雨を探して
それから俺達は作戦会議をした。
トキさんの行きそうな場所は、誠真さんがほぼ調べている。
それ以外でトキさんが行きそうなところを手分けして探すことになった。
ひとりで行動するのは危ないので、二人一組で動く。
スミさんとカナさん
大地と舞華
空翔と俺
このペアで動くことにした。
蓮樹とばあちゃんは、トキさんが帰って来る可能性もあるので小屋で待ってもらうことになった。
そして、全員ピアス型ナノチップを装着した。
ピアス型と言っても、耳に穴を開けるわけではなく、シールのように貼るタイプで、これがあれば、みんなといつでも連絡が取れる。
さらに、微弱の電磁波が出ているため、防犯カメラやナノチップ搭載のロボットには認識出来ないようになっている優れものだ。
そして、誠真さんから
「わかってると思うが、大地くんと舞華ちゃん以外は、みんなはデジタル世界では死んだことになっている。見つかってはいけない。
だからといって、コソコソしていたら怪しまれるだけだ。
堂々と行動してほしい。
つけてもらったピアスが、みんなを守ってくれる。
僕も出来る限りフォローはするけど、人数が多い分、全てをカバー出来る自信ない。
だから何かあったらすぐに連絡して。
絶対に無茶しないこと」
みんなに言い聞かせた。
全員多少なりとも不安はあった。
だが、それよりも
『トキさんを助けたい』
その気持ちの方が、圧倒的に強かった。
準備が出来たらすぐに出発した。
小屋に残る、ばあちゃんと蓮樹も
「みんな強い子だから大丈夫」
と送り出してくれた。
その晩は新月だった。
辺りを照らす月明かりもなく、俺達は暗闇に紛れてデジタル世界に戻ってきた。
到着すると、それぞれペアごとに分かれて行動を開始した。
最後にトキさんを確認出した場所から
スミさんとカナさんは北へ
大地と舞華は西へ
空翔と俺は東へ
誠真さんは監視カメラなどデータを使って南を重点的に探す。
そして毎日、日没には必ず連絡を入れる事。
それがルールだ。
空翔と俺は、隠れられそうなところに目星をつけ、ひとつずつ潰していくことにした。
目星といっても、マンホールとか、使われていない家など、警察も警備ロボットもすでに探してそうな場所だった。
「やっぱり、いないな」
そう言いながら、次の場所へ向かう。
「なぁ、空翔ならどこに隠れる?」
ふと疑問に思い聞いてみた。
「うーん。俺なら学校かな?
家はすぐにバレるし、それなら人の出入りも激しくて、同じような年齢がいっぱいいるから見つかりにくそう」
「なるほどな。
木を隠すなら森の中ってわけだ。
じゃあ、トキさんを隠すなら、どこだよ?」
「それがわかんないから、探してるんだろー」
空翔はお手上げという状態で頭を抱えた。
明らかに人が隠れそうな場所は、もう警察が探してるはず。
トキさんも、人のいないところではなく、人の多いところにいるのかもしれない。
「空翔。明日から探す場所ちょっと変えないか?」
「いいけど、どこ探すんだ?」
「森だよ」
「は?森?」
「さっき空翔が言った、人を隠すなら人の中ってこと!
トキさんも人の中に紛れてるんじゃないのか?」
「なるほどな!
じゃあ、明日は人の多いところを探すって事だな!」
「そういう事」
「で、人が多いところってどこ?」
「学校、駅、お店、会社とか?」
「じゃっ行くか!」
「いやいや、待て!
もうちょっと絞ってからにしようぜ」
そう必死に空翔を止めている時に、連絡がきた。