光を目指して迷いなく進む
食事をしたあと、トキさんはみんなを集めた。
「突然連れて来て、みんなを驚かせてすまない。
彼女は種岡舞華さん。
晴希の幼なじみだ。
今回事情があって来てもらった。」
「事情って?」
トキさんはお返しに連れて来たと言ったのに、事情があるのか?
「晴希は重罪者として発光するように、故意にナノチップに不正アクセスされ発光した。
本来なら、不正アクセス出来ないように厳重なシステムで守られているんだが、晴希の一件で不正アクセス出来る事が判明した。」
「えっと、つまり俺はナノチップの不具合ではなく、誰かから重罪者にさせられたって事ですか?」
「あぁ、そうだ。
晴希を狙って重罪者にしたんだ。
それで、今回その犯人から、アクセスを追跡、データ解析した結果、政府の一部権限を持った人物であればアクセス出来る事がわかった。
その際、データ解析の形跡を追われて見つかりそうになりしばらく身動きがとれなかった。
だから、しばらく帰りが遅くなった。
すまない。
ただ、みんなの事やここの場所の情報が漏れてないので安心してほしい。」
「そうじゃなくて、トキさんは大丈夫なんですか?
トキさんの存在がわかってしまう事の方が大変じゃないですか!」
スミさんが俺達の気持ちを代弁して発言してくれた。
「心配かけてすまない。
俺の存在が向こうに漏れた可能性も低い。
誠真が上手くやってくれたからな。
ただ、今回の事でナノチップシステムのセキュリティが弱くなっているんじゃないかと心配している。
俺が開発した当初は、悪用されては困るとセキュリティを最大限に強化して、操作出来る人間を決め、パスワードを設定していた。
それがこんなに簡単に発光システムまで踏み込まれるという事は、アクセス権限が緩くなっている。
今後、政府に都合の悪い人間が発光させられたり、ナノチップの利用制限をさせらるなど、悪用される可能性が高い。
それは阻止したい。
だから、しばらく向こうに行って政府の動きを監視したいと思っている。」
「トキさんは安全なんですか?」
「誠真もいるし大丈夫だよ。
それに、彼女も手伝ってくれるっていうから。」
と舞華の肩をポンと叩く。
「はい?
舞華が手伝う?」
「晴希の一件で、トキさんと誠真さんにいろいろお世話になったから、手伝おうと思って。」
ニコっと舞華は笑って見せた。
「いやいや、ちょっと待て。
だからって、なんで舞華なんだよ?」
「晴希、大丈夫!
私しっかりしてるから。」
「しっかりしてる?どこが?
そういう問題じゃないだろ?」
「なによ?
しっかりしてないって言うの?
私、ダンス部まとめてるのよ!
任せて!」
「部活とは違うんだぞ?
下手したら、命狙われ…」
「まぁまぁ、2人とも落ち着いて!」
と舞華と言い争っているとトキさんが止めた。
「いろいろ不安だと思うが、彼女達の協力が必要なんだ。
あと、みんなも不安にさせてすまないが、これ以上ナノチップシステムが悪用されて、命を落とす人が出て欲しくないんだ。
俺は、ナノチップが人の役に立つために作ったんだ。
ナノチップが人を支配するようになっては元も子もないと思っている。
だから一刻も早く今の状況を把握したいんだ。」
それを聞いてスミさんが
「わかりました。
僕たちにも出来る事があったら言って下さい。
くれぐれも無理はしないで。」
と言い切った。
それを聞き、俺以外頷いた。
俺だけは簡単には頷けなかった。
それを見かねて、
トキさんが俺をひとり呼び出し、2人で外へ出た。
「いろいろ勝手に決めてすまない。」
「俺は納得行かない事ばかりです。
結局、俺を重罪者にした犯人は誰なんですか?
なんで舞華が俺達に協力することになるんですか?」
明確な答えを教えてもらえない中、確定事項ばかり報告されても納得いかない。
「晴希を発光させた人物は、堅元くんなの。
私と晴希が仲良いのに嫉妬して、晴希を発光させた。
だから私のせいなの。
トキトウさんの事をセイマさんから教えてもらって、協力したいって言ったのは私なの。
罪滅ぼしのつもりなの。
少しでも役に立てたらって。
だから協力させて。」
俺達が外に出たのを見て、舞華が追って来て言った。
トキさんは頭を抱えながら、
「まぁ、そういう事なんだ。」
とちょっと気不味そうに言う。
そして、トキさんはそのまま続ける
「彼女が悪いわけじゃない。
犯人の勝手な思い込みで、晴希は発光させられた。
だから、彼女を恨まないでくれ。」
慌てたようにトキさんが釈明の言葉を連ねる。
カタモトと言われて、一瞬誰かわからなかった。
そういえば学年主席で生徒会メンバーのひとりがそんな名前だったと思い出す。
舞華と同じクラスで、部活の申請する時にお世話になってるみたいな話を聞いたような、
それくらい、あまり繋がりのない人物だった。
それを聞いて、
「なんだ。
舞華じゃなくてよかった。」
と心底思った。
「違うよ!
私だったらよかったのに。
なんで関係ない晴希が発光させられないといけないのよ。」
「そうじゃないだろ?
俺が重罪者じゃないって信じてくれたから、ここにいるんだろ?
俺だったら、ここまでの行動力ないからな。
舞華を助けられない。
だから舞華じゃなくてよかった。」
「確かに、この子の行動力はすごいな。」
トキさんも頷く。
「でしょ?
それに振り回されるこっちの身にもなって下さいよ。」
トキさんに便乗して言う。
「なにそれ!
ひどい!」
舞華は俺を力いっぱい叩く。
「痛い!
舞華、痛いって!」
叩かれながらも
「でもありがとうな。」
小さな声で舞華にお礼を言った。




