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雨しかしらない

ご飯の手伝いといっても、野菜を洗ったり、お鍋をかき混ぜたり、お皿を運んだり、ご飯よそったり、私にも出来ることばかりだった。


料理といって構えていたけど、安心して手伝うこと出来た。



そして、みんなで協力して出来たご飯は、今までで一番美味しく感じた。




今まで、この手じゃ何も出来ないと決めつけていたけど、やってこなかっただけで、他にも出来ることがあるかもしれない。


そう思うことが出来た。


そして、なによりみんなが家族ように優しくしてくれるのが嬉しくてたまらなかった。



何かみんなの力になりたい。

そんな気持ちが湧き上がっていた。



次の日から、ほんの少しずつではあるが、おばあちゃんの手伝いをするようになった。



そして、スミくんは毎日話しかけてくれるようになった。


「大丈夫?今日はゆっくり寝れた?」


「今日もお弁当持って来てくれたの?

外暑いけど大丈夫?」


「大丈夫?ご飯食べれそう?」


いつも、最初の挨拶は『大丈夫?』から始まった。

蓮樹くんと一緒で、私を子供だと思ってる感じかな?


そんな心配症なスミくんは、年下だけど、頼れるお兄さんみたいだった。



ある日、また、ピアノの夢を見た。

震えが止まらない。

ひとまず、水を飲んで落ち着こう。


台所へ行って、水を一口飲んだ時だった。


カタっと物音がして、振り返るとスミくんがいた。



また、起こしてしまった。

早く就寝してもらおうと声を出したが、

「ご、ごめんなさい。

起こして…しまって…。

大丈夫…だから、もう寝て…下…さい。」


と震えて上手く喋れなかった


それを聞いたスミくんは


「大丈夫じゃないだろ?

ひとまず、座ろう。」


みんなを起こさないように、小さな声だったが、少し怒った感じだった。


居間に座らされ、毛布で包まれた。


前も同じ事して、迷惑かけたからと思い

「すぐ治まるから、もう大丈夫。」

と言った。



「じゃあ、治まるまでここにいる。」

そう言って、スミくんは少し間隔をあけて座った。


申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

うずくまっていると、スミくんは話だした。


前のようになんてことない、日常の楽しかったことを、ただひたすら喋っていた。


返事を求めるわけでもなく。

聞いているだけで楽しかった。



気が付くと、スミくんの話しに耳を傾け、震えなんて忘れるくらい話に夢中になっていた。



震えも止まり、落ち着いてきた私を見て、


「ちょっと、外に行ってみない?」


スミくんが唐突に言った一言に驚いたが、うんと頷いていた自分がいた。



おばあちゃん家から畑までしか行ったことのない私にとって、外出は大冒険のようだった。



真夜中に歩くなんて危ないかもと思ったが、星空と月が明るく照らしてくれていた。



「晴れてると、こんなにも明るいのね。」

思わず声に出てしまった。



「街灯なんていらないでしょ?」

心が読まれたかのように、私も同じ事を思っていた。



「向こうにいると、気が付かなかったけど、夜空ってこんなに明るいんだ。



俺、向こうにいる時は、毎日頭の中に雨が降ってたんだ。

ザーって音がするんだ。

音は鳴り止まないし、頭痛は酷くなる。


それが当たり前だと思ってた。


でも、トキさんがナノチップ取り除いてくれて、それがなくなった。


雨が止んで初めて、晴れを知った。


そしたら、こんなに綺麗な星空が見えた。



向こうで過ごした雨の生活も、無駄じゃなかったかなって思えて来たんだ。」



スミくんがナノチップや、向こうでの出来事を話したのは初めてだった。


いつも、トキさんや蓮樹くんの出来事、私とスミくんの共通話題ばかりを話してくれるが今は違った。


だからこそ、気になった。


「どうして、辛い日々なのに無駄じゃないって思うの?」

そう聞いていた。


スミくん私の顔を見て、笑顔でこう言った。

「いつも雨が降ってたから、晴れの有り難みがわかるんだ。

両方知ったからこそ、それぞれの良さがわかるんじゃないかな?


雨しか知らなかったら、晴れの喜びを知れないんだ。」


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