傘を持って知る、安心感
奏さん本人には、あなたのピアノのおかげで救われてきたんだとは伝えていない。
伝えなくていいと思っている。
もし、その発言がキッカケでピアノの事を思い出し、また辛い思いをさせたくない。
だから、以前から奏さんを知っていると言わなかった。
奏さんも自分が出来る事があるとわかると、少しずつ手伝いをするようになっていった。
一緒に作業をするようになって、奏さんが笑ってくれると本当に嬉しかった。
笑ってくれるなら、なんだって君の力になる。
そう思ってずっと君のそばにいる。
晴希に話そうと思い、過去の事を思い出した。
こんな恥ずかしい事言えるかと我に返り、
「初期不良と気付いてなかった俺をトキさんが助けてくれた」
それしか言えなかった。
すると晴希は
「よかったです。
ここでスミさんと出会えて」
と言った。
晴希は詳しくは聞いてこなかった。
いいのか?と思いつつ作業を続ける晴希を見ていて、俺も同じ思いだった。
ここで会えてよかった。
向こうだったら、畑仕事なんかしなかったし、食事のありがたみなんてわからなかった。
ここだから、作物の大切さ、料理の美味しさ、みんなで食べる事の楽しさがわかる。
どうでもいいと思っていたのに、ここに来たら大切なものが見つかった。
もう失いたくない。
だから、これからも力を合わせていくんだ。
そのためにも、今出来る事。
トキさんに頼まれたモノを完成させるんだ。
ーーーーーーー
無実の発光者がもう出ない。
その連絡を誠真さんから受けて、安心しきっていた。
「廣田くん、どう思う?」
と種岡から質問され、
「どうって?」
とそのまま返した。
「あのメッセージ、何かあると思わない?」
種岡が言っているのは誠真さんからのメッセージだった。
『無実の発光者は出ないと思う。
君達のおかげだよ』
そうメッセージが来たあとに続けて
『今回の影響で、しばらく僕のシステムが使えなくなるから、連絡出来ない。
今回みたいに、君達が監視されて、メッセージデータを追跡されたり内容を知られたらトキさん達の存在が知られてしまう。
だから、連絡するまではしばらく僕達と繋がりがあった事は残さないように。
このメッセージも自動消去させてもらう』
と連絡があった。
種岡は、それが引っかかっていた。
「どうって言っても、そのままだろ?
今回は完璧に俺が突っ走った結果だ。
すまない」
「それにしたって、もう解決したのに距離置かれてる感じがして」
「確かに。
以前のやり取りまで消去されてるって事は、俺達との繋がりを消したい可能性はある」
「そうなったら、もう晴希には会えないのかな?」
珍しく弱気になる種岡を見て、申し訳ない気持ちになった。
俺が勝手に突っ走ったせいで、晴希との繋がりがなくなるかもしれない。
それだけじゃない。
トキさんや誠真さんを危険にさらしているかもしれない。
もう彼らに会えないかもしれない。
今は誠真さんから連絡がくるのを待つしかなかった。
以前のGPSや追跡がない事で、勝手に終わったと思っていた監視。
実はまだ監視を続けられている事に俺達は気付いてなかった。
大地と舞華、珍しく落ち込んでますが
この2人なら立ち直り早いはず。




