雨が生まれる
「君達の技術を是非活用させてほしいんだ。
ナノチップがあれば、多くの人を助けられる。」
そう言われた。
自分達が作ったものが、人の役に立つと言われて嬉しかった。
費用も全て政府が持つ。
そのかわり、他の企業には情報を漏らさないでほしい。
そう条件を出してきた。
俺もケントも断る理由はなかった。
今までも、部費でロボットを作るには限界を感じていたし、ナノチップの技術が多くの人を助けるなら、政府に技術を守ってもらった方が安心だと思った。
俺達は政府と契約し、ナノチップを大量生産することになった。
大量生産にあたり、ナノチップの仕組みの詳細を聞かれた。
使用するロボットに合わせて、ナノチップのプログラムを書き換えるのだろう、最初はそれくらいしか思っていなかった。
ところが、話をすすめていくうちに、事細かく聞かれること多くなった。
「ナノチップは一度装着するとプログラムの変更は出来ないのか?」
「もし故障した場合は壊すしかないのか?」
「人間に磁気などの悪影響は出ないのか?」
大量生産で慎重になっているのか?
「あの、ナノチップのロボットをどこで使う予定ですか?」
そう問いかけた。
「あぁ、医療機関で使用予定だ。
ただでさえ人手不足だからね」
その答えから3ヶ月後には、ナノチップを搭載した看護ロボットが一般公開され、世間を騒がせた。
政府から
「君達のおかげで、医療機関に大きな功績を与えた。
今後は介護ロボット、警備ロボット、接客ロボットなど、様々な分野に活用させてもらう」
と言われた。
実際に目の前で動いているのを見ると、俺達も感動した。
部活では限界あったが、費用をかけ作られた本物はクオリティが違った。
やはり政府と契約してよかった。
実際ロボットが動いているのを見て、更に人の役に立つものが作れないかと考え、政府に提案した。
「ナノチップを体の不自由な人へ搭載したい。
事故で手を失ったり、足が動かなかったり、
目が見えない、耳が聞こえない、声が出ないなどのハンデキャップを持っている人の役に立ちたい。
看護ロボットや介護ロボットではなく、自分の意思でナノチップを使えたら、もっと便利じゃないか?」
そう持ちかけた。
「それはすごい!
そんな事できるのか?」
政府も驚き喜んでいた。
「実際やってみないとわからない事が多いですが、理論上は可能です。
ただ、人の命に関わる事なので慎重にすすめていきたいと思っています」
そう伝えた。
政府は
「すぐにでも開発を始めよう!」
と乗り気だった。
その場には賢斗ももちろん一緒に同席していたが、政府とは正反対に暗い顔をしていた。
「賢斗どうした?」
と声をかけた。
すると賢斗は
「いや、すごいな!そんなアイデア思いつくなんて!」
と喜んでくれた。
「これからもっと忙しくなるぞ!
頑張ろうな!」
俺は、自分のやりたいことで頭がいっぱいだった。
それからは忙しい毎日だった。
ナノチップの細かい設定。
マウスでの実験。
安全性問題。
様々な問題が立ちはだかる。
一番は安全性。
人を助けるためのものが、命の危険を及ぼしては意味がない。
もしマウスの段階で少しでも異常が出たら、この計画は白紙に戻す。
そう政府に言い切った。
マウス実験の段階で異常は見られなかった。
そして、実際に人に搭載してもらうことになった。
病気で声帯を失った方の協力のもと、ナノチップを人体へ入れる。
痛み違和感もないはずだ。
ただ、体に異物を入れることで拒否反応を起こす可能性は否めない。
緊張の瞬間。
「どうですか?
体に異変はありますか?
痛みなどあれば手を上げてください」
そう医師が患者へ話しかける。
すると、
「大丈夫です。
痛みの何もありません」
と言葉が返ってきた。
その場にいた全員で喜んだ。
患者の嬉しそうな顔が、なにより印象的だった。
これで、もっと多くの人を救える。
そう思っていた。




