特別編〈壱〉 入学式の夜
特別編・・・と言いながらも、しっかりストーリーに関わってくる事言ってます。
入学式の夜、俺はこれから起こるかもしれないイレギュラーに備えてスキルの確認をしていた。
「まず初めに確認するのは【魔法大全】だな・・・」
スキルの情報の見方が分からないのだが、試しに自分のスキルに鑑定魔法を使ってみるとスキルの情報が頭に入ってきた。成功したぞ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【魔法大全】
大魔導師に与えられるSSSランクのスキル。
獲得条件:職業が大魔導師である
知力S以上
体力・魔力共に1000以上
効果:魔法の記憶を本へと移し起こしたい魔法の事象を検索する事で魔法を行使可能。
魔法発動にかかる魔力をSランク魔法まで0にする。
魔法発動にかかる時間大幅短縮(約1万分の1)。
追加効果:スキルの持ち主が99.99レベルより上の場合世界に存在する魔法は全て記録され行使可能。
スキルの持ち主が99.99レベルより上の場合新たな魔法を創作可能、その魔法はすでに最適化されている状態で創作される。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
との事だった。情報見て思ったけどこのスキルはぶっちゃけ俺の持っているSSSランクスキルの中で一番強いと思う。魔法を秒で発動できてそれを記憶する必要はないし、さらには魔法作り放題とはまさに痒いところにも手が届くスキルだ。今日俺が善戦できたのもこのスキルのおかげかもしれない。
「試しに良い魔法なんか作ってみよっと」
何が良いかな?色んな場所で発動できてなおかつ相手を動けなくして攻撃出来るような魔法にしたいな・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
数分後・・・。
「出来た!」
初めて作ってみた魔法が完成したので家の庭で試してみよう、家の庭にいい更地があったしそこで魔法を発動させてみるか。
「行くぞ!《土天》!」
庭にでて早速魔法を撃ってみる。魔法を発動した瞬間庭の土が角柱の形となって空高く伸びた、これが創作土属性魔法《土天》である。
これなら相手を空高く打ち上げその瞬間に攻撃することが出来るし、外したとしても壁や柱そのものを倒して重量攻撃にもできる。なかなか完成された魔法ではないか。
「この魔法を発動する時も、詠唱や魔法陣生成を必要としないんだな」
【魔法大全】の魔法発動時間短縮は詠唱や魔法陣生成も入っているらしく、魔法発動時は魔法名を言うだけで良い。しかもこれは俺のイメージをしっかり持つための作業なので、慣れたらその行程すらもカットすることが出来る。
魔法陣を描く必要もないので敵からすると、いきなり地面から土の柱が生えて来るということだ。わぁ、やべーよこのスキル。乾いた笑いしか出ない。
「他にはどんな魔法があるんだっけ?」
気になってみたので色んな魔法を使ってみることにした。
「水属性魔法《絶対零度》」
絶対零度・・・それは全ての物質の熱運動が止まる温度。この魔法では限定した空間内の気温を絶対零度まで下げて相手の動き、さらには魔法までも停止させることが出来る。
ちなみに術者への保護プログラムも組み込んであるので術者が指定したものは動けるように出来る、試しに庭の木に放って見ると完全に凍った。殺しちゃったかと焦ったが解除すると元気なままだったのでよかった。
「闇属性魔法《深淵の手》」
この魔法は物質には影響を与えないが魔法全てに影響を与えることの出来る魔法だ、普通ならさっきの《絶対零度》は破るためには炎魔法の高温で振り切らなければならない。
しかしこの魔法は魔法自体を吸い込むのでとてもコスパがいい、その理由として放たれた魔法を打ち消すためには使った魔力の二倍が必要となるのだ。こう考えると魔法を吸い込めるこの魔法は魔法使いにとっては厄介な魔法なのである。
「《次元転移門》」
空間移動系の魔法の次元転移門だ。この魔法は行きたい地点と現在地の座標を結ぶ魔法だ、原理としては間に別の次元を挟む事で実質ゼロ距離に出来る・・・らしい。
この次元とは魔法発動のために無理矢理開けた空間の穴の事で、異世界などと言う非現実的なものではない。俺が転生を体験しているから異世界は実際にあるはずなんだけどね。
「おお、ちゃんと俺の部屋だ」
試しに庭と俺の部屋を繋げてみたが成功したようだ、門を通った先はすぐ俺の部屋だった。あ、靴脱ぐの忘れてた。絨毯の上に土が少し乗ってしまったがそれに見合う成果はあった。ただこの魔法を使うときは先がどうなっているか先に考える必要があるな。
「明日あるイベントは確か召喚儀式か?」
俺の所にやって来るのはどんな奴だろうか?一番はやっぱり淫魔がいいなー、でもハーピィも良いかも、彼女たちも中々侮れないぞ、うん。
「そろそろ別のスキルを確認しないと寝る時間がなくなってしまう」
翌日彼が淫魔を召喚することはないのだがそれを彼が知る由もないのだった。
ーーーーーーーーーーーーーその頃魔国ではーーーーーーーーーーーーー
ガァ、ガァ、ガァ!バサバサバサ!
