豪雨に遮られる
辺りを見回して見るが、誰も見当たらない。
気のせいだったか?と思い、そのままベンチまで歩いた。
誰かがいたかもしれないという疑心暗鬼からか、後をつけられているような気がした。
少し怖くなり、走って人通りの多い駅前まで行き、家に帰った。
次の日、種岡は約束通り、『昼休み、校舎の裏庭集合!』とメッセージを送ってきた。
昼休みに裏庭に行くと、種岡はもう待っていた。
「早いな。」
そう言うと、
種岡は張り切って喋り始めた。
「時間があんまりないからね。
さっそくだけど、昨日、帰ってから調べたんだけど、あのベンチまでのルートはA、B、Cの3つ。
昨日のAルート以外だと、残り2つ。」
そう言って、種岡はルートを共有して、俺にも見れるように目の前に表示させた。
共有している者にしか見えないようにしてあるから、学校でも周りを気にせずルートを確認出来る。
「じゃあ、B、Cルートを調べたらいいんだな?」
「いや、実質調べるのは、Cルート1つだけで大丈夫。」
種岡は言い切った。
「全部調べた方がいいんじゃないか?」
種岡のことだから、可能性あるなら全部調べるはずなのに、と思っていると。
「Bルートはもう確認出来てるの。
AルートもBルートもここで道が合流してるでしょ?
ここの監視カメラのデータはもらえたから確認出来てる。」
なるほど、すでに確認済みってことか。
「前みたいに片っ端から、データもらえるか確認に行くのか?」
俺がそう聞くと、種岡は共有しているルートのベンチから数メートルの区間を指差した。
「ひとまずこの区間の監視カメラのデータを当たってみようと思うの。
この辺りのデータならベンチが必ず写ってるはず。
もし写ってなかったら、晴希はベンチに来てないと思う。」
ベンチの周りに集中して調べるつもりらしい。
ピコン
と俺にメッセージが届く音が鳴った。
「あ、ごめん。メッセージ来た。」
種岡に断りを入れ、メッセージを確認する。
『部活の顧問が探してる。』
そうサッカー部の仲間からメッセージが届いた。
「種岡、悪い。サッカー部からの呼び出しだ。
ちょっと行っていいか?」
と尋ねた。
「うん、いってらっしゃい。」
種岡は表示させていたルートを閉じた。
「終わったら、すぐ戻る。」
そう言うと、職員室に向かった。
顧問が探すなんて珍しいと思いながら、顧問を見つけ声をかけた。
「先生!
俺を探してるって聞きましたけど、なんですか?」
顧問は立ち止まり、俺の顔をしばらく見て
「ん?探してる?
あぁ、今日からサッカー部の練習場所、第2グラウンドに決まったぞ。
サッカー部のみんなにも伝えておいてくれ。」
と言った。
顧問は普段から、あまり部活に顔を出さない。
なのに急に口を出して来たかと思ったら、突然の練習場所の変更に驚いた。
「え?なんで?…」
理由を聞こうとしたが、先生は別の生徒の声をかけられ、そっちに行ってしまった。
第2グラウンドは校舎から離れており、移動に時間がかかる。
更に言えば、行くまでに傾斜のキツい坂、通称『地獄坂』がある。
そのため、練習時間が削られると、どの部活からも避けられた場所だった。
納得がいかない。
サッカー部の全員にメッセージを送り、放課後、抗議に行く事にした。
種岡の事を思い出したのは、昼休みを終わりを告げるチャイムを聞いた時だった。
『種岡、悪い。
部活で問題が発生したから、話はまた今度。』
そうメッセージを送った。
『OK』
とメッセージが返ってきた。
それからは、サッカー部の事で頭がいっぱいだった。
放課後、顧問の元へ行き、練習場所の変更理由を聞きに行った。
すると、
「え?お前達から練習場所変更したいって言ってきたじゃないか?」
と返ってきた。
だが、サッカー部の誰一人として、そんな事を言った者はいなかった。
「すぐにでも、練習場所を戻して下さい!」
と抗議したが、すでに他の部活に使用許可を出しているらしい。
しばらくは、第2グラウンドで練習する事になった。
サッカー部の全員、憤りを隠せなかった。
なぜ、勝手に練習場所を変えられないといけないのか?
顧問という名ばかりで、全く役目を果たしていないのに。
そんな考えばかりが巡っていた。
サッカー部全員が、学校から追い出された感があった。
弱小サッカー部だから追い出された。
そんな風に言われてる気がして、逆に俺達を燃え上がらせていた。
弱小?冗談じゃない。
こんな環境でもやってやろうじゃないか!
サッカー部全員一致団結し、こんな練習環境でも、乗り切ってやろうじゃないか!
という雰囲気になっていた。
それからサッカー部は、授業が終わるとすぐに第2グラウンドに向かう。
練習と地獄坂の往復で、毎日クタクタになり、種岡と話す時間が全くなくなっていた。
一週間後、サッカー部の友達と話しながら帰っている時に、
「なぁ、そういえば大地って種岡とよく話してたよな?」
と聞かれた。
「あぁ、仲良いってわけじゃないけど。」
と答えると、
その友達が聞いてきた。
「この間、種岡に告白したやつが事故にあったって噂聞いた?」
「なんだそれ?」
種岡のどこがいいんだと思いながら聞いていると、
「2、3日前に種岡に告白した後に、交通事故にあったらしいんだけど、そいつが誰かに後付けられて事故にあったらしくて、それが晴希の亡霊じゃないかって噂が流れてるんだよ。」
と言い出した。
バカバカしいそんな事あるわけないと思いつつ、ふと思い出した。
そういえば、俺も数日前、誰かに後を付けられていた。
まさかと思いつつ
「その事故にあったヤツは?
無事なのか?」
と聞くと、
友達は
「そいつは足を骨折して入院してるよ。
帰り道にずっと誰かに後付けられて、逃げようとしたら事故にあったって。」
と答えた。
「ただの勘違いじゃないのか?」
と聞き返す。
しかし、噂好きな友達は話を続ける。
「俺もそう思ったんだけど、事故にあったヤツが間違いなく晴希の声を聞いたって言うんだよ?
しかも、そいつだけじゃなくて、種岡と隣の席のヤツも、同じように後付けられたらしいんだ。
だから、大地も危ないんじゃないかと思って。」
その話を聞いて、俺は立ち止まった。
俺だけじゃなくて、他にも同じように後を付けられたヤツがいる。
それは決まって、種岡の周りにいる人間ばかり。
これは、晴希が生きている証拠なのか。
それとも…。
いろいろな考えが巡り、
「なぁ、その事故にあったヤツってどこの病院に入院してる?」
と聞き返していた。




