第十一話 昼寝前の出来事〈勇星視点〉
最近寒くなってきました。くれぐれも風邪だけは、引かないように気をつけてください。手洗いうがいを徹底しましょう(母親か?)。
「じゃあまた後でな〜」
「うん」
「しばしお別れですわ」
全員の名前を付け終わると勝義が「一人でやりたい事があるから俺は少し別れるぞ」と言うとレイナも授業準備があると言うので、残りの時間はそれぞれしたい事をすることになった。けど僕は別にしたいことが特に無かったしいい天気なので、ゆっくり陽の光を浴びながら少し昼寝をしようと思っている。
「そういえば・・・」
最近勝義に対して少し違和感を覚える事がある。僕たち二人は家が隣でさらに親同士が仲が良かったから、小さかった頃からずっと一緒に外で遊んだり本を読んだりしてきた。それなのに入学式の日から何故か勝義の昔の姿をあまり思い出せなくなっていた、一体どうしたんだろう?
「ーーーーーー」
気配を感じるスキルに強い反応があった。このスキルは小さい頃に勝義と遊んでいた時に『このスキルのが使えるよ』と言われたので練習して獲得したものだ。
「ーーーーーー」
気配の主がゆっくり僕に近づいてくる、少し手を伸ばせば当たるという距離まで来て・・・
「僕に何か用があるんですか?」
「!!!」
気配の方を向くとそこにはスラリと背が高くてスタイルの良い女の人がいた、制服を着ているので学園の生徒だっていうのは分かる。長い黒髪をポニーテール?にしていて少し吊り上がった黒目でこちらを見ている。
その目は少し見開かれ、先に僕に気付かれたことに対する驚きがよく分かった。よく見ると右胸元で輝いている学年を示すバッジには三と書いてあり、そのまま視線を移し左胸を見ると芹の花をモチーフにした生徒会のバッジが付いている。
「なぜ胸をジロジロ見ている!」
「す、すみません!バッジが見たくて」
バッジって胸の辺りに付いてるからそこをジロジロ見ていると思われちゃったのか。初めてあった人をじっと見るのは失礼だ、悪い事をしてしまった。しっかり謝らないと。
「本当にす・・・」
「まあ私のが大きいからっていうのもあるかも知れないしな。うん、今回は見逃してやろう」
顔を真っ赤にしながら自慢げに堂々と胸を張っている、いったい何のことを言っているのだろうか?
「へ?大きい?」
「な!?胸だよ、む・ね!」
バッジの事だろうか?やけに胸を強調する人だ、顔も真っ赤のままだし熱でもあるのかな。
「はぁ・・・?」
「〜!もう良い!お前と話すとペースが崩れる!」
生徒会の人がダンダンと地面を踏みつける、どうやら話を理解できなかった僕に怒っているらしい。あんな説明されると誰も理解できないと思うけど・・・ていうかなんで生徒会の人が僕のところに?
「そんな事は置いておいて本題に入ろう、剣よ生徒会に入れ」
僕の心の中の質問に答えるかのように生徒会の人が言った。今のってもしや生徒会からの勧誘?
