇか?という目で見られること受け売りな台詞だが…


「す、凄〜い」


……キラキラした目で見てる…信じてるよ。純粋な子だ…。やっぱり、子供は良い。


何度も言うが、俺はロリコンではない。


「私、水菜月沙那みなづきさなこの子を助けてくれてありがとう」


「どういたしまして…」


さてっと…バイトに行くかな…


用も無いので一言告げて立ち去ろうとしたが…


「あっ、猫が…」


沙那の腕から猫が抜けて走っていき、慌てて追い掛ける沙那だが…


「つ、捕まえた…。えっ!?」


「―――!?沙那ちゃん!」


猫を捕まえた沙那の回りが光に包まれ、地面には輝く魔法陣が描かれている。


悠斗は全速で沙那に近寄る


「嫌だ…何これ…怖いよ…」


「沙那ちゃん!」


駆け寄った悠斗は光の中から沙那を引きずり出そうと手を伸ばすが…


「お兄ちゃん!」


その手を取るために沙那も手を伸ばす…。そして、二人の手が繋がれた瞬間、光が強まり、やがて、消えていく……


公園に静けさが戻る…。



たが、そこに二人の姿は無かった。

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