雨粒がシミとなる
堅元は、泣き叫ぶように自分の思いを吐き出した。
それを聞いたトキトウさんは、怒り狂ったかのように、胸ポケットから銃を取り出し堅元の眉間に押し当てる。
「お前の気持ちはわかった。
でもな、何してもいいわけじゃないんだ!
振り向いてくれないから、他人を怪我させていいのか?
隣いたいから、邪魔な人間を犯罪者にして気持ちいいか?
そんな事したやつの隣にいたいと思うのか?
相手が振り向くと思ってるのか?
そんなに好きな相手なら、喜ぶような事してやれよ。
お前は相手を思いやる気持ちはないのか?」
怒りに任せて、今にも銃を撃ちそうになっていた。
銃口を向けられた堅元はパニック状態になり
「しょうがないじゃないか!
隣にいる方が悪いんだ!
クラスメイトからも先生からも親からも信頼を得ているこの僕が、手に入れられないものなんてないんだ!
だから、僕の邪魔をするやつはいなくなればいいんだ!!!」
堅元は文武両道で、生徒会でも活躍しており、クラスメイトから信頼されるような人物だった。
親は政治家、裕福な生活を送り、何一つ不自由なく生きてきた。
そんなやつがなんで、こんな自分勝手な事をしたんだろう。
最初はそう思ったが、何一つ不自由がなかったからこそ、全て自分の思うようになると思っているんだろう。
その言葉にトキトウさんは怒りを通り越し諦めていた。
こいつには何を言っても通じない。
そう冷たい目で語っていた。
「じゃあな。」
トキトウさんはそう言って、銃のロックを外し、引き金を引こうとしていた。
堅元は、まさか本当に打ってくるとは思ってなかったのか、
「待て、待て。
僕の父さんは政治家なんだぞ?
僕が怪我したなんてわかったら、お前はただじゃ済まないんだぞ?」
半分脅しのように言い出した。
「それがどうした?
俺には関係ない。
もうお前は用済みだ。」
冷めきった目で堅元を見る。
それを見て、トキトウさんは本気だと思った。
「待って、何も殺す事ないだろ。」
とトキトウさんを止めようと思った瞬間。
パァン
を軽い音が響き渡った。
その音と同時に堅元は気を失った。
「こんなやつに使うのももったいない。」
とトキトウさんは言いながら、堅元から銃口を外した。
「え?撃ってないんですか?」
と聞くと、
「あまりにも、言動が自分勝手過ぎて、思わず銃なんか出したが、撃つつもりなんかない。
銃も銃声もニセモノだ。
こんなんで気を失うほど根性なしに、使う方がもったいない。」
そう言いながら、胸ポケットに銃をしまう。
そんなものを持ってるのに驚いたが、ニセモノと聞いて安心した。
その後、トキトウさんは誰かと連絡を取りながら、堅元の頭を触っていた。
「あの?
これからどうするんですか?
堅元が犯人という証拠見つかりそうですか?」
恐る恐る話しかけると、
「あぁ、わかったぞ。
発光システムの正体が。
もうアクセス出来ないようにしたから、誰も発光する事はない。
あとは、こいつをどうするか、だな。
警察に突き出したところで、親の力で何もなかった事になるんだろうな。
それに、俺としても発光システムにアクセスした事や俺がここにいた事が世間に知れるのはマズイ。
だから、申し訳ないが、今日ここであった事はなかった事にしてくれないか?」
思いもよらない答えが返ってきた。
「なかったことってどういうことですか?
犯人が捕まれば、晴希の無実は証明されるから、帰って来れるんですよね?
そのために、俺達頑張ってきたのに。
それに、堅元が捕まらないんじゃ、同じ事を繰り返すんじゃないんですか?」
晴希のために頑張ってきたのに帰って来ない、堅元は捕まらない。
何も解決してないじゃないか。
そう思った。
「こいつにはちょっと細工したから、もう同じような事はしないはずだ。
捕まらないが、それ以上の事を抱えてもらおうと思う。
君達には申し訳ないが、このまま家に帰す。
そして、晴希は戻って来ない。
犯罪者じゃないと証明されても戻れないんだ。」
申し訳なさそうにトキトウさんは俺に言った。
「何故晴希は戻れないんですか?
だって、犯罪者じゃないとわかれば、普通に生活出来るでしょ?」
「晴希はもうこっちの世界じゃ生活出来ないんだ。
ナノチップを取り除いたから。」
は?
何を言ってるんだ?
ナノチップを…取り除いた?
それじゃ、死んでるって事じゃないのか?
それに、さっき俺達は晴希に会ったじゃないか?
言ってる意味がわからず混乱していると、トキトウさんに連絡が入った。
「あぁ、わかった。」
そう言って、すぐに連絡を切り
「廣田くん、すまないがコイツが目を覚ます前に家まで運ばないといけないから、俺はそろそろ行く。
詳しい事は、種岡さんと一緒に今度説明する。
また連絡する。」
そう言い、堅元を担ぎ行こうとするトキトウさん。
「待って下さい!
聞きたい事はたくさんあるんです。
こっちから晴希やトキトウさんに連絡取る方法はないんですか?」
それを聞き、立ち止まるトキトウさん。
「悪い。君達から連絡は取れないんだ。
だから、必ずこちらから連絡する。」
振り向かずにトキトウさんはそう言い、去って言った。
その場を離れたトキトウさんはすぐに誠真に連絡を取った
「すまない誠真。
いろいろありがとう。」
『いや、全然いいんですが、こっちの動きが読まれてる可能性があるので、出来る限り早めに帰って来てもらえますか?
さっきの発光システムが解明出来たのはいいけど、アクセスしたこっちのデータを解析されてる。
何重にもセキュリティかけてるけど、いつどこでトキさんの存在がバレるかわからないから、早くトキさんのデータを消したい。
そのためには、トキさんは向こうの世界に存在を隠さないと。』
「わかった。コイツを家に帰したら、すぐに戻る。」
そう言って足早に移動し始めた。




