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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

無言恋愛

作者: 夢咲白憧

ジャンルは恋愛となっておりますが、あまりラブシーン等はございません。

醜い点等多々あるかとございますが、よろしければみてやってくださいvv



人生なんて残酷なものよ。


突然なにもかも、奪い差っていくもの…


私は今、この白い箱の中にいる。


私はここから出られない。



…違う。


正確には出たくない。


出るのが 怖い。


現実を見るのが怖いの


だって…


ここにはもう…私しかいないんだもん。



パパもママもいない…


学校(高校)の先生…


可愛い後輩。


友達…


そして、けんた(彼氏)も…



私には、もう誰もいないの…


あの…悪魔達のせいでね。



忘れもしない…


忘れる筈がない。


高校生活最後の日。


卒業式の最中だったわ。





その日はまるで悪夢のようだった…


違う…


夢なんかじゃない。


あれは現実で起こったこと。




その日は日曜で、殆どの保護者が、母親だけでなく夫婦揃って来ている家庭が多かった。


私の家も、そんな中の一組。


内の学校では、在校生は全員参加が基本。


大好きな人達に囲まれながら私は卒業を迎える。


次々に卒業生の名前が上げられ、順番が迫ってくる。


秋元(アキモト) 百合愛(ユリア)


「はい」


私の名前が呼ばれた。


席を立ち、ゆっくり歩き、ステージの脇に備え付けられた階段を上がり、中央に向かう。


その時だった。



【バキューン!】


大きな音が体育館に響き渡る。


ステージの袖の先生が騒がしい。


するとそこから覆面を被った数人の集団がやって来る。


体育館の入り口からも数人の集団がやってきて、彼等は入り口に鍵を掛ける。


館内はザワザワと五月蝿くなる。


そして、ステージにいた私は…彼等の一人(リーダー格)に捕まり、頭に銃口を突

き付けられる。


突き付けた銃口を一旦放し、それを上に向け、もう一発。


【バキューン!】


間近でそれ等を耳にする私の身体は、尋常じゃないくらい震えていた。


「この学校は我々が占拠した!…大人しく金目の物を渡せ!!」


…強盗!?


他の奴等も手に銃を持ち、館内を恐怖で陥れる。


「ぁ…携帯も寄越せよ?もし誰か…一人でも妙な動きしてみろ?その時は…」


そう言いながら男は再び私の頭に銃を突き付ける。


「どうなるか…わかるよな?」


なんで…こんなことになったんだろう。


私が…私達が一体、何をしたって言うの?


彼等の仲間の何人かが白い布袋を手に保護者や生徒、先生、来賓等から金品と共に携帯も奪っていく。


勿論、片方に銃を手にして。


皆、抵抗しなかった。


そんなことをすればどうなるか解っていたから。



だけど、一人。


彼等に抵抗した人がいた。


けんた…


「何だ?お前は!?」


仲間の一人がけんたに言う。


「もう…いいだろ?俺達を解放してくれ…」


…何で?


こんな時まで…


けんたは、人一倍に正義感があった。


止めて?……危ないよ…


「百合愛を…人質を解放して下さい」


けんた…


「…」


「こんなことしたって、いずれは警察に捕まる…」


「…れ」


「だから…」



【バキューン!】



「けんたー」


銃声と共に、泣き叫ぶ私の声。


そして館内に彼、等以外の悲鳴が響き渡る。


「お前が悪いんだ…黙れって言ってんのに…お前が……」


けんたはピクリとも動かない。


そんなけんたを見て、彼を打った男はブツブツと呟いていた。


私は他に、声が出なかった。





【バキューン!】


今度は私を捕まえている男が銃を打ち上げる。


その銃声で館内は一瞬静まり返る。


「テメェ等、静かにしろ!コイツが目に見えねぇのか!!」


仲間の一人が何かを持っている。


あれは…


何かのスイッチ?


「この学校の至るところに爆弾を仕掛けた…勿論、この体育館にもな?」


え!!?


「もうわかるよな?…コイツを押せばここにいる奴等はお陀仏さ…」


コイツ等…


何を考えているの?


「押されたくなければ、言う通りにして、大人しくしとくんだな?」


正気!?



「オイ?」


男がそう言うと仲間の一人が持っていた爆発スイッチを手渡す。


「女…」



「お前はちょっくら、俺様のドライブに付き合って貰うぜ」


男は囁くように言った。


「ぇ?」


男は中間と目を合わせ、頷く。


「行くぞ?」


男は仲間を館内に残し、戸惑う私を連れて外に出ようとする。



『皆…』


体育館の裏口から出ても、館内の微かにザワメク声が聞こえて来る。




男は携帯を取りだし、誰かに電話をする。


恐らく仲間の誰か…


「俺だ…車を回せ」


このまま逃亡する気なんだ…


私は?…私はその為の人質??