「え?」
「入学式の時の素早い判断に魔族を圧倒する力、お前はこの学校でも指折りの実力者だろう。そんな者が七草会から勧誘を受けないわけが無い、だから他の者に取られる前にと少しフライングをしたというわけだ」
魔族を倒した事で確かに周囲の人が僕を見る目は変わった、中には露骨に擦り寄ってくるような子もいる。来学期はSクラスに行けるだろうと先生も言っていたが、僕としては勝義やレイナさんと一緒にいられたらそれだけでいいんだけど。そんなことより・・・
「フライング?」
「ああ知らんか?七草会に所属できるのは高等部第一学年の二学期からで、勧誘するのも二学期まで禁止なんだ」
それは勝義の話で知っていたが勧誘は勝義もされていたはずだ。
「でも勝義・・・鶴金くんも風紀委員会に勧誘されてましたよ」
生徒会に人は顎に手を当てて数秒考える、そして思い出したのか「ああ」と呟いた。
「鶴金・・・いつもお前と一緒にいるあのいかにもバカそうな奴か」
「ば、バカ!?」
生徒会の人は会ったこともない勝義の事をいきなりバカと罵った。
「そうであろう、入学早々食堂へ行こうと魔法を使って連行?バカ以外なんだと言うんだ。全く風紀委員会は物好きだな」
勝義は振る舞いこそ単純だけど決してバカじゃ無い、その証拠に勝義が今まで勧めてきたスキルや魔法、色々な練習法は役に立たなかったことがない。僕の事をバカにするなら良いけど勝義をバカにするのは許せない。
「勝義はバカじゃありません」
「は?」
生徒会の人は言い返されると思っていなかったのか呆気に取られる。
「勝義とは今までずっと一緒に過ごしてきましたがいつも周りを見て考えて動いています、勉強関係でもとっても多くの役立つ知識を持っています」
静かに淡々と、勇星は怒りのままに話す。
「ただ今までそうだったからと盲目的に信じるのも・・・」
「僕が彼と過ごした時間は貴女といた何千何万、何億倍もあるんだ、それを信じないで貴女を信じるなんて出来るわけない!」
生徒会の人の言葉に我慢の限界を迎えた勇星は彼にしては珍しく大声を出した。
「くっ!」
この時勇星は無意識のうちに中に抑えていた魔力を解放していた、それを見た生徒会の人はその圧倒的な力に言葉を失った。
「また来るからな!」
彼女は若干不貞腐れながら逃げるようにして去っていった、つい怒りに任せて言いすぎて怒らせてしまった。
「まあ良いや・・・眠いし昼寝をしよう」
寝ようとした彼はふと思い至りステータスを開いた。
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名前:剣 勇星
剣聖:レベル89
体力:6070/6070
魔力:8007430/8007430
知力:SSS級
魔法:【五属性魔法A】【光属性魔法S】【身体強化魔法A】【聖属性魔法S】【回復魔法B】【神域魔法C】【召喚魔法A】【付与魔法S】【鑑定魔法S】【精霊魔法A】【古代魔法S】
スキル:SSSスキル
【勇心】【魔力制御】【魔法上換】【霊剣召喚】【星眼】【剣術『仙人級』】【多層魔法陣】【空筆第四】【ステータス隠蔽】【ステータス擬態】【精霊召喚】【感知《極》】
Sスキル
【悪心感知】
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「ふぅ」
少し眺めて一息つくとステータスを閉じて寝転ぶ。それにしてもまさか勝義があれ程まで成長しているなんて・・・早く追い付かないと!
「寝る子は育つからね!」
彼は目を瞑り少しするとすぐに眠りにつく。気づいてないようだが勇星ステータスも大概である、他人が見れば強さに貪欲すぎると思う者もいるだろう。
彼が強さを求める理由も知らずに。
ーーーーーーーーーーーーー生徒会室ーーーーーーーーーーーーー
「会長!どうでした?」
「上手くいったか?」
勇星に声をかけた生徒会の人が生徒会室に入ると二人の女生徒が声をかけてきた、彼女達の左胸にも芹の花がデザインしてあるバッジ・・・生徒会のバッジが光っている。
文化委員長のアイツが学校の生徒間での呼び名にあやかってデザインした物だ、確かにそれまでの腕章よりもよりオシャレでより分かりやすい。
彼女・・・生徒会長は内心舌打ちをした。それは先ほどの出来事からでもあり文化委員長のアイツの事を思い出したからでもある。
それにしてもあの剣などという奴と話すと自然と安心してしまう、最後に見せた魔力といい何か不思議ものを持っているに違いない・・・絶対に生徒会が確保しなければ。
「どうしたんですか?」
「どうしたのか?」
目の前の二人がぼーっとしていた自分を心配する、気が緩んでしまい顔に出てしまっていたか。外面には気を配っているのは組織の長が動揺すると組織全体に動揺が広がるから、これは生徒会ひいては学園にとってもマイナスだ。
「いや、なんでも無い。それより、今週の議会へ提出する案の資料は用意できたか?」
作り笑いで誤魔化しさらに話題を変える。
「出来ましたよ」
「どうだ?私たちに任して正解だったか?」
二人はニッと笑って完成した資料を渡してくれる。
「ああ、ありがとう」
彼女は学園の生徒のトップ、生徒会長である。彼女はいつも通りに本心をなるべく見せないように仮初の自分を演じるのだった。
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