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雨音をかき消すピアノ

スミさんの過去の話です

いつも音が鳴っていた。



雨が降るようにザァーと鳴り続ける。

たまに豪雨のように、ゴォーとけたたましい音を立てる時は頭痛もした。



子供の頃からこれが当たり前で、みんな同じ様に音が鳴っているものだと思っていた。

だから、自分の頭の中だけだとは思っていなかった。



そして、この音はたまに日常生活の音をかき消したり、人の言葉を遮る。


もちろん、全てを消すわけではないが、一部しか聞こえてないとわからないことは多い。



そのおかげで子供の頃は怪我が多かった。

両親からは注意力散漫な子供だと思われていた。



小学校に上がった頃、近所からピアノの音が聞こえた。

不思議と、このピアノの音が聞こえている時だけは、雨の音は止み、頭の中は音楽で満たされる。



その時間が嬉しくて、ピアノを待ちわびていた。


ただ、ピアノだったら何でもいいというわけではなかった。



同じ曲でも、ある特定のピアノの音じゃないと雨音を消してはくれなかった。



いろんなピアノの音を聞いたが、()()じゃなきゃダメだった。



その音を特定するために、学校から帰宅後、ピアノが鳴る方へ導かれる様に近付いて行った。



そのピアノは、近所の私立音楽学校から聞こえてきた。



さすがに中には入れない、一番近くで聞こえる場所を探し、柵越しに音を聞いた。



それから、ピアノの音が鳴る日は、必ずその場所へ行きピアノを聞いていた。



たまに近くを生徒が通り

「またかなちゃんが弾いてるね。

今度出るコンクールの練習だって」

と話しているのを聞いた。



その数週間後、ニュースで最年少で音楽コンクール優勝を知り、『織原(オリハラ) (カナ)』と彼女のフルネームを知った。



その名前で調べると、彼女のピアノ演奏の映像が出てきた。



なんて楽しそうに弾くんだろう。

まるでピアノが嬉しそうに歌っているみたいだ。



このピアノじゃなきゃダメだ。

彼女が弾くピアノじゃなきゃ、この雨は止められない理由がわかった気がした。



それから、ピアノが聞けない時は、その映像を聞いて雨音を消していた。



時は経ち、高校生にもなると彼女の活躍は世界を震撼させるほどのものだった。


それだけの活躍をすると、ネット上に様々な彼女の曲が公開され、すぐに聞くことが出来た。


ただ、彼女の生演奏には敵わなかった。



海外に行くことも増え、学校で弾くことも減り、彼女の演奏を直接聞く機会がなくなっていった。



そんなある日、彼女の乗った飛行機が事故を起こした。


飛行機は炎上し、多くの犠牲者を出した。



その中に彼女の名前もあった。



ショックだった。



彼女がいなくなるなんて思ってもみなかった。


これから活躍して、世界に名前を残す人物だと思っていた。



自分がこれだけ助けられているのに、ありがとうのお礼も言えずに、彼女は居なくなってしまった。



それからは、悲しくて彼女のピアノを聞けなくなっていた。


かわりに雨音が鳴り続ける。


悲しい心にはちょうどよかった。



ザァーと降り続く雨に、かき消されていくようだった。



高3で受験が終わり、大学に合格した俺は、ひとり暮らしをすることにした。



もう家にいても、あのピアノは聞こえて来ない。

それなら、どこに居ても一緒だ。


自立するためにも親元から離れた。



その頃には、俺の中の雨音は豪雨になっていた。



そして、頭痛もひどくなっていた。


痛みに囚われ、頭痛の時はナノチップが使えないことに気付いてなかった。



頭が割れるように痛い。


もう我慢出来ない。


彼女の曲を聞こう。


そう思い

「検索、織原 奏」

と呟いたが何の反応もない。


おかしいと思い

「ピアノ」

とも言ったが何も表示されない。



その間に、さらに頭痛がひどくなる。


その場にしゃがみこみ、

「きゅ…、救急…しゃ」


と言葉にするが、緊急通報も出来なかった。


なぜだ?



そう思いながら、痛みに負け、意識を失った。






気が付くと、布団の上で眠っていた。



「よぉ。大丈夫か?

ずっと頭、痛かっただろ?」


親しげに話しかけてきた男性はトキトウと名乗った。



「はい、でも今は痛くありません。

それに…」


雨音がしない。



「今まで、頭痛と耳鳴りがしてたんじゃないか?」



「耳鳴り?」


あの雨音は耳鳴りだったのか?

みんな聞こえているものじゃないのか?



いろんな考えが交錯していた。




「すまないが、君にナノチップは初期不良を起こしていたんだ。

ずっと君を苦しめていたと思う。

勝手だが、君のナノチップを取らせてもらった。

あれ以上体内にあると、拒絶反応を起こし亡くなってしまう。



だから、今までのような生活は出来ない」


とトキさん言われた。



俺にはどちらでもよかった。


彼女がいない世界は雨音で埋め尽くされていて、周囲の音がかき消されてしまう。



そんなところで生活していても楽しくない。


だったらどこに居ても一緒だ。



「いえ、命を助けて頂きありがとうございます」



ただ、雨が止んでも何を生きがいにしたらいいかわからなかった。


彼女のように楽しいと思える何かが見つかるとは思えない。


人の役立てるだろうか?



そうして、トキさん連れて行ってもらったばあちゃんの家に彼女がいた。

もう少し続きます。


スミさん出番少ないから、もう少し増やしたい。

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