第五話 クラス内模擬戦
三連投稿第三話目!?
ジリリリリ
「うわあああ!うるさ〜い!」
入学式の次の日の朝が来た。俺は寝不足の脳に響く目覚まし時計の音に無理やり起こされる、天井を見て「ああ、そういやそうだったな」と納得しながら起きれた自分が少し怖かった。
「うう〜眠いよお〜」
二人と昨日決めた待ち合わせ場所で合流し、俺たちは三人で通学路を歩いている。
「どうしたの勝義?」
「どうしたんですの?」
呻きながらフラフラ歩く俺に横にいた勇星とレイナが不思議そうに聞いてきた。
「いや、昨日のこと考えてると眠れなくて」
本当はメモにこれから起きるはずの出来事を書いてたんだけど、さすがに未来知ってますなんて言う事はしない。ささっと言い訳を考えてそれっぽい答えを返した。
「私は一瞬で眠りましたわ」
「僕もだね」
あんな騒動があったのに二人はすぐ寝れたらしい。おい、魔族が来たっていうのに一体全体どんな肝っ玉してるんだよあんた達は。
「いいね。なんだか気楽で」
そう言った俺を見て二人は一瞬固まった。
「「え?」」
「え?」
何に驚いてるのか分からないが二人が目を見開いて信じられないものを見るようなに見てくる、そんな大袈裟なリアクションをするなよ。
てか今ここでするリアクションではなくないか、それ。普通のこと言ったはずなのにな・・・二人の考えが読めず首を傾げていると校門が目の前に見えてきた。校門の前ではアルファ公爵が元気な挨拶で生徒達を迎えている。
「おはよう!!」
この距離でこの音量で聞こえるなんて相変わらず声がでかいおっさんだな、前を通った生徒が耳を押さえているぞ。
「おはっ!・・・んん?」
俺たちが校門を通り過ぎようとすると突然公爵が声を止めた、なんだか嫌な予感がビンビンするのだが逃げたほうがいいか。
「おい!」
「・・・」
俺をガン見しているし絶対俺に声をかけてきたと思われる、しかし答えてしまうとどんなことが起こるかわかったもんじゃない。こんな時は・・・無視だな、そして早足。
「お前だ、男おおおおおおお!」
「お、俺ぇ?」
クソッ!しらばっくれようとしても無理だったか、肩を掴まれては逃げられない!
「その服装は何だああああ!」
ああこれか。昨夜スキルの確認の時にあるスキルを使って服を作ったんだ。それが用途がよく分からないけど神の名を冠しているSSSスキル【裁縫神】。
自分でやってみてビックリしたがこのスキル、何と機械よりも正確に裁縫することが出来るできるというとんでもスキルだった。いくら何でも縫えると言っても流石にこれは無理だろうと試してみて、野菜の断面すら縫い合わすことができたのには驚いた。
過去の俺が何で獲得したのか知らないけどせっかくなので能力確認と一緒に、大魔導士っぽくローブを作ってみた。コレがいい出来すぎたので制服の上から着る羽織にしたのである、まだ冷えるしね。そういえば二人は一緒にここまで歩いて来たはずなのに突っ込んでこなかった。
「これですか?僕の作ったローブですよ」
俺は正直にアルファ公爵に伝えた。
「な!これを自ら!」
信じた。なぜ嘘の可能性を考えてないの?嘘ではないけどね、でも普通疑うよね?それにしてもアルファ公爵ってチョロいな、よく政権争いで今まで勝ち残り続けられていると思う。素直と言うかアホと言うか・・・アルファ公爵に疑うという心はなくすぐに解放してもらえた、結局何だったのあの人。
「そのローブいいなぁ」
このやり取りを見ていた勇星がこちらを羨ましそうにチラチラ見てくる、もしやコレみたいなのが欲しいのか?
