黒い雨雲
次の日、部活をサボって病院にいった。
足を骨折した同級生の見舞い…というか、話を聞くためだ。
後をつけられたと聞いて、居ても立っても居られなかった。
俺も後を付けられた。
あの時は誰もいなかったから気のせいかと思っていた。
でも、そうじゃなかったら。
もしも、それが晴希なら、生きてる証拠が見つかるんじゃないか。
だが、晴希が後をつけるようなマネをするだろうか?
俺になら堂々と声をかけてくるんじゃないかと思っていた。
疑問ばかりが募り、話を聞く方が早いと思い病院に足を運んだ。
病室に向かうと、同級生の友人がベットの上で暇そうにしていた。
「おう、大丈夫か?」
と、声をかけた。
「おぉ、大地じゃん!
久しぶり!元気?」
と返してくれた。
怪我をしたわりには元気そうだった。
その友人とは中学の頃、同じクラスだった。
だから、俺の事も、晴希の事も知っている。
よく喋るヤツで、面白い事を言っては、周りを笑わせていた。
「事故にあったって聞いて、見舞いにきた。
怪我ひどいのか?」
「全治2ヶ月だって。
両足骨折だからしばらく入院。
暇してたから、見舞い来てくれて助かった!」
思いのほか元気だった。
「助かったって、そんなに暇なのか?」
「足が動かせないだけで、あとはかすり傷だからな。」
「なんでそんな怪我したんだよ?」
「いやー、それがな、家に帰る途中で晴希の声が聞こえたと思って、振り向こうとしたら背中押されて車にひかれた。」
ものすごく明るく言われた。
「いや、押されたって事件じゃないか!
警察には言ったのか?」
あまりにも危機感のない友達の発言に驚いた。
すると友人は、
「警察には事故の翌日に話した。
それが、目撃者もいないし、防犯カメラにも何も写ってないんだよ。
周辺のGPSにも人の反応が残ってないんだって。
だから、わかんないだよ。」
と諦めた感じで言った。
「じゃあ、犯人わからないんだ。」
「そう。
気が付けば、目の前に車がいたってわけ。
あれは本当に死ぬって思ったね。
よく走馬灯とか言うじゃん。
まさにスローモーションみたいに見えるんだよ。
ただ、俺の場合、記憶を思い出すんじゃなくて、死ぬんだなとか、痛いんだろうなとか、そんな感じ。
まぁ、実際死ななかったんだけど?
あの体験はすげーなと思ったけど、もう二度としたくないと思ったよ。
しかも、犯人が防犯カメラにも写ってないし、GPSも反応ないって、幽霊とかじゃなきゃ無理だろ?」
本当に暇だったんだろう。
話が止まらなかった。
「確かにおかしいな。
防犯カメラにもGPSにも形跡がないって。
だから晴希の亡霊って噂を流したのか?」
「いや、俺が流したんじゃない。噂は少し前からあっただろ?
噂は知ってたけど、信じてなかったんだよ。でも、あの日、晴希の声で『近付くな』って聞こえたんだよ。
だから、怖くなって振り向こうとしたら、はねられたんだ。」
「晴希の声って、聞き間違いじゃないのか?」
「いや、あれは晴希だと思う。
みんなの噂でも言ってるだろ?
種岡と仲良くしてたら、晴希の亡霊が来たって。
だから最近、種岡一人でいるから、俺が少しでも相談乗れたらって。
その矢先、この事故だよ。」
もう参ったという感じの友人。
「あれ?告白したんじゃないのか?」
「違うわ!そんないきなり告白するかよ!」
ものすごい勢いで否定してきた。
「そうか。」
事故の前から噂はあったらしい。
GPSにも表示されないが、声は聞こえる。
そりゃあ亡霊なんて噂が流れるわけだ。
だが、実際突き飛ばされたんなら、幽霊じゃないんだよな?
晴希が生きていて、突き飛ばしたのか?
いや、晴希はそんな事しない。
むしろ、生きてるなら、なぜ姿を現さない。
噂の出処はわからないが、明らかに種岡の周囲で起こっているのは間違いない。
まるで、種岡を一人にするために、近付けないようにしているとしか考えられない。
いや、待てよ?
この間のサッカー部の練習場所の変更も突然だった。
あれも、種岡といる時の呼び出しだった。
そして、あれがきっかけでしばらく種岡とは話していない。
まさか、あれも俺を種岡から遠ざけるためだったとしたら?
そう考えたら、ここで話している場合じゃなかった。
「悪い!俺、急用思い出したから帰るな!」
そう言って、病院を走って出た。
そうだ。よく考えたら不自然じゃないか?
サッカー部の練習場所の移動にしろ、さっきの交通事故の話だって、きっかけは種岡の近くで話を聞こうとした後に起こってる。
つまり、種岡は誰かに監視されているんじゃないのか?




