夕立は馬の背をわける
その頃、大地もひとり闘っていた。
みんなで警備ロボットがいないという話をしていると、急に正面からライトに照らされた。
「うわぁ」
と声を上げ、眩しさに気を取られていた。
すると、何かが動く音が聞こえ始めた。その音はだんだんと近付いて来る。ライトに背を向け、周囲を確認してみる。
その音は背後から聞こえてきていた。
音の先を見てみると、前から壁が少しずつ近付いてきた。
「何だよこれ!」
いやいや、建物の中だろ?
こんな仕掛け聞いてないぞ?
どんな構造してんだよ?
押し寄せてくる壁から逃げないと、潰されてしまう!
慌てて走り出した。
今まで来た道をダッシュで戻る。
すると、違和感があった。
ただ真っ直ぐに続く廊下。
あれ?さっきここで曲がって来たはずなのに、道がなくなっている。
曲がれないということは、最終的には壁と壁の間に挟まれてしまう。
いやいや、そんなの勘弁してくれ!
とにかく、どこか避難出来る場所ないのか?
すると、左前方に扉があった。
迷わずその扉の中に入った。
バタン!
勢いよく閉めた。
やっと休める場所見つかった安心感から、その場に座り込んだ。
扉の外からはゴゴゴと大きな音を立て壁が通り過ぎていた。
間一髪。
間に合ってよかった。
そう安心していると、部屋の奥からサッカーボールが転がって来た。
すると、前から晴希が
「大地!サッカーしようぜ!」
と声をかけてきた。
「晴希、何してんだよ?
そんな事して場合じゃないだろ?」
晴希はそのままサッカーボールを蹴ったまま奥へと進んで行くと、見慣れた風景広がっていた。
中学のサッカー部のみんながいた。
あの頃は、サッカーしてるのが楽しくてしょうがなくて、部活というより趣味でサッカーをしているような感覚だった。
気の合う仲間達と、朝も放課後も時間を忘れるくらいサッカーをしていた。
特に晴希とは気が合い、コンビで敵を交わしていくのが楽しかった。
部活以外も常に一緒に行動していた。
こんなに気の合うやつは他にいなかった。
一緒に過ごす時間が増えてくると、晴希の事がよく見えてきた。
ボールを持った人の動きを見て、それをフォローするように動く。
本人は邪魔をしたくないという一心でやっているようだが、なかなか出来る事じゃない。
それはサッカーだけじゃなく、普段の生活からも見えてきた。
たまに晴希の幼なじみの種岡がちょっかいをかけにきたが、満更でもない晴希を見ていて面白かった。
しかし、モテる種岡に遠慮しているのか、他のヤツに遠慮しているのか、晴希の中の邪魔したらいけないという気持ちが働いているように見えた。
そんな晴希の性格を痛感したのは中学の最後の大会。
晴希がPKを外し試合に負けた。
しょうがない。俺達は全力を尽くしたんだ。それが、たまたま晴希の打ったシュートだっただけで、他の誰でも同じ結果だったと思う。
しかし、ある日後輩達が『晴希がPK決めていたら』と言っていたのを聞いた。
それ以来、晴希の中の『邪魔してはいけない』という気持ちが余計強くなったような気がした。
あんなに好きだったサッカーをしなくなった。
俺にも遠慮しているような気がした。
どこか一歩線を引かれた気がしてさみしかった。




