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第二十二話 決闘:後編

休日って最高だと思う、本当。

「【天翼《蜻蛉ドラゴンフライ》】」


魔力で作られた四枚の薄く細長い羽根が背中から伸び、俺の体はものすごい速さで宙へ飛び出した。そして眼前に迫っている岩の塊を全て避けて行く、魔力をそこまで食わないでこのスピードなら()()を早く完成させることが出来そうだ。


「え〜飛ぶなんて反則だろ、《岩針爆弾(ロックボム)》全部避けられたし」


ん?《岩針爆弾(ロックボム)》?その魔法って・・・


ギュンッ!


「あぶなっ!」


爆発した岩の塊から大量の針が飛び出してきた、その大きさはまち針ほどだがこの量だと大怪我になりかねない。急いで羽を盾にして針を防ぐ、そう《岩針爆弾(ロックボム)》という魔法は爆発した後に針で敵を滅多刺しにする広範囲攻撃使いだった!


それにしてもさ・・・さっき手加減しないって言ってたけど流石に手加減しなさすぎじゃない?これ普通の生徒だったら下手したら死ぬかもよ?


「速いな。まさか【蜻蛉羽】を習得してるとは」


すみません、俺のスキルはもう一個上の【天翼】です。


「あの、流石にこれ以上は俺死んじゃうんじゃ・・・」


「ん?避けれるらしいしもっとやってもOKって事で」


「最悪だこの人!」


そう叫びながらすぐに横に移動するとさっきまで俺がいた場所に炎の矢が降り注いだ。この魔法は《炎降千矢(サウザントアロー:火)》というもので、指定した範囲にその名の通り千の炎の矢を落とす魔法だ。


この人今のところ二属性の魔法を使っているけど後一個ぐらいあると思った方が良さそうか、とことんめんどくさいな。獣兵師団の師団長はゲームでは名前が出るだけで戦わなかったし顔さえ出てなかった、て言うか師団長は一人を除いて出てなかったからな。


「タバコ欲しくなったしそろそろ終わらせるよ」


「理由が・・・酷いっすね」


「君もやる?」


やばいこの人未成年にタバコ勧めようとしている!普通に法律違反とかにならないかな?


「来い!【神喰の魔狼(フェンリル)】!」


絶対に良くない名前が聞こえたと思った瞬間、デカい魔法陣が出現しそこから魔狼が現れる。その魔狼は神々しいほどに白かった、そして蒼炎を体から吹き上がらせながらこちらを見下ろしている。


や、やり過ぎだってこれはーーーーー!


アオオオオオオォォォン!


吠えた瞬間空気が振動しビリビリという音がし観客席は勿論混乱し皆が我先にと逃げ出す、そして一瞬のうちに闘技場にいるのは俺とレイナと凪雲、それに獣兵師団長のおっさん、腰を抜かして立ち上がれない審判とレジエ。


(アレは俺と同等かそれ以上です、気を付けた方がいいかと)


珍しくフロシキが俺に忠告する。それくらいやばい相手って事か・・・本当にやり過ぎだと思うぞおっさん!俺は急いで用意していた物の続きを作り出す。


「行け!」


師団長がフェンリルに命令した瞬間蒼炎が視界を覆う、俺の【蜻蛉羽】と蒼炎がぶつかり魔力の衝突で火花が散る。俺の魔力の方が強くフェンリルの魔力を押し切ったが、ギリシャ神話で主神級の神を葬ったその力の一端は俺のブッ壊れスキル達と数秒やり合えるほどらしい。


「こちらも行くか!来い【地獄の番犬(ケルベロス)】!」


(任された!)


これとやり合うならケルベロスも出さないといけない、フロシキから本来の姿へと戻ったケルベロスは唸る。


グルルルルルル!


うん、迫力ならフェンリルと大差ないな!ただ魔力が少し少ない様なので俺の魔脈と繋げて魔力の共有をする。魔脈とは人間の血管のすぐ隣を流れるいわゆる魔力回路みたいなので、この管を通して魔力を身体中に行き渡らせることができる。


それを契約という道を通して繋げることで魔力の共有をする、これによりケルベロスとフェンリルの間にあった魔力差の心配は無くなった。後は戦闘経験とスキルの優秀さで強さが決まる!


