わずかな隙間から光が差す
トキトウさんは俺と種岡に声をかけたあと、晴希の耳元で何か言った。
晴希は納得したように俺達を見送る。
「すまないが、急ぐぞ。」
と焦らすトキトウさん。
トキトウさんに急かされ、まともな会話も出来ないまま、走らされた。
「そんなに時間ないんですか?」
「君達のダミーのGPSを追跡している警備ロボを誤魔化すにも、長時間はさすがに怪しまれる。」
「俺達は何をしたらいい?」
「今、2人は種岡さんの家に逃げ込んでいるように見せかけているから、種岡さんは家から姿を出さないで欲しい。
そして、廣田くんは種岡さんの家から出て来て帰宅してもらう。
きっと、周りに知り合いがいなくなり、更に目撃者を増やすために、人通りの多い所で発光させるはずだ。
帰り道の途中、大きなショッピングモールがあるだろ?
あそこ付近で発光する可能性が高い。」
「わかりました。」
そう言い、3人で種岡の家の近くまで行った。
家から少し離れた所に警備ロボを見つけ、
「犯人は近くにいないようだから、あの警備ロボに見つからないように家に入ってくれ。
あとは、さっき言った通りで頼む。」
トキトウさんは俺達を見送った。
俺達は裏口から種岡の家に入った。
「廣田くん。
気を付けて。
何かあったらすぐ行くから、連絡ちょうだい。」
何も出来ない自分に無力さを感じているようだった。
「これが終わったら、晴希帰ってくるんだろ?
俺達の武勇伝聞いてもらおうぜ。」
「武勇伝って。」
と笑った。
そう笑って待っておけばいい。
「じゃあ、行ってくる。」
庭を通り、玄関から出てくるとトキトウさんに言われた通りショッピングモールへ向かった。
ーー
その頃、トキトウさんは
「誠真、いろいろありがとうな。」
誠真と連絡をとっていた。
「トキさん、よかったんですか?
あの2人を騙して。
信頼得るなら、本当に晴希呼ぶべきじゃなかったんですか?」
「犯人を捕まえるには、今日が絶好のチャンスなんだ。
今回は時間がないから、晴希のホログラムだったけど、このシステムが解明されたら、ちゃんと本物の晴希に会わせるつもりだよ。
それより、2人のGPSと犯人の動き、しっかりと見といてくれよ。」
「はいはい。
これだからナノ中毒は困るんだよ。
周りの事なんかお構いなしだ。」
「え?なんだって?」
「いーえ。
何でもありませーん。先生ー。
2人が頑張って作ったこのチャンス、逃さないで下さいよ!!」
「わかってるよ!!」
誠真にそう言いながら、自分自身に言い聞かせていた。
これ以上のチャンスはない。
犯人がわかっても、発光させているシステムが解明されない限り、証拠ないのと一緒だ。
やってませんと言い切られたら終わってしまう。
俺では見つける事の出来ない犯人までたどり着いた2人。
これ以上危険な目に合わせる訳にはいかない。
階段から突き落とされたのを見た時は、すぐにでも学校に行って捕まえてやろうと思ったが、誠真に止められた。
俺が行ったところで何も出来ないんだ。
不審者が入って来て、証拠もない事件の犯人を突き出したところで、逆に俺が捕まるだけなんだ。
俺は見つかる訳にはいかないんだ。
2人には申し訳ないが、君達にしか証拠を引き出す事が出来ないんだ。
これ以上怪我はさせない。
個人番号を変更しておいて本当によかったと思っている。
さぁ、犯人よ。
いつでも来い!!!
お前の犯罪の証拠掴んでやるよ!!!
ーー
種岡の家を出てからショッピングモールまで歩いて行った。
さっきも気がつかなかったが、警備ロボは音もなく追跡しているようだ。
トキトウさんから、現状がダイレクトに声が聞こえるようになっている。
通話とは違うようで、電話でもなく、俺のナノチップに直接話しかけているそうだ。
説明されたが、難しくてよくわからなかった。
とにかく、周囲に通信しているとバレない方法らしい。
逆にこんな事が出来るのかと怖くなる。
今はそれより犯人の堅元の方が怖い。
もし、トキトウさんの言う通りなら、突き落として軽症しか負わなかった俺が邪魔と感じ、すぐにでも発光させたいはずだ。
発光しないと言ってくれているが、本当に大丈夫なのか?
俺の場合、予告されているから多少心構えが出来るが、晴希は突然発光しだし、自分でもわからないまま、周囲から冷たい目で見られ追われたんだよな。
それを考えるだけで、背筋が凍った。
これ以上、犠牲者を出したらダメだ!!
必ず証拠を掴んで見せる。
考えながら歩いていたせいもあり、ショッピングモールに着いた。
独り言のように
「入りますね。」
と呟く。
『あぁ、出来るだけ人通りの多い所へ行ってくれ。』
トキトウさんから指示が来た。
コクンと頷き、トキトウさんの指示へ返答した。
仕事帰りの人で少し人通りも多い。
その間を歩いて行く。
堅元から狙われていると思うだけで緊張が走る。
ただすれ違う人の目が気になる。
本当に俺は発光していないのか?
たまにガラスに映る自分を見ながら、確認しつつ安心する。
その繰り返しだった。
5分位歩いたところで、トキトウさんから
『来たぞ!!』
と言う声が聞こえた。