「何だ?欲しい服があるなら作るぞ?」
そう言うと勇星とさらにはレイナも食いついてきた。
「ホント!じゃあ、僕に似合うように制服を改造してくれないかな?」
「それなら私も、お願いしますわ!」
「了解、じゃあ土曜日に家に来て」
制服の改造なんて勇星もレイナも大胆なことするよな、俺もしてみようかな?土曜日は忙しくな・・・あれ?俺もしかして安直に返事しすぎたかもしれない。
(今の会話ってつまりレイナを家に呼んで制服触るってことだよな!?)
この話が広まり後に俺は「稀代の制服改造師」と呼ばれるようになるのだが、コレがその始めの制作依頼だった。
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俺が机に伏せて土曜日についてうんうん頭を悩ませていると、チャイムが鳴って先生が教室に入ってきた。
「おはようみんな、今日の授業を・・・」
今日の授業を、のところで先生は言葉を切る、何だ何だ、サプライズか?
「っと言いたいけど、まずみんなの実力を見るために今日はクラス内模擬戦をしてもらう!」
「「「おお〜」」」
生徒達はよく分からないが模擬戦という字面とノリで盛り上がる。俺も模擬戦はしてみたかったんだ、なんせ今使える魔法を存分に試せそうだし。
「クラス内模擬戦ってどんなだろう?」
隣の席に座っている勇星が聞いてきた。ちなみに昨日の内に席替えがあって俺は教卓から見て右側、つまり窓側の一番後ろになり、勇星はその右隣になった。内職し放題だ。
「さあ?まあ勇星なら心配ないだろ」
「そう?」と勇星が頭を掻きながら首を傾げる、何だか仕草が小動物っぽくて愛嬌がある。
「さあくじを引いてくれ!」
先生がどこから出したのかくじを教卓に置いた。生徒がゾロゾロと並んで順番にそれを引いていき、黒板に書いてある番号とくじに書いてあった番号が同じところに名前を書いていく。生徒は一つのクラスに二十人いて五人づつに分かれるという事らしいから合計四組できるのか。
「じゃあ、別れたか?」
最後にくじを引いた俺は黒板の番号の横に書いてあった名前を見て思考を停止した。別れたか、だって?・・・確かに別れたんだがこれは酷いだろ、俺の組・・・俺以外の四人が女の子だ。は?コミュ障の俺を殺す気なんですか?
「では、グラウンドに移動だ!」
悪魔は絶望している俺のことなどお構いなしに元気に校庭へと歩いていった。
数分後
俺たちはグラウンドで組ごとに別れて座っていた、先生が作戦会議の時間を作ったのだ。
「「「・・・」」」
(き、気まずい!)
何故か俺以外のチームメイト四人がこっちを見ながら沈黙している、勿論何を言うか分からず一緒に黙っているとこちらをみる四人組の一人が声をあげた。
「唐突にごめんなさいだけどあなた、相当な実力者よね?」
そう言った女の子は燃えるような赤い髪をサイドポニーテールにして、じっと赤い瞳で俺を見つめていた。このしっかり者そうな彼女は十三人のヒロインの内の一人である炎魔術の使い手、アグネスだ。
いわゆる級長キャラ・・・この後ストーリーが進むと本当に級長になるんだけど、で彼女は炎の精霊サラマンダーを使役している。だが今の段階で本人は気付いていない。
「な、何でそう思ったんですか?」
恐る恐る聞いてみる、まさか昨日の魔族殺っちゃったところ見られていたか?
