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はじめましての雨

「あー、笑った笑った!こんな変なヤツ初めてだよ!」


そう言いながらも笑いが止まっていない。

同い年位の男子。余程ツボだったらしい。

何だ?誰なんだ?

天国には同い年位が多いのか?


「えっと?天国じゃないんですか?俺撃たれて死んだんですが。」


おじさんに銃で頭を撃たれて、気が付いたらここで…と言おうとすると返答が返ってきた。


「まだ体温あるだろ?冷たくてないって事は生きてるんだよ。そもそもなんで死んだ設定なんだよ(笑)。」

冷静にかつ淡々と事実を語る20歳位の男性。



確かに俺自身温かい。心臓に手を当てると鼓動を感じる。

そうか、死んでなかったんだ。

安心していると大爆笑していた同い年位の男子が話しかけてきた。


「まぁ、目が覚めてよかったじゃん。

元気あるならご飯食べよーぜ!

俺らも畑終わりで今からご飯なんだ。

あー、お腹空いたーばあちゃんご飯何ー?

ばあちゃんのご飯美味いぞー!」


ハタケオワリってなんだ?

どこかからの帰りなのだろうか、彼らの足元には新鮮な野菜がたくさん籠に入れてあった。

その彼の手足も服も土まみれだ。


「あ、ありがとう…。

ところで、ここどこですか?変なおじさんに頭撃たれて死んだはずなんですが。」



その一言にまたみんなが笑う。


「ぶはははは、おじさん、おじさんって。」

笑い上戸らしい。同い年位の男子はとにかくよくツボに入る。


「そんなに天国に行きたかったか。でも生きてる方がいいぞ。それに、撃たれたっていっても頭怪我してないだろ。」

20歳位の男性にそう言われ、撃たれたはずの眉間の辺りを触るが傷や火傷はない。痛みも全くない。


「お前の言うおじさん(笑)クク…。」

少し顔を反らし笑いを堪える20歳男性。


「そんなに笑ったら時任(トキトウ)さんに失礼でしょ。」

と女性がツッコんできた。


彼らはここに住んでいるらしく


笑い上戸でご飯に誘ってきた

草野 空翔(クサノ ソラト) 高校一年生 俺と同い年だそうだ。

ツーブロックで日焼けもしておりスポーツ少年という感じで幼い顔をしている。

とにかくよく喋る。明るい人だ。


体温あるだろと冷静にツッコんできたのは

望月 守純(モチヅキ モリズミ) 20歳 大学生だったそうだ。

空翔とは違い冷静に判断するタイプ。

怖いイメージだが、一番小さな子供が懐いている。


その一番小さな子供が

遠藤 蓮樹(エンドウ レンジュ) 小学2年 8歳

元気な男の子だが、どっちかというと空翔の方が子供っぽく見える。

大人がいる環境で育ったせいか、一歩俯瞰して見ている。


その隣にいる女性は

織原 奏(オリハラ カナ) 21歳 

セミロングの綺麗なお姉さんって感じで、見た目通り所作や話し方は丁寧な人。



そしてばあちゃんこと

遠藤 恵子(エンドウ ケイコ) 65歳

連樹のばあちゃん。この家の持ち主。

みんなのお母さん的存在らしい。そして料理が抜群に美味い。



みんなの紹介をしてもらいながら食卓を囲んだ。さっき彼らの足元にあった野菜が料理に使われていた。

「新鮮で美味しいからね。温かいうちにどうぞ。」とばあちゃんに言われ食べる事にした。



「ナノチップ取ったけど、頭痛まないのか?」

と望月さんが尋ねてきた。


「ナノチップ…取った?」

言葉の意味がわからなかった。


「そう、撃たれたんだろ?ってことはトキさんがナノチップ取ってくれたんだよ。」


俺は食事の手が止まった。

ナノチップは生まれたらまず頭に埋め込まれる目にも見えない程小さなデータチップ。これに個人情報からお財布やメール機能まで全て搭載されている。これがないと買い物も連絡も自分を証明する事すら出来ない。これが無くなるイコール死と考えられている。

なのに取るなんて、そもそも取れるものなのか?


「スミさん。いきなり言ってもわからないですよ。俺だって最初訳わからなかったんですから。ははは。」

と笑いながら空翔がフォローしてくれた。



「そうだな、それはすまない。

ここにいる俺達全員、ナノチップがなかったり破損が原因で向こうで生活出来ない人達の集まりなんだ。

君を撃った人覚えるよな?時任さんって言うんだけど、あの人に助けられたんだよ。」

淡々と冷静に望月さんは話してくれた。


「え?…だってナノチップなかったら死んだと一緒って言われてるじゃないですか?

やっぱり俺死んだんじゃないんですか?」



「ナノチップがない時代の人は普通に生きて生活してただろうか。ということは生きれるんだよ。ナノチップがなくたって死にはしないよ。

まぁ、現代はナノチップありきでしか作られてないから向こうに帰ったところで生活は出来ないだろうけどね。」


「あの…そもそも向こうって?」


「あぁ、説明してなかったな。君が今まで生活してたナノチップありきで動く世界。ネットワークが発達し全てデータに支配された世界だよ。

今いるここはネットワークはない。落ち込むことはないさ。実際俺達はこうして生きて生活してる。なくたってやって行けるんだ。

ただ、表立っては生きられないけどな。」


「表立って?」


「ナノチップが機能しないなんて聞いた事あるか?ないだろう?

不具合があるなんてわかったら付けないって人が出てくるから言わないんだよ。

ナノチップを推奨してるのは政府だ。だから悪い噂なんか立ったら一瞬で国民からの反発で国の信用丸潰れ。

だから安心安全で不具合なんか全くないって言ってるんだ。」


言葉が出なかった。

現状が受け容れられなくて、聞きたい事が多すぎて頭が整理出来ない。


その時襖が開き、男性が出てきた。

「まぁ、それくらいにしといてやれ。起きたばっかりで疲れてるだろうし、一気に把握するの難しいだろう。」


と、よく見るとあの時俺を撃ったおっさんだった。



「あ、あの時のおっさん!」

と言うとすかさず


「お兄さんと言いなさい!」

と鋭いツッコミがおっさんから返ってきた。



「おかえりなさい。時任さん。」

「あ、おかえりー。トキさん。」

など、みんなからおっさんに声がかかる。

どれも嬉しそうな声だった。

みんなこの人の帰りを待ち望んでいる感じだった。

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