校庭を出ようとした時、自然とその光景が頭を過る。


それが…急に怖くなって、今すぐこの場から逃げだしたくなった。


人質にされて…用無しになったら、私は…


「この(アマ)!」


私は激しく抵抗した。


男が持っていた銃を必死に手に取り、奪おうとした。


揉み合っている内にバランスを崩し、男が私に覆い被る様に倒れ込む。


【ドカーン!】


【ドカーン!】


【ドカーン!!】


【ドカーン!!】



そこから私の記憶は無くなった。





後から解ったことだけど…


恐らく…


揉み合って倒れた時に、爆発スイッチが作動したのだろう。


そう警察から聞いた。


私と倒れ込んだ犯人は、奇跡的に生きていた。


犯人も病院に運ばれたが…私より早く目が覚めた様で、その場で捕まった。


犯人達(集団)は、この学校の元不良の卒業生や中退生達だった。


金欲しさと、嘗ての恨みを兼ねて、今回の事件を起こしたとの事。




私は生きていた。


私一人だけ…


あの中(体育館)にいた人は、犯人達も含め、誰一人助からなかったらしい…


私の…私のせいだ…


私があの時…あの人と揉み合わなければ…


取り返しの付かない後悔を繰り返していた。





意識が戻った時、私の身体はボロボロだった。


身体の至る所の骨が、ひび割れや折れていたりと、重症だった。


そして私は声を失った。


精神的ショックの為か…


詳しい原因は不明だった。


もう…この際…私も…


そんな事を思った。



私のお腹の中には、けんたの子供がいた。


私は、卒業したらけんたと結ばれる筈だった。


筈だったのに…


私のお腹の中で4ヶ月程共に過ごしたけんたの子も、事件のショックのせいか…


検査の結果、流産した事が分かった。


私の目から、涙が止まる事はなかった。


だけど、泣き声が響く事はない。






これから私はどうしたらいい?


両親には親戚がいなかった。


しかも私は、怪我のせいで、皆の御葬式にさえ、行くことが出来なかった。


私には、何もできないの?


私は…


そんな事を思い、包帯だらけの自分の両手を見つめた。


傷だらけの身体で、今日も恐怖で眠れずにいる。



住んでいた家(実家)は売る事にした。


一人っ子の私には広すぎる一軒家。


退院したらどこかのアパートにでも暮らそう。


卒業式前に辞めたバイト代…


貯金しといてよかった。


両親の遺産、二人(父母)の生命保険で多額な金額が降りた。


生活の方はしばらく大丈夫そうだ。


だけど私は、しばらくこの白い箱の中にいないといけない。


寧ろ私はここから出たくない。


出るのが怖いの…



あの日から喋れない私の会話は筆談。


手話なんて覚えられない。


覚えたくない。


暇な時間に、時々本なんかを読んでみるけど…


頭に入らない。


その内、治るかもしれないし…


聞く方は聞けるから…


あまり必要ないかな?


とか…


ホントは唯…今の状況を受け入れたく無かっただけなの。



月日が流れ、等々その日はやって来た。


私は退院する事になった。


嫌だった外にも出ないといけない。


久しぶりの空は眩しかった。


だけど…どこかにポカンと大きな穴が空いていた。



外に出て、最初に行った場所。


それは、両親のお墓。


『パパ…ママ……久しぶりだね?』



御免ね?


こんなことになって…


私のせいで…


私の……






その後も数日掛けて、先生、後輩、友達…


そして最後に、けんたのお墓参りをした。





けんた…


けんたのお墓の前。


御免ね…


私…


けんたの子…守れなかった。


御免ね…


けんたに貰った指輪…


私…まだ嵌めてても、いいのかなぁ?


けんたのお姉さんは、捨ててしまえば良いって…言ってたよ。


捨てて、新しい恋をしたら良いって、言われたよ?


けんた…


私の声…届いてる?


私のこの儚い想い…


天国にいるけんたにも…


届いているのかな?


けんた…





けんた…


私は……私も…


貴方達の所へ連れて行って?





けんたのお墓がある所は、とても見晴らしが良く、空が近かった。


手を伸ばせば…けんた(皆)の所に行けそうな気がするよ?



今…逢いに行くよ?



高台から身を乗り出し、両手を上げ、あの空へ飛ぼうとした。


【フワッ】


!?


…けんた!?



私の身体が空を舞った時、その腕を強く握った…暖かな温もり。


その先を辿ると、誰かがそこにいた。


「あんた!何やってんだ!?」



宙に浮かんだ私の身体を、その腕ひとつで掴んでいる


男は汗を流して言った。


「馬鹿な真似は止めろ…」


途切れ途切れに聞こえてくる彼の声。


「こんな事しても…誰も喜ばないぞ……」


冷たい雫が頬を伝って流れ落ちる。


「生きろ!」


宙に浮かんでいた私の身体は…徐々に引き上げられていく。



けんた………






高校三年。

11月。

卒業する4ヶ月程前の事。


「けんた?……ちょっと良いかな?」


「何?」


「実は私……」


不安げな顔をした私を、けんたは心配そうに除き込んだ。


「どうしたん?」


「実は私…私のお腹の中に………」


「もしかして…」


私は頷いた。


けんたは少し驚いた様な顔をした。


あそこまで言えば、大体予想は着くでしょ?