「まさか冥界の神にしか忠誠心を持たないはずのケルベロスと契約しているのか!?」


目を淡く光らせて獣兵師団長が驚きに叫ぶ、俺のケルベロスを鑑定したのか。俺のケルベロスを鑑定するにはSSSの鑑定が必要だが持っているのか・・・流石魔王軍の十三夜と対をなす立場にいるだけの事はある。ただだからこそあまり直接的にぶつかりたくない。


遂にフェンリルとケルベロス、俺と師団長が衝突しようという瞬間、師団長とフェンリルのいる地面が光る。俺の用意していた()()がようやく発動したか。


そう全てはこの時のためだったのだ。本格的な戦闘になる前に出来て本当に良かった、そう思いながら光っている地面に手をついて魔力を流し込むと・・・


「なんだこの魔法?おじさん知らー」


途中まで言ってその場から消えた。この魔法は師団長を対象として作った巨大な転移魔法なのだ、ただ途中フェンリルが召喚された事でフェンリルも飛ばさないといけなくなったんだけれどね。


(流石俺の主人だ!完全にグラウンドに転移できてる様です!)


(ふふ、少しは見直したかな?)


送った先はグラウンドで今頃二人でオロオロしているだろうな、そう思うと中々いい作戦だったと思うしあの人はこれで反省して欲しい。


「さて・・・俺の勝ちでいい?」


「こ、この試合は見届けている者が三人以上いない為無効だ!」


審判がそう言うが凪雲とレイナがいるじゃないか、二人もそう思ったようで凪雲が審判に言った。


「私達がいるじゃないか?」


「いや、君たちは息がかかった者だからダメだ!」


それって最早イチャモンじゃ無いか?そんなに俺を勝たせたく無いか。


「はぁー・・・分かってませんわね」


レイナがやれやれとため息を吐いた。


「決闘とは双方の人脈つまり見届け人でも左右されるのですわ。例え激しい試合だったとしてもそれを観られるほどの強者の見届け人がいれば問題はない、そしてその見届け人と仲間になれるほど戦っている者が強者だったという()()にもなる。逆に皆んな逃げ出すような腰抜けばかりの見届け人を集めても意味はないのですわ、逃げ出したら見届け人の意味が無くなりますもの」


「く、それは・・・」


「潔く勝義の勝ちを宣言なさい審判さん」


レイナが審判に詰め寄る、なんかミステリーの犯人追い詰めた時みたいな空気感。


「勝ちを・・・認める」


「な、裏切ったな貴様!」


今まで呆然とそのやり取りを見ていたレジエが叫んだ。やはり審判と繋がっていたのか、しかも自分からバラすなんて相当焦っていると見える。


「やっぱりー」


「やはり審判を抱き込んでましたのね」


俺が言おうとした事をレイナがレジエに言い放つ、審判はもう何も言う気力もなく俯いている。


「くそっ!師団長を戦わせたと言うのに何で!おかしいだろ、師団長はどこに行ったんだ!」


「学校のグラウンド」


「グラウンド!・・・はぁ?グラウンド!?」


レジエが面白いくらいに動揺している、何だかグラウンドに転移させた事に驚いている気もするがそれは違うと信じたい。


「とにかく俺の勝ち、つまりレイナは俺がもらうという事でいいかな?」


と俺がレジエに言うと。


「な!何を言って・・・」


なぜかレイナが顔を真っ赤にしている、そういえば凪雲が何故かテンション低いどうしたんだ?


「黒蓮華を一回しか使ってくれてない・・・頑張って作ったのに、合わなかったのかな?」


「あ、ごめん」


黒蓮華・・・俺が今持っている剣をそういえば使っていなかった。折角作ってくれたのに本当に申し訳ない、これからもし模擬戦があったとしたらいっぱい使うと思うからその時まで待っていてくれ。


「よし、帰るか」


今日はいつもより早く寝たいな。

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