9話
果てしなく広がるような白い空間の中には自由の女神くらいの大きさの女神と、冴えない風貌の男と、本を読んでいる猫がいる。
「それじゃあ、鏑木 驢馬。私と君の勝負のルールをもう一度言ってもらえるかな?」
女神が言う。
「わかりました、それではーーー」
〇 制限時間は3分間。
〇 女神は一切声を出してはいけない、表情を変化させてはならない、体を動かしてはいけない、魔法を使用してはいけない。
〇 女神はこの勝負の結果がどうあれ、鏑木 驢馬に対し、一切の悪影響を与えてはいけない。
〇 女神は妨害、暴力を使用してはいけない。
〇 鏑木 驢馬が勝利した場合、十分な褒賞を与えること。
〇 鏑木 驢馬が敗北した場合、肌の色をピンクにさせられる。
〇 鏑木 驢馬は女神の体に触れてはいけない。魔法を使用してはいけない。
「これの条件での勝負でどうでしょうか?」
恐る恐ると言った感じで驢馬が尋ねる。
「いいね」
胸をなでおろす驢馬。
「それでは次は私から発表しようかな」
「え、、何をですか?」
「そんなに怖がらなくても大丈夫。もしも驢馬がこの勝負に勝った場合の豪華賞品のことについて教えてあげるよ。漠然としたままだとやる気が出来ないだろう?」
「なるほど」
「今回はゲームでの勝負だから、商品もゲームで決めようじゃないか」
「はぁ、」
分からないと言った顔をしている驢馬の目の前に、ビンゴゲームの時に使うガラガラがあらわれた。驢馬の身長とな地くらいの大きさのかなり大きな抽選器だ。
「この中に入っているボールは全部で10個。それぞれに番号が振ってあるから、これを振って出た魔法をプレゼントしようと思う。ほとんどがこれから旅立つ世界でも、とても役に立つ魔法だよ」
「ほえー」
「それぞれの番号の内訳はこれを見てくれればいい」
言い終わると同時に今度はホワイトボードが出現した。
① 一度だけ生き返ることが出来る魔法「ソウルキング」。
② 怪我や病気を治癒する魔法「ホーリーシット」。
③ 亜空間に出入りすることが出来る魔法「広い広場」。
④ 死体から絶対服従の魔物を作り出す魔法「月夜の人形」。
⑤ 液体を酒に換える魔法「滴るバンブー」。
⑥ 脚力が異常に強くなる薬「ベン・ベンジャミン」。
⑦ 肌をきめ細かく美しい肌にする魔法「遥かな肌」。
⑧ 全ての毒を無効化し、毒を作り出す魔法「ジョージ・コブラ」。
⑨ 異世界の物質を取り寄せることが出来る魔法「青いポケット」。
⑩ 驢馬の肌がピンク色になってしまう。
「どうだい、どれも良いものばかりだろう?」
「ちょっと待ってください女神様」
「ん?」
「ん?じゃなくてですね、10番ですよ10番、10番に変なのが混じってます!」
「よく見たら確かにそうだね」
「よく見なくてもそうですよ、ちょっと勘弁してくださいよ女神様。どれだけ私の肌をピンク色にしたいんですか」
「だけど一つ位はハズレがあった方が面白いと思ったんだよ」
「面白くないですよ。ただの人間の中でも大して性能の良くないこの私が神様に勝つなんて奇跡なんですから全部当たりにしてくださいよ」
「いやいや、これはこのままで行こう」
「なんでですか、私なんか絶対10番引いちゃいますよ」
「だけどね、驢馬」
幼稚園の先生のような顔をした女神が言う。
「あの10番が一つは言っているおかげで他のやつは素晴らしい魔法が入っているんだよ」
「そうなんですか?」
「9番なんか見てごらんよ、あれさえあれば今までに食べたことがあるものを、好きなだけ飲み食いすることが出来るんだよ。すごくないかい?」
「確かに………」
「もし10番がそこまで嫌だというなら無くしてあげてもいいけど、他の番号も今よりは弱いものになってしまうよ」
「そうなんですか、うーん………」
「なんだかんだいっても結局10番を引かなければいいだけの話じゃないか。10分の1だよ、引くわけないじゃない」
「そうですかね?」
「当たり前じゃないか、驢馬はもっと自信を持って良いんだよ?」
「そうですよね、そうかそうか………引くわけないか」
「その通り、それではこの条件でゲームをするという事でいいかな?」
「はい」
女神は笑った。
「それじゃあ始めようか」
「え、ええええ、えええええ?!?」
自由の女神くらいの大きさの女神の背が、どんどん小さくなっていって、最終的には驢馬よりも拳一つ分だけ低い背になった。
「勝負は対等じゃないと面白くないからね」
「確かに同じ大きさの方がやりやすいです」
人間と女神との勝負はもうすぐそこまで迫っていた。
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