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第二十三話 改心は突然に

ちょっと年度が変わるゴタゴタで投稿できなかったです、すみません。

「濃い一日だった・・・」


風呂から上がってパジャマ姿で家のソファーに崩れ落ち思考に耽る。この世界に来てから色々好き勝手やってはいるが、俺の知っているゲームのシナリオから大きく逸れてはいない。しかしこれ以上しても安心とは言えないので少し控えめにいかないといけないだろう。


ただ俺が今一番気にしているのは、シナリオには無かったのに大きな事態に発展する可能性がある物が出てきた事だ。それが今日ダンジョンで襲ってきた魔神の魔力を宿したスライム。


(あんな話ゲームに出てたか?)


魔神との戦いが過去にあったという話はあったが、初のダンジョン探索で魔神の魔力を宿したスライムと戦うイベントは起きなかった。俺という存在が現れたせいなのかそれとも何か知らない別の事が起こったのか。


(それに思ったのが勇星の力が()()()())


確かに勇星は勇者になるので多くのスキルを持っているはずだが、序盤では流石に即死無効化の魔法や光の魔法を覚えてはいない。


「あれらがストーリーに関わってくるとなると予測不可能だな」


それらをふまえると俺のゲーム知識はスキルなどの情報以外ではほぼ役に立たないと考えていいだろう。こういう世界ではゲーム知識での無双ができると思っていたが、どうやらここはそんな簡単な世界ではないので常に警戒しておいた方が良さそうだ。


もう一個引っかかるゲームと違う事といえば、ニュースで見た魔王軍の侵攻領域があまりにも()()()という事もだ。魔族のトップが意図的に過剰な侵攻をしていないと考えるべきか?それともただ力を蓄えているだけ?


「あいつにあったら全て教えてくれるのか?」


夢で出会った俺とそっくりな男は一体何者なのか、それを知る事が一番手っ取り早い気がする。それには東に行く他に手がかりがないのだが王都から東にある物となると『最後の砦(レースボーダー)』のみで、その先には人類の敵の魔国のみしかない。


「うん、考えるのはもうやめやめ!もう東行くしかない!」


結局東に行く以外どうしようもないので東に行ってみるしかない。


「今日は早く寝よ。明日は勇星とレイナの三人で買い物だからな」


俺は寝室に行って照明のリモコンに手を伸ばし〈消灯〉のボタンを押す、部屋の電気が暗くなっていきそして全てが暗闇に包まれた。


後の勝義はこの時東に行くと決意した事が最善だったと改めて強く感じることになるが、それは三学期になってからである。


ーーーーーーーーーーーーーハイゼル公爵家ーーーーーーーーーーーーー


コン、コン、コン


「失礼します」


ドアをノックしメイドが入ってくる、どうせ飯か今日の事について父上の説教だろう。


「入れ」


「お御飯ができました。それと来客です・・・」


「来客?」


誰だ?今日俺に来客の予定なんてないはずなのだが。


「よっす!」


「ブルート!」


軽い感じで部屋に入ってきたその来客とは今日俺が決闘でレイナの従者と戦わせた、我が家の騎士団長兼サイアン獣兵師団の師団長をしているブルートだった。


「元気ないな〜。あ、そうそう何で自分が負けたか知りたいか?どうだ?」


「っく!知らなくてもいい」


「あ、メイドちゃん下がっていいよ。案内ありがとうね〜」


こいつ!勝手にメイドを下がらせよって!


「話を聞け!」


「まあまあ俺はご主人・・・あ、もう違うんだった。それは置いといて教えに来たんだ、お前が今から進むべき道をな」


ご主人じゃない!?どういう事だ?もしや俺が決闘で戦わせた事を咎められたのか?


「クビになったのか!?」


「クビ?ああ俺が自分から辞めたんだよ。元から少ししかいない予定だったしこの仕事にも飽きてきたところだったしな、それに他の公爵家からも今回の決闘で戦った事に少し文句つけられたし」


やはり俺のせいでもあるのか・・・もう少し俺が考えていればこんなことにはならなかったのか?


「大分落ち込んでるな・・・いつもなら『そんな公爵家どもなんて無視してしまえ!』とか言うのにな、今回の事がそれだけ堪えたっていうことか」


「俺は・・・どうすれば良いのだ?」


思えば人生で初めての敗北だ。今まで会った全ての者は結果的に俺の前で頭を下げて許しを乞うてきた、だが今回戦ったアイツは俺が絶対的な自信を持って送り込んだブルートと渡り合った。


「まず負けたんなら勝者に降りアイツの背中を追いかけてみろ」


「勝者に降れ・・・?でも私は公爵家の・・・」


俺が誰かの下に降るなんて国から許されるはずが・・・


「はい、国書。王様にもらってきた」


「国書!?」


ブルートが差し出した手紙には『国書』という威厳溢れる綺麗な文字が書いてある、それは間違いなく何回か見たことのある国王陛下の文字だった。


恐る恐る開いてみると中には一枚の紙が二つ折りに入っており、それをゆっくりと開くと先ほどの国書の文字と同じ字体で数行ほど文が書いてあった。


『レジエ・ハイゼルに申し渡す。此度の決闘の結果により勝者、鶴金勝義の元へ下る事を命ずる。これからも学園で未来の国のためしっかりと勉学に励まれよ。国王サイアン・フォン・エルダリア』


「じゃ、俺はこれで用は終わったし帰るな」


「お、おい!」


あまりの衝撃に固まっている俺を置いてブルートが帰ろうとするが急いで引き止める、どうしてもブルート聞きたい事があるのだ。


こんな国書たとえ師団長であったとしても国王に要請することなど出来ないはず、一体どうやってこのような事をする事ができたのだ?


「どうやってこれを・・・」


「ん?そうだな、借りがあったんだよ。内容は昔の事だから忘れちまったけどな」


ブルートは俺の問いにこちらを見ずに一言そう言うとゆっくりとドアを閉めた、しかしその声は昔を思い出すかのように楽しそうだった。


なぜアイツがあんな力を出せるのか。それはアイツについて行けばわかるとブルート入っていた、ならとことんアイツ・・・勝義について行ってやろう。そう思うとしっかりと目標が決まってきてやる気が出てくる。


「ご飯はいかがいたしますか?」


メイドが部屋の中に入ってきて聞いてくる。確かにそろそろ腹が減ってきた所だ、頭はスッキリしたところで何かお腹に入れて元気を出さねばならないな。


「すぐに用意してくれ!それと、そこにある物全部とあれとあそこの物を全部前の持ち主に返してくれ」


「え?今なんて・・・」


思わずメイドは聞き返してしまった。なぜなら返せと言われたものは今まで人から奪ってきた物全てだったからだ、メイドは言った後に怒られるかもしれないと後悔した。しかし・・・


「聞こえたままで大丈夫だ、とにかく今まで人から奪ってしまった物を返してくれ」


そう言うとレジエは扉を開けてダイニングへと向かって行った、一人残されたメイドはそのまま凍ったようにそこに突っ立ってポツリと呟いた。


「嘘・・・」


その日から屋敷の中や世間で言われていた今までのレジエの酷い噂はピタリと消え、その代わり人が変わったように優しい噂が流れるようになり『貪欲の貴公子』から『慈愛の貴公子』へと二つ名が変わっていった。

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