「あなたが昨日教室で放った殺気が騎士団長のそれよりずっと冷たかったからよ」
そういえば設定の中にアグネスは炎の精霊と契約しているおかげで、人の強さを殺気の寒さ熱さで分かるんだった。完全に忘れてたよ、せっかく前世で培った知識があるというのに全く活かせてないじゃないか俺。
「まあ、そこそこはね」
ふざける様に合っているとも間違っているとも言わず答えをはぐらかす。
「ふーん・・・まあいいけど」
俺が隠そうと思っている意図を汲んでくれたのかアグネスはそれ以上詮索はしてこなかった。空気読める人でよかった!さらに嬉しいことにこのやり取りで空気が少し緩くなったのでその勢いに乗って作戦を立てれた、そして時間は終わり・・・
「第一回戦!チームアグネスvsチームゴルガ!よーい始め!」
ついに模擬戦が始まった。ゴルガチームは俺達と違って全員ガタイがいい奴ばっかり、大将のゴルガはその中でも飛び抜けて大きかった。だがゴルガチームには俺と勇星を和人と馬鹿にしてさらに勇星を突き飛ばした奴らがいる。こいつらはマジで許さんからな。
先生の言っていた模擬戦のルールは武器、スキル、魔法の使用はOK、フィールドから出るか戦闘不能になれば失格で、それが片方が全員倒れるまで続く。
「うおおおおおおおおおお!」
先に仕掛けてきたのはゴルガチームだった、盾を構えながらこちらを潰さんとばかりに迫ってくる。俺とアグネスは即座に反応できたのだが、それ以外の三人は反応が遅れて体勢を崩されてしまった。そこに打ち込まれたゴルガのメイスによる一撃で俺たちのチーム三人が同時に脱落した。
「すげえ」
「なんてフィジカルだ、あと二人しかいねえ」
開始から数秒も経たず三人を落としたゴルガチームに観客席からは感嘆の声が上がる、ただ勇星だけはニヤニヤしてこちらを見ている。さすが未来の勇者様というところでまだひっくり返せると思っているのか、俺も作戦は失敗になったが対抗心に火がついたしな。
「あと二人、行くぞ!」
また一人が盾を構えてこちらへ向かってくる、もしや同じ作戦が通用すると思っているのか?もう少し頭を使わなきゃ。
「ん?」
援護しようと後ろから走って行こうとした一人が、小さな地面の揺れを感じて立ち止まり疑問の声をあげた。危険を感じたら止まるというのはとってもいい判断だが今回は逆に命取りだったな。
ドゴンッ
「うわあああああ!」
「はい、さようなら〜」
ずっと立ち止まっていたそいつは俺が発動した魔法で空高く持ち上げられていく、この魔法は石の柱で相手を空高く持ち上げて体制を崩させるオリジナル魔法だ。その名も、
「《土天》」
うん我ながら良い出来。実はこの魔法は色々な場面で使えるとっても便利な魔法だ、今回使えるか分からないけど。俺は落ちて来たそれをそのまま蹴り飛ばし場外アウトにする。その光景を見たオーディエンスはというと・・・
「なんだあの技!」
「随分空高く飛ばされたな・・・え?俺らアレとやるかもしれないの?」
「あの技・・・《土転》と言ったか」
「空に上げ、地に転がす」
一目で土天の凶悪さを理解したか。そう、この魔法は一回空中に上げられると飛行や空中歩行系のスキルを持っていない限り無限に空中に上げれる。
つまりその後は空中の無防備なところにひたすら魔法を打ち込めば良いだけ。抵抗なんて碌に出来るはずもなく、相性が合えば自分より強者でさえいとも簡単に倒せるのだ。ああ、なんて素晴らしい魔法だ!
「よくも!」
仲間をやられて怒ったゴルガがメイスを振り回して飛び込んで来る、しかしそれはとっても悪手ですよ。
「《高温》!」
凛と透き通った声が聞こえたかと思うとゴルガのメイスが真夏のアイスのように溶け出す、サラマンダーの魔力を解放したアグネスの炎魔法だ。この熱量に並のメイスが耐えれる訳がない。
「ナイス!アグネスさん!」
アグネスは初めのあたりは自分が使役しているのは火の中級精霊だと思っているのだが、その正体は四大精霊である最上級精霊サラマンダーだ。なぜ気が付けないのかというと、実は理由の一つにサラマンダーの性格がある。
サラマンダーはトカゲ型の炎の精霊で、その性格は温厚で臆病。正体を隠そうとするのでSSSランクの鑑定士でなければ見抜くことができないのだ。ある事件でサラマンダーのことを認知することになるのだが・・・今は関係ないな。
「いくぞ!!《土天》《土天》《土天》《土天》!」
メイスを溶かされ呆然として固まっていたゴルガ含む四人が俺が放った魔法で仲良く宙を舞った。
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