何かを突っついていたカラスが一斉に飛び去った、木に止まった彼らの視線の先には息も絶え絶えに歩く魔族の姿があった。
道の端にはカラスたちが啄んでいたもの・・・人の死体が転がっている、大半は腐り始めておりハエがたかっていた。ここは魔国とサイアン王国の国境付近、つまり戦争の最前線だ。
「クソッ!何なんだあのガキは!いやガキどもは!」
俺は今回の入学式襲撃の指示役で全ての戦闘員を指示していた。騎士団長たちが去り主な戦力は消え、今が襲撃チャンスだと思い指示を出した。普通なら上手くいっていた、あの二人さえいなければ・・・
片方はこちらが侵入するなり迎え撃ってきた、剣の切れ味は異様に鋭く戦闘員は次々と葬られていった。魔法の扱いも上手く一撃で戦闘員の腕を破壊した。
こんな強い奴がまだいたなんて・・・焦って戦闘員に指示を出した、女を攫えと。女を一人攫えることが出来たがそこで現れたのが追いついてきたガキだ。
「何なんだあの化け物は」
真紅の瞳が夜の帳のように深い黒髪から覗く様は今思い出すだけでも足が震えて来る。仲間の抱えていた女は空中から取り返され、向かっていった仲間は剣を折られ逃げ出そうとした所を影の鎖に縛られた。
俺は見たことがあった。あれは十三夜の八夜『禍』様が使っていた魔法と同じだ、その後に放った炎の立方体もだ。万能なはずの俺たちの肌が一瞬にして消えた。
「クソッ!本当にあいつらは人間じゃねぇ!」
思わず口にした言葉に無いはずの返事が返ってきた。
「何を言ってるのかな?ボクらが人間じゃないって至極当たり前だと思うよ?」
声の主は木の枝に座っていた。上は黒いパーカーで手の甲までを隠しており、下には半ズボンを着ている。フードを被っていて性別は不明だが声からして女の子だろう。
しかしその目と、さも人形を抱えるかのように持っている物が見る者に恐怖を与える、そう彼女こそ魔王直属の配下である十三夜の三夜・・・『隷』である。
「あ、ああ・・・」
その目・・・凍えるような寒さを持つ水色の目を見て震える魔族の男を無視し彼女は喋り続けた。
「あれれ〜?ボクの与えた駒たちはどこへやったの?」
木から飛び降りグッと顔を寄せて問い詰める『隷』、目の前で見つめられた魔族の男の表情が絶望に変わった。
「まさか死んじゃったなんて言わないよね?」
「あ、も、申し訳・・・」
魔族の男は謝罪を述べようとするが声にならない。
「それなりの責任は払ってもらうよ?あ、でもその前にあった事ボクにぜーんぶ喋ってもらうね!」
魔族の男はそこまで聞いて意識を手放した。『隷』はその姿を見て興味を無くした、この時点で彼の死は決定したのである。
「まぁいいや、替えの物はいっぱいあるしね」
彼女は抱えていたもの・・・首から上の無くなった人の死体をポイッと投げた。すぐさまカラスたちがたかり、死体は黒い羽に覆われすぐに見えなくなった。
「さぁ、ボクは家に帰ろうかな〜」
彼女は気絶している魔族の男を引きずってその場を歩き去る。彼女が去った後、静寂の中聞こえるのはカラスたちが肉を啄む音だけだった。
誤字脱字あれば修正お願いします。いいねと星つけてもらえると嬉しいです!
投稿は定期的にしたいと思ってます。よろしくお願いします。