情報の雨
ナノチップ。
産まれたらすぐに頭に埋め込まれる。
特に手術をしてつける訳ではなく、眉間にナノチップの仕込まれたシールのような粘着シートを貼っておくだけでナノチップだけ皮膚を浸透して頭に埋め込まれる。
痛くも痒くもない。
そのチップには個人番号が振り当てられており、個人情報を管理している。
更に、GPS機能、メール、電話、電子決済、アラーム、写真など今でいうスマホの機能がナノチップに組み込まれている。
そのため、スマホはもちろん現金どころか財布も持たない。身軽に動けるようになっている。
このナノチップは政府管理下で20年前から使われている。
20年前は人体に異物を入れるなんてと反対の声ももちろんあった。
しかし、実際に利用し便利さに気付くと普及は一気に広まった。
そして、全国民にナノチップ装着義務を法律化した。
しかも政府は安全性を大前提とし、今現在まで不具合など起こっておらず人体には無影響と自信満々に謳っている。
実際、不具合や損傷の話題なんか1つも聞いた事なかった。
むしろ、いかに便利に使うか、アップデートされ更に機能が増えましたなどプラスになるニュースしか聞いてこなかった。
だから疑問にも思わなかった。
ナノチップがなくても生きて行けるなんて。
壊れるなんて、不具合が起こるなんて。
ナノチップは絶対安全だって思い込まされてた。
この世に絶対なんてないのに。
ここで生活している人達は、ナノチップに何らかの不具合が起こっている人。もしくはナノチップが装着されてない人だ。
全員、時任さんが助けたらしい。
助けられただけ運が良かったと言われた。
川で溺れて天国だと思ったのは、昭和の様な田舎暮らしだった。
いまいち死んだのか生きてるのか実感がないのは、この暮らしがあまりにも現実離れしているからだろう。
しかし、俺はすぐに生きているのを実感した。