広がる雨
それから治験者を増やしていったが、拒絶反応などの連絡なかった。
体に異物を入れることで拒否反応が出る覚悟をしていたが、大丈夫なようだ。
あとは長期間様子を見て、体に問題なければ実用化出来る。
自分自身もほっと胸をなでおろしていた。
その数日後、政府から
ロボットに誤作動が起こったと連絡があった。
聞いた内容によると、通常通り仕事をしていたロボットが凶暴化したと言うのだ。
まさか、そんなことが起こるなんて。
ナノチップには、仕事の仕方を教科書のようにマニュアル化し組み込んだだけだ。
暴走するようなプログラムは組まれていない。
これは一刻も早く改善しなければ。
すると政府が
「ナノチップの改善のため、システム環境の整った場所を用意した」
と、すぐに場所を提供してくれた。
そこは、ナノチップ社と看板が掲げられた建物で、必要なパソコンやプログラムが全て揃っていた。
あまりにも立派な場所と環境に驚いた。
「こんなところ、本当に借りてもいいんですか?」
驚きながら聞き返すと、
政府は笑顔で
「もちろんです。
あなた方の開発が、今後もっと未来を変えていくんです。
これくらいさせて下さい」
と返してくれた。
それを聞き、更にやる気を出した。
まずは、今起きている誤作動をすぐに修正し、今後発生しないようにしなければ。
誤作動を起こしたらすぐに機能停止する、問題発生した個体を発光させる、など様々なパターンを考え、システムを組み換えた。
すると、次は新しく機能を追加したい、アップロードで不具合が出た、など問題がどんどんと押し寄せてきた。
それを全て解決しているのに夢中で、気がつけば一年経っていた。
これでもうナノチップを搭載したロボット達の不具合は出ないはずだ。
ついに人にも実用化出来る!
そう思っていた。
俺はシステムの対応に夢中になり過ぎて、ずっとナノチップ社から出ていなかった。
何かあれば賢斗か政府が俺の元へ駆けつけて、伝言や足りないものを持って来ていた。
外の情報なんて気にしていなかった。
それが政府の作戦だった。
だから気付いていなかった。
この一年、不具合に対応している間に、ナノチップがすでに人に装着されていた。
しかも、障害を持った人だけでなく、全ての人へ装着を義務化していた。
どういうことだ?
すぐに政府に向かい問いただした。
すると、政府は
「君のおかげで、ナノチップは人類になくてはならないものとなった。
ありがとう」
と感謝を述べた。
「なぜ、勝手に装着義務化させたんだ?
まだ開発して一年のものだ。
拒絶反応が起こる可能性だってあるんだ!」
「こんなに便利なものだから、早くみんなに使って欲しかったんだ。
すでに障害を持った人の役に立っている。
だったら、全ての人にも役に立つんだから素晴らしいことじゃないか」
「今までの不具合は、ロボットの不具合じゃないんだな?
人へ装着させ、起こった不具合なんだな?」
「全部じゃないさ、もしもこんな不具合が起こったらって想定したものを解決するために相談したものもある。
でも君は全てを解決したじゃないか。
これからも頼むよ」
あれだけの不具合が起きていながら、本当に安全と言えるのだろうか?
政府への不信感でいっぱいだった。
そして、もうひとり。
賢斗だ。
なぜ、報告してくれなかった?
すぐに賢斗の元へ行った。
「賢斗!」
「あぁ、時任。どうした?」
「どうしたじゃないんだよ!
なぜ、ナノチップ装着計画を俺に言わなかった?」
「時任には、システム開発に集中して欲しかったんだ。
それにいずれは装着されるのなら、ちょっと早く使用開始しただけじゃないか?」
「何がちょっとだ!
まだ試験段階で、長期間リスクが見えていない。
もし、装着したことで、数年後人体に大きな影響が出る可能性だってあるんだ!」
「大丈夫だよ。
時任の技術があれば問題ないさ。
今までの問題だって全て解決してきたじゃないか?」
俺の知っている賢斗ではなかった。
まるで、別人かのように政府と同じ考えになっていた。
俺ひとりが取り残されたような感じがした。
俺が間違っているのか?
便利だったら、どんなリスクも考えなくていいのか?
違うだろ?
政府や賢斗が、俺に相談せずに勝手に装着義務化したことに何か理由があるはずだと思い、それを探すことにした。




