第七話 召喚された者達
俺も召喚したいよ・・・べ、別に淫魔じゃなくていいんだよ!
二時間目の授業が始まった、本日の二時間目は召喚魔法の授業だ。
「よーしお前らよく聞いとけ!まず召喚魔法とは・・・」
召喚魔法とは異界に住んでいる生物を魔法陣を門とすることで呼び出す魔術だ、異界といっても一つだけではなくて今わかっているだけでも三つある。
それが冥界、霊界、神界の三つで、魔法陣さえあればこのどれか一つの世界から絶対に一体は呼び寄せる事ができる。ただ魔力がなかったら無理だけどそんな特殊な体質はほぼいないと思う。
魔力を込められた魔法陣の光の色によってどこの世界から来るのか知ることができる、魔法陣が黒いと冥界、緑だと霊界、白色だと神界から呼び出される。
召喚される者の強さはその人の魔力の値に比例し、神は最低でもSランク以上の魔力を持たないといけないらしい。
「ーという訳で、まずこの魔法陣の上に乗ってくれ」
先生が指差す床には魔法陣が描かれていて、魔力を流せば召喚が始まる状態となっている。
「え、なぜですか?」
「ん?そりゃ今日、自分のパートナーを呼び出すからに決まってるだろ」
どうやら召喚魔法の授業とは名ばかりで、召喚魔法の授業は座学と最初に呼び出したパートナーとの付き合い方を学ぶ授業のようだ。そのため今日パートナーを召喚するらしいが一体どんな生き物が来てくれるんだろう。魔力を込めまくったら冥界から淫魔が来てくれたりして・・・
「どうしたの勝義?ニヤニヤ笑って」
「うおっ!生きてたのか!」
淫魔召喚について考えていると突然隣から勇星の声が聞こえてビックリした、俺も考え事をしていたがそれにしても気配を消すのが上手いな
「生きてたのかって・・・」
いやー、あのダメージからこんなに早く復活するなんて流石だね。てかニヤニヤしてたってそんなに顔に出てたのか?
あ、でもやましくなんてないよ?俺はただ冥界からのお客サマに備えようと思ってただけだし・・・
「まただ、ちょっと気持ち悪いよ」
勇星は俺のことを見て若干引いている。
「い、いいだろ別によ!」
「おいそこ!うるさいぞ!」
ほら、勇星のせいで先生に怒られたじゃないか。
「てことで鶴金、お前が一番にやれ!」
は!?
「わ、ワタクシですか!?」
「なんだその喋り方」
驚きすぎて思わず口調が変わってしまったよ、俺が最初にやる事になるなんて・・・こうなったら本当に淫魔呼んでやるか。と思ったが本当に来ると少し気まずいので幻覚魔法をかけておこう。
「よーし!」
魔法陣の真ん中に立って針で指を軽く刺し魔法陣に血を垂らす、これにより俺とこれから呼び出される者の血の契約が完了する。ポウッと魔法陣が黒く光った、冥界からだ!俺は幻覚魔法を強め皆んなからは健全なものが見える様にする。
「来たあぁぁ!」
(誰だ、俺を呼び出したのは?)
より一層魔法陣が光って前が見えなくなる、光が収まって召喚が終わり前に立っていたのは三つ首の黒犬・・・いわゆるケルベロスだった。ん?ケルベロスだと?
「えっと、まず普通の犬になってくれや」
(な、召喚して第一声がソレか!?)
何だか元気を失ったが仕方ないので一応先生に見せられる形になってもらう。
「いいからいいから」
(むう・・・解せぬ)
三メートルほどの巨体がみるみる小さくなって最終的には小型犬程の大きさになる、ダメ元だったのだがそんなこと出来るんだな。
「おい、俺の淫魔ちゃんはどこだ?」
(淫魔?そんな者はここにおらぬが?)
ケルベロスが周りをキョロキョロ見回した後こちらを向いて首を傾げる。
「召喚するつもりだったんだよ!ワン公は帰れー!」
何で犬が来るんだ!?俺はちゃんと「淫魔ちゃんおいで、こっちだよ」って念じたはずなのに!
(そ、そう言われても・・・一回乱界へ来たら数年は帰れぬ)
「・・・むう、なら一先ずは置いておいてやるか」
ちなみに乱界は今俺たちが住んでいる世界の名前だ、俺は諦めて幻覚魔法を消してみんなに俺の足元にいる子犬を見せた。
「うわぁ!可愛い!」
「ねーねー、鶴金くん!触らせて!」
女子が黄色い声を挙げて飛びついてきた、やっぱり淫魔よりこっちの方がいいかなぁ。男子はみんな俺の事をジッと見ている。
「なんだよ」
「いやなんか勝義らしく無いなーなんて、あははは・・・」
勇星が苦笑いしながらそんなことを言ってくる。
「らしく無いって何だよ!」
(うむ、俺もそう思うぞ)
女子に撫でられているケルベロスも勇星を支持する。
「ご主人様に何を!?」
このケルベロス君はどうやら自分の立場をよく分かっていないようだなぁ?
「どうしたの?犬と喋って」
「え、聞こえない?ケルベロス、勇星に向かって喋ってみてくれ」
俺とケルベロスが会話ツールとして使っているこれは直接頭に喋り掛ける、いわゆるテレパシーみたいな物なので勇星にも伝わると思うのだが。
(うむ・・・聞こえるか?主の友よ)
「うわ、本当に喋ってる!この子頭いいんだね」
勇星はケルベロスから来たテレパシーに珍しく興奮している。
「いや、特別なだけだと思うぞ。このワン公はケルベロスだからな」
「け、ケルベロスだって!?」
まあこの名前を聞けば普通は驚くか。『地獄の番犬』という二つ名を持つケロベロスは冥界では王であるハデスの次に強いと言われていて、その魔物としてのランクは世界トップクラスを表すSSSランク。
スキルと同じで魔物にもランクがある。そのランクは学園のクラスや、魔法、スキルと同じく下からF、E、D、C、B、A、S、SSSの順に強くなる。
「すごいなぁ、僕も頑張ろっと」
みんなは俺のケルベロスを見て早く自分のパートナーに会いたくなったのか我先にと魔法陣へ向かっていく。
「やった〜!魔狼だ!」
「こっちはブライトウィングだぜ!」
冥界から呼ばれる生き物は魔物と呼ばれる者達だこの世界にもいる事にはいるが、冥界にしかいないような種も召喚されていた。
「風の精霊だ!」
「天使だ〜」
俺たちAクラスは成績的には上位の組なので何気にみんなえげつない者を召喚しており、平均すると全員Bランクくらいを召喚できていた。
大体召喚主より若干弱い個体が呼ばれるので、この感じだと全員がAランクになれるくらいの魔力を持っているということだろう。
「そろそろ行こうかな」
勇星もパートナーを見てみたくなったのか足早で魔法陣へ向かっていき、魔法陣の中心で針を指に刺して魔法陣に血を垂らす。ゲーム内でのこのイベントでは確か召喚したい者を三種類選べたはずだがどれが来るのか?
ピカッ!
魔法陣が今までやった誰よりも強く光り、その色は何と白色。
神界からだ!
(誰であるか?我を呼ぶのは)
光が小さくなっていくのと同時に、威厳のある非常に重々しい声が空気を震わせた。
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