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第四話 戦闘のしかた

「ハァ、ハァ...」

男が全力で走る。

ザッ、ザッ、ザッ

背後に迫る足音を聞きながら、男は叫ぶ。

「何なんだ!お前は!」

後ろを見ると、女が、走ってきている。

逃げる、逃げる、逃げる。

だが、差は縮まっていく。

(なんで、あんな細い女より俺のほうがバテてんだよ!)

女のスピードは落ちず、ただ追いかけてくる。

ナイフを構え、一直線に迫ってくる。

ザッ、ザッ……ジャリッ

だが、男は幸運だった。

男が行き着いた川には、鹿の血抜きをしている人影があったからだ。

ーーー

キリンの鳴き声がまだ、こだましているところに男女三人が集まっている。

「...。」

「...。」

「...。」

(静かだなぁ。なんか今日はずっと、静かな時間がちょくちょく流れてるんだけど、これって俺が悪いのかなぁ。)

俺は、日馬に聞く。

「このキャンプ場にいるのは、日馬さんとさっきの人だけですか?」

「いや、俺と彼を含め6人いるよ。」

日馬は答える。

「あと、敬語じゃなくて良いよ。」

日馬は優しかった。

優しいがその優しさは、俺でも気づけるほどだった。

「びっくりしたわ。あなたが急に、牛になるんだもの。」

「違うから!あれはキリンだから!あと、さっきのは忘れてくれ!」

黒井が、掘り返す。

「何言ってるの。キリンは鳴かないのよ。」

「キリンは、子供の時に親を呼ぶために鳴く事があるんだよ。」

俺は言い返した。

「あなた、これ以上口答えしたら、ロースにするわよ。」

「それは、豚だ!」

「じゃあ、ヒレは俺がもらおう。」

「日馬も悪乗りすんな!あとキリンだって。」

そんな話をしていると、森から人が入ってきた。

「ねえ、さっき牛の鳴き声がここからしたんだけど...知らない?」

森から来たのは、二人の女性だ。

一人は、銀髪の小柄な女性。短パンに半袖といかにも軽快な服だ。

もう一人は、茶髪で俺と同じくらいの体格、ミニスカートとブラウスと都会的な服装だ。

二人とも、キノコや山菜などを大量に持っている。

「お帰り、沙月。木依。この二人は、宮巳と黒井だ。」

どうやら、沙月さんと木原さんらしい。

俺が続ける。

「はじめまして、宮巳楓生です。」

「黒井白奈よ。」

銀髪が喋る。

「私が沙月冷夏(さつきれいか)だ。さんずいに少ない月と書いて、沙月だ。」

茶髪が喋る。

「私は木原木依(きはらきより)です。木依ちゃんとよんでください。」

沙月と木依が挨拶した。

「三間と佐藤さんは?」

日馬が質問すると、沙月が答える。

「二人とも、私達にこれを持たせて更に森の奥に向かったよ。」

「わかった。まぁ、暗くなる前に返ってくるだろう。」

日馬はそう答え、立ち上がり沙月達から山菜を受け取った。

そして、俺達に向かって言う。

「俺はダオさんのところに山菜を洗いに向かう。」

「ダオさん?」

「さっき猟銃を持ってた人だよ。」

「ああ!あの原住民!」

俺がそう言うと、木依が答える。

「ダオさんはちゃんと日本人だよ〜。」

「嘘は良くないわよ、木依ちゃん。」

黒井が咎める。

「ええっ、嘘じゃないよ!」

「確かに、彼は日本人よ。」

沙月が援護する。

「沙月さんが言うなら、本当ね。」

「ひどくない!私と沙月ちゃんとの信頼の差は何!」

「決まってるわ。声、話し方、姿、あなたは嘘はつかないけど真実を言わない人ね。」

「何その性格診断!ひどい!」

木依は沙月に泣きつく。

「沙月ちゃ〜ん。黒井さんが私をいじめる〜。」

「あんまり木依をいじめないであげて。」

沙月が木依を黒井から隠すように前に出る。

バンッ!

そんな平和な世界を発砲音が切り裂いた。

日馬が反応する。

「みんな伏せて!」

俺達はしゃがみ、音から遠ざかる。

「川の方から音がしたな。」

「俺と宮巳で行くから、沙月たちはここで待っていてくれ。」

「わかった。」

沙月が答えを聞き、日馬が発砲音に走る。

(まじかよ、なんで発砲音のするところに行きゃなきゃなんねぇんだ。)

そんな恨み言を思いながら日馬についていく。

ザッザッザッ

かなりハイペースで走ると、開けた河原に出た。

そこには、先程名を知ったダオと向かい合っている女、そしてダオの後ろで、怯えている細めの男がいた。

「ダオさん!」

ジャリッジャリッ

日馬がダオさんに加勢しようと走り出す。

ヒュンッ

だが、女が持つナイフがそれを許さなかった。

「日馬!危ない!」

俺が日馬を注意する。

だが、日馬は止まらず、加速する。

まるでナイフが見えてないかのように。

女がナイフを振り下ろす。

日馬はその刃の軌道を完全に見切り、ナイフを手刀でで弾き飛ばす。

ナイフを離した女は、すぐ拾おうと背中を向けるが、

日馬が女の腕を掴む。

すると、女は日馬の方を向いた。

それが良くなかった。

日馬は女の襟元をつかみ、自分の体の上を通らせてぶん投げる。

ドジャッ

痛そうな音が響き渡る。

「日馬!」

俺は走って駆け寄る。

「大丈夫?」

「ああ、怪我はない。」

日馬は投げられた痛みで動けないでいる女のナイフを拾った。

「なぜこんなものがここに?」

俺はダオのところに向かう。

「ダオさんは大丈夫ですか?」

すると、ダオは頷き後ろの男に近寄る。

「うぅ...」

女性の声がした。

「うぅ...」

受け身を取れなかったのだろう。でも...

『うぅ...』

(なぜ、二重音声のように聞こえるんだ?)

女が呻く。

『嫌だぁ。まだ私は...』

その声は二重にも三重にも重なり響く。

日馬もダオも異変に気づく。

『xxxになりたくないぃぃ。』

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