「百合愛…」


けんたは私の手を掴む。


「けんた…」


私達まだ高校生だけど…


けんたの子…下ろしたくないよ……


けんたは、私の手を掴んだまま黙っていた。


やっぱり…


駄目なのかな……


涙が滲んだ頃、健太が言った。


「百合愛……結婚しよ?」


それは、意外な一言だった。


「今はまだ…出来ないけど……卒業したら…………」


……の?


「…いいの?」


けんたは優しく頷いた。


「俺は高校卒業したら…思いっきり働く…百合愛と……子供の為に…」


けんた…


「新米な俺だから、初めはいっぱい苦労させるかもしれないけど……これからは俺が、二人を守っていくから…」


この時の私の顔…きっと、今までで一番不細工だった。


「百合愛(二人)を…俺の頂戴?……きっと…幸せにするから…」


けんたの顔も、私に負けず、不細工だった。


ポロポロと溢れ落ちる涙はしょっぱかった。






………




「……た!」


「…んた!」


ン…


「おい!」


…誰?


「しっかりしろ!?」


頭が痛い…


今のは……夢?…だったの?


「あんた!?…大丈夫か?」


…貴方は!?………



そうだ…


…あの時の人だ。


あの時…宙に舞った、私の腕を掴んだ人…


私はその人の腕の中で眠って(意識を失って)いたんだ…


私はゆっくりと起き上がる。


その人は必死に、私に声を掛けてくれていた。


だけど…


どうしよう…


私は喋れない。


どうしたら伝わる?


どうしたら…


私…何も持っていない。


私の鞄には財布と皆のお墓がある住所と地図が書いたメモしかない…


携帯はない…


掛けることの出来ない電話なんて必要ないもの。


あの事件の後、すぐに解約した。


仕方ないから私は、傍に落ちてた枝を拾って、地面(砂地)に書こうとした。


男性は不思議そうな顔してそれを見ていた。





何て書こう…


《助けてくれてありがとう》


…ありがとう…か……


私…ホントにそう思ったのかな?


それを見た男性は言った。


「あんた……もしかして、喋れないのか?」


私はコクリと頷いた。


「そうなのか…大変だな?………俺の声は聞こえているのか?」


私はまた頷いた。


「そうか……」


…違う。


さっきは一瞬見間違えたけど…


この人は、けんたじゃない。


こんな…似ても似つかない人を、けんたと見間違えるなんて……


私どうかしている…


「あんた名前は?何であんな真似したんだ!?」



私はさっき書いた字を消し、その上からまた書いた。


《名前は、秋元 百合愛》


私はご丁寧に漢字の上に読み仮名を書いた。


「あきもと ゆりあ さん?」


男が聞き返すと私は軽く頷いた。


「秋元さん…さっきも聞いたけど、何であんな事を?」


何で?


貴方には関係ない…


それに…そんなの言わなくても解るでしょ?


あんな高い場所から飛び降りた理由…それはもう…ここに、いたくなかったから……


せっかく……後少しで、私は皆の所に行けたのに………お節介…


助けられて、こんなこと思うなんて…ホント、酷い女ね?私も…


思わず、笑みが出そう。




「言いたくないなら…無理に言わなくてもいいけど…もし俺で良ければ、話ぐらいは聞くけど?…」


男性のその言葉で、口許が微かに歪んだ。


知ってる?


貴方みたいな人を…お人好しって言うのよ?


思わず涙が出てくる。


「秋元さん?」


でも…私……そんな、お人好しな人…嫌いじゃないよ?


だって…あの人も……そうだったから…




「何か良くわかんないけど…辛いことがあったんだね?」


そう言って男性は私の頭を撫でた。


その手が妙に暖かくて、私の体温も1℃上がった気がした。




「ねぇ、秋元さん?」


それからどれくらいの時間が経ったんだろう?


その中で始めに話しかけたのは男性の方だった。


「ちょっとこれから時間ある?…よかったら一緒に遊ばない?」



男性は立ち上がり、優しく手を差し伸べる。


少し戸惑ったが、私はその手を掴んだ。


そしてゆっくりと立ち上がり、お人好しと一緒に彼のお墓を後にした。




その時、


【ピュ~ゥ】


追い風が吹いた。


私は振り返る。


『行っておいで?』


皆が…そう言っているように聞こえた。
















最後まで読んで下さった方ホントにアリガトウございます。

心よりお礼申し上げますm(__)m

まだ未定ですがこのお話は続編を書こうと思っております。

もしよければその時はまたよろしくお願い致しますvv


また参考までに感想等頂けたら嬉しく思います**

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