雨を紡ぐもの
『しばらく僕が対象者を監視するから、何かあったらこちらから連絡する』
そう誠真さんからメッセージが来たきり、連絡が途切れた。
候補者のGPS共有も外された。
『やっぱり誠真さんを怒らせたよな?』
と弱気なメッセージを種岡に送る。
『怒ってるんじゃなくて、忙しくて連絡出来ないだけじゃないかな?
なに?珍しく弱気になってるの?』
『そりゃ、一応反省してる』
『同じことをしないようにすること。それがわかってたら大丈夫!
あとは、今出来ることを精一杯やったらいいよ。
って、晴希の受け売りだけど』
『なんだよ。
晴希の受け売りかよ』
『いいでしょ?
どう?少しは元気でた?』
『あぁ、ありがとう』
部活終わりに、そうメッセージやり取りをし家に帰った。
それから一週間が経った。
なんの連絡もないことに不安を覚えつつも、
誠真さんは『なにかあったら連絡する』と言ってくれていたから、それを信じるしかない。
毎日学校と部活中の繰り返し。
日常に戻ったんだ。
そう思うことにした。
ただ、毎日発光者逮捕のニュースが流れて来る。
それを見るたび、日常を過ごしている自分にもどかしくなる。
候補者のGPSも外されたが、また共有されてるんじゃないかと、確認するのが習慣になっていた。
そのGPSを確認する中で気付いた事があった。
毎日、自分の近くに知らない人のGPS反応が2つあること。
はじめは勘違いかと思ったが、明らかに俺の行動を追っていた。
まさか、俺がつけられている?
この間の候補者の追跡で俺の存在が見つかったのか?
これは早く誠真さんや種岡に知らせないと。
とメッセージを送ろうとしたが、ふとこのメッセージが筒抜けだったら?という考えが過ぎった。
みんなに迷惑かかるんじゃないのか?
それに、トキさんみたいに監視カメラやGPS情報だけでも監視出来るはずだ。
それをしないってことは、俺の勘違いではないのか?
でももし勘違いじゃなかったら、何の目的で追跡しているのか?
発光候補者をつけまわしていた怪しい高校生だけならいい。
だが、それだけではなくトキさんや晴希達の存在を知るために追跡されているなら、俺がトキさん達と繋がっているとバレたらみんなが危ない。
次の日。
やはり相変わらずGPSが2つついて来るのを確認しながら、学校へ行った。
さすがに学校の中までには入って来ないので、種岡に手紙で今の状況を知らせた。
俺が追跡されている可能性があること
相手が誰かわからず、追跡目的がわからないこと
全てがわかるまでは種岡とも誠真さんとも連絡や接触を控えること
それからは、俺ひとりで追跡相手が誰なのかを必死に探っていった。
部活中にも近くで監視している。
俺も、誠真さんやトキさんみたいに、監視カメラの映像をリアルタイムでハッキング出来たらいいんだけど、そんな技術はない。
だから、他の人に見てもらうことにした。
どうせ第2グランドはサッカー部しかいない。
見かけない人物がいたら目につく。
練習のふりをして、ボールをGPS反応の近くまで飛ばす。
俺が取りに行くと追跡者達が離れるので、他の部員に取りに行ってもらう。
GPSはその場から多少移動するが、部員が目視で確認出来る距離にはいる。
知らない人物を見た部員が
「なんか変な2人組がいる」
と言って帰って来た。
「どんな?」
と聞くと
「ずっとグランド見てるんだ。
サッカーしたいのかな?」
と的外れな答えが返ってきた。
「そうじゃなくて、どんな人?
年齢とか性別とか背格好とかあるだろ?」
「あぁ、30代位の男性2人組。
卒業生かな?一緒にサッカーするか聞いてこようか?」
あまりにも面白かったから
「誘ってこい」
と言って、彼らの方に行かせた。
すると、明らかに自分達に向かって手を振ってくる部員に焦り、逃げて行った。
おかげで、30代の男性2人が追跡していることがわかった。
そして、彼らはGPSと目視だけで監視している。
もし監視カメラがリアルタイムで見れていたら俺達の会話もわかるはずだ。
だがその様子はない。
とにかく、今は何もしないのが一番だ。
普通の高校生活を送っていれば、怪しまれない。
監視されているとわかっているのに、普通に過ごすって大変だなと思いながら、何もないよとアピールするかのように過ごした。
すると、数日後種岡からメッセージが来た。
『誠真さんから、連絡きたよ!
この間の候補者の発光を阻止出来た。
今後は候補者が発光しないようデータを作り替えたから、もう無実の発光者は出ないと思う。
君達のおかげだよ。
ありがとう。
って!
これでもう大丈夫だね』
そのメッセージを読んで安心した。
もうあの人は発光しない。
よかった。
胸を撫で下ろした。
そしてそれ以来、俺への監視もなくなった。
ーーーーー
ナノチップ社
政府の管轄下にあり、そこは関係者しか踏み込めない場所。
その重役室で、男性が話していた。
「政府からの依頼の件が、止まっている?
どういう事だ?」
『それが発光システムが作動しなくなりました』
「どういうことだ?」
『はい。
発光システムに外部からアクセスされた形跡があり、それ以降、特定人物を狙った発光が出来なくなりました。
アクセス元は特定出来ず、現在調査中です』
「その他のシステムは問題ないのか?
犯罪者は問題なく発光しているのか?」
『はい。
その他のシステムに異常はみられません。
また、重罪行為が認められた者は、問題なく発光しています。
ただ、このセキュリティの中、どうやってシステムに潜入出来たのか?』
「そうだな。
このセキュリティを破るなんて、なかなか専門家じゃないと出来ないレベルだからな。
しかも、このシステムだけを狙ってアクセスしたということは、無実の人物を発光させていることが知られている可能性が高い。
その事実が世間に知られてはならない。
アクセス先の追跡だけでなく、今まで発光させた人物の周辺を徹底的に捜索し、早急に犯人を特定しろ。
怪しい人物は全員洗い出せ」
『承知しました。
先日警察から、発光させようとしていた人物のあとを追っていた学生が2人いたと情報があり、ただの高校生だったと報告を受けておりますが継続して調査を進めます。
その他にも、怪しい人物がいないか確認致します』
「あぁ、頼んだ。
何か情報があればすぐに報告してくれ」
『かしこまりました。
あの…本当にいいのですか?
このままで。
あまりに政府の言いなりになっているのでは…』
「そんなことはないさ。
こっちも利用させてもらってるんだ。
お互い様だ」
『そうですか。
かしこまりました。
では失礼致します』
そう言って通話は切れた。
「ナノチップのプログラムに潜入し、特定のシステムだけ停止するなんて、開発者のお前が関わってるに違いない。
なぁ、トキトウ。
どこに隠れてるんだ?」
その人物は写真データを表示させ、ひとり呟いた。
そこには、学生時代のトキさんの写真データが表示されていた。




