雨を降らせるために
「心配しなくても、アイツは俺を探してここに来る。
そのためにも、2人に協力してもらいたいんだ」
トキさんはそう言って、俺達にピアス型通信機を返してきた。
数時間後ーーー
ナノチップ収監施設にひとつの人影が近付いてきた。
その人物は迷うことなく、建物内にある部屋に向かって行った。
その部屋の扉が開き、中へと進むと
「よぉ、久しぶりだな。
お前なら気付くと思っていたよ。
あの高校生の個人番号を追ってきたんだろ?」
とトキさんが声をかけた。
「やっと会えたな、時任」
と返事をしたのは賢斗だった。
「こっちのセリフだよ、やっと出てきたな。
あの政府の監獄から」
「そんなことより、システムにロックかけただろう。解除してもらおうか?」
「ひとりで乗り込んで来て、よくそんな偉そうなことが言えるな?
状況わかってるのか?
賢斗、お前の方が明らか不利なんだよ?」
「不利?
それはそっちじゃないのか?」
強気に返してくる賢斗。
すると、
ドォォンとけたたましい音と振動が響き渡った。
そして、すぐに建物の警報が鳴り響いた。
『火災ヲ感知シマシタ。
消火を開始イタシマス』
と館内にアナウンスが響き渡る。
『建物ノ倒壊ヲ確認。
スグニ安全ナ場所二避難シテクダサイ』
「これでも不利だって言うのか?」
不敵な笑みを浮かべる賢斗に、トキさんは
「いつもやることに限度がなさすぎるんだよ。
もう少し周りのことを考えたらどうだ?」
と呆れたように返す。
「こうでもしないと、お前は動かないだろう?」
「そういうところは、昔から変わらないな。
でもいいのか?
この状況は、お前自身も危険ってことだぞ?
それに、俺が死ねばシステムの解除は永遠に出来ない」
強気に出るトキさんだが、賢斗は落ち着いたまま
「大丈夫。
お前は死ぬ前に必ず解除するさ。
そして、僕はここから出る」
と返してきた。
「何を根拠に。
俺は死んでも解除する気はない」
トキさんは言い切った。
しかし、賢斗は表情を変えることなく
「今のお前と僕の違いがわかるか?」
と返してきた。
ひとりでやって来て、焦る様子もなく強気な賢斗にトキさんは内心驚いていた。
こんなに強気な賢斗は見たことがない。
「俺と賢斗の違い?
そんなの政府言いなりになってるか、なってないかくらいだろ?」
その言葉に少し驚きを見せたが、
誤魔化すように話し始める賢斗。
「僕は政府の言いなりなんかなってないさ。
時任と僕の違いは、ナノチップが搭載されてるかいないかの違いだよ。
だから、ここから逃げられないんだよ!」
それを聞いて
「なんだ、そんなことか」
と呆れるように呟いたトキさん。
「なんだってなんだよ!
お前は自分の作ったものに満足しなかったから、この建物と一緒に爆発に飲み込まれるんだ!
死にたくなかったらシステムを解除しろ!」
怒るように賢斗は叫んだ。
「だから、死んでも解除しないって言っただろ?
もう解除の仕方なんか忘れた。」
とぼけるように答えるトキさん。
それに苛立ちを覚え
「いいのか?
ここに収監されてる人達も、助からないんだぞ?」
賢斗は煽るように言った。
「助けたいから、ここに隠れたのにそれは困る。
なぁ、賢斗。いつまで続けるつもりだ?」
「早くシステムを解除しろ!
じゃないと、この建物はあと数分で崩れる!」
「じゃあ、なんでここに来たんだ?
俺の場所がわかった時点で政府に知らせて、捕まえることくらい出来るだろ?
でも、賢斗ひとりで来た。
それに、収監施設を爆発させるという目立つ行為はしないはずだ。
そこまでして自分の命が大事か?」
奥歯を噛みしめる賢斗。
「お前に何がわかる!!
この施設にお前が居た。
だから壊した。それだけだ。
さぁ、早くシステムを解除しろ!」
ドォォン
更に大きな音が鳴り響いた。
立ってられないほどの揺れにふらつく。
俺だって、やっと賢斗に会えたんだ。
簡単には引き下がれない。
「こんな大きな騒ぎを起こしたら、誰だって気付く。
世間に知れ渡ったら、全部終わるぞ?
その前に、もう終わらせよう」
賢斗を説得するように言ったが、
「僕はまだ死ぬわけにはいかない。
ここで終わらせるわけにはいかないんだ!」
賢斗がそう叫んだ瞬間、頭上が倒壊し、俺と賢斗の間に瓦礫が落ちてきた。




