天国に雨は降る?
俺は死んだんだ。
誰にも信じてもらえず、何を言っても、聞いてもらえない。
情けないな。
もっと勉強しとけば良かったのか?
もっと信頼のある顔しとけばよかったのか?
そもそも信頼のある顔て何だよ?
あーもう、バカバカしくなってきた。
死んでしまったらどうでもいいや。
あの世で好きに過ごそう!
最期って思うと、みんなに普段から感謝しとくんだったな。
母さんは文句言いながらも朝起こして弁当作って。いつも優しかったな。
父さんは小さい頃は良く釣りに連れてってくれて楽しかったな。また一緒に釣りしたいな。
大地はいつも一緒に話して、ふざけて、あんなに気の合うやつ他にいないよ。生涯の親友だな。
あと、…舞華…。
しばらく思考が止まった。
怒った顔、泣いた顔、笑ってる舞華の顔が次思い出されてくる。
これ以上思い出したヤバい。ダメだ。
そう思った時には、思わず叫んでいた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁー!」
その声に自分自身が驚き体が起き上がる。
目を開くとそこは見たこともない部屋だった。
俺は敷布団の上に上半身起き上がった状態だ。
辺りを見渡すと木造の古い家のようだ。部屋全体は10畳位だろうか?
窓はなく、代わりに左側と正面にふすま、右側には障子で仕切られている。そこから外の光が薄く差し込んでいる。
その光で十分明るい為、天井から吊ってあるいかにも昭和って感じの丸い蛍光灯は灯いていない。
畳の上に敷布団が敷いてあり、そこに寝ていた俺。服も学校の制服ではなく、着物を着ていた。
死んだらこんなレトロな感じなんだ?
と疑問に感じ腕を組み、首を傾げていると、
左側のふすまから
「起きたのかい?開けるよ?」
と少しゆっくりとした口調の優しそうな女の人の声が聞こえた。
声がするなんて思いもしなかったから、驚いた。
そして左の襖に目をやると少しずつ襖は開き奥から60代くらいだろうか?少しやつれた年配の女性が入って来た。
「気分はどうだい?どこか悪い所はないかい?」
心配そうに聞いてくれた。
地獄に行くのかと思っていたから少し安心した。普段の行い良かったのかな?
「あ、はい。大丈夫です。」
「そうかい。なら良かった。もし何か食べれそうならご飯あるけど食べるかい?」
「え、あ、、はい。」
幽霊ってご飯食べるんだ。言われるとお腹空いてきたしな。
「じゃあ、準備するからもう少し横になっていなさい。」
「え、あ、あの、」
「ん?どうしたんだい?」
「あの、俺生きてた時は日高 晴希って名前で高校生でした。ここは天国なんですよね?地獄じゃなさそうだし。俺はこれからどうしたらいいんですか?」
年配の女性と俺の間に沈黙の間が流れる。
「ぶっはははははははははは」
と大爆笑の声が聞こえた。
それは年配の女性の声ではなく、若い男の声だ。
すると、反対側の障子がガラッと開いた。
そこには俺と同い年位の男が腹を抱えて笑っていた。他にも2~3人立っており笑いを堪えていた。
「ふ、はははは、お前、最高だな!あははははは」
大爆笑している同い年位の男子。
「ちょっと、そんなに笑ったら失礼よ、ふふ」
失礼とか言いながら自分も笑ってる20歳前後の女性。
「天国て(笑)」
鼻で笑う様に天国をバカにした20歳位の男性。
「なになに?僕わかんないー。」
その横で小学生位の男の子が、なにが面白いのかと20歳位の男性の服の裾を掴んで聞いている。
それぞれに思い通りの言葉を放つ。
何だこれは。
ここは天国じゃないのか?
じゃあここはどこなんだー!!