雨音のささやき
ーーーナノチップ社前
「みんな遅くなってごめんなさい」
そう言って最後に奏さんが合流した。
晴希が
「いいえ、大丈夫です。
よし、これで全員揃った。
じゃあ、内部に潜入するか」
無事に全員揃った事に一安心したと同時に、早く内部に潜入したかった。
「誠真さんに知らせなくて大丈夫?」
舞華が聞いてきたが
「さっき連絡したんだけど、繋がらないんだ。
きっとトキさんと連絡でも取ってるんだろ?
俺達のGPSを誠真さんも確認出来るから大丈夫だろう。
少しでも早く内部に潜入して、トキさんが動きやすいようにしようぜ。
じゃあ、計画通り通話は入れたまま、何かあったらすぐに連絡すること」
「わかった」
そう言って、ナノチップ社内部に潜入を始めた。
ナノチップ社の内部は、トキさんが細かく教えてくれた。
『だいぶ前だから変わってる可能性方が高い。
ただ、システムの心臓部はナノチップ社の中心にある。
これは、動かすことが出来ないから間違いなくここにある。
だから、迷いなく真ん中へ行け』
と教えてくれた。
少しでも相手を分散、混乱させるための5人で別行動。
誰かひとりだけでもナノチップ心臓部に辿り着くことが出来れば、もしくは撹乱している間にトキさんが遠隔でシステムを破壊出来ればいい。
そう思っていた。
しかし、全員がナノチップ社内部に潜入して数分。
「ねぇ、誰もいなさすぎじゃない?」
舞華が不安になり、みんなに問いかけた。
「そりゃ真夜中だしな!誰もいない方がいいじゃん!」
空翔が返事をする。
「そうだな。確かにおかしい。警備ロボットにもすれ違わないが、誰か見たか?」
大地が質問する。
「見てない」
「私も」
「俺も」
「そういや俺も、ラッキーじゃん!」
最後に空翔が明るく返す。
いや、ナノチップシステムの心臓部がある建物で、警備ロボットと遭遇しないのはおかしい。
いくら監視カメラが至るところに設置してあっても、巡回の警備ロボットは必ずいるはず。
なのに、誰も警備ロボットを見ていない。
どういう事だ?
まさか!
そう思った時、天井に設置してあった監視カメラから、目が眩む程の強い光が俺を照らした。
あまりにも突然の明るさに、顔をしかめる。
それと同時に全員の
「うわぁ」
「きゃっ」
「なにこれ?」
「まぶしっ」
などの声が聞こえた。
その眩しさに気を取られている間に、背後の通路の防火シャッターが降り始めた。
このままじゃ引き返せなくなる!
そう思い、慌ててシャッターの方へ駆け出した。
しかし、間に合わずシャッターは閉まった。
「クソっ」
シャッターを思いっ切り叩くがビクともしない。
「みんな大丈夫か?
俺の近くのシャッターが閉まった。
もう引き返せなくなった」
そう報告した。
しかし、みんなからの返答がない。
「みんな!聞こえてるか?
誰か返事をしてくれ!」
誰からの応答もない、この防火シャッターのせいか?
そう考えていると、監視カメラからの光は晴希を狙うように照らした。
『やぁ、日高晴希くん。
ようこそナノチップ社へ』
とピアス型通信機から聞こえてきた。
知らない声だった。
「誰だ!」
『はじめまして。
私はナノチップ社取締役の今守賢斗だ。
トキトウから話は聞いているんだろう?
こちらもトキトウに話があるんだ。
どこにいるか教えてくれないか?』
姿はどこにもなかった。
ただ、その声は間違いなく通信機から聞こえていた。
「トキさんの場所?
俺だって知らないさ!
それより、俺を閉じ込めるつもりか?」
『閉じ込める?
とんでもない。
せっかく皆さん揃ってナノチップ社に出向いてくれたんだ。
それぞれおもてなしをしようと思って。
まぁ、ゆっくりして行ってくれ。
誰かひとりでもトキトウの事を教えてくれたら帰してあげるさ。
では、楽しんでいってくれ』
そう言って一方的に通話は切れた。
どういうことだ?
なぜ俺の名前を知っている。
それに通信機から聞こえてきたという事は、もう俺達の場所は全部バレているということか。
いろんな考えが錯綜していると、今まで晴希を照らしていた光は、晴希を導くように通路に一筋の光の道を作り、ひとつの部屋を照らしていた。
背中はシャッターで閉ざされ、行く先はその部屋しかなかった。
「そこに入れということか」
迷うも何も選択肢はひとつしかなかった。
そして、みんなも同じようにケントよって行く先を決められていた。




