恐怖の時雨
「どんな重罪を犯したんだ。」
ヘルメットを押し上げ、眉間に銃を当てたまま、おじさんは続けて聞く。決して目をそらす事なく真っ直ぐ見てくる。
この状況をのみこめず硬直する体。
頭に銃突き付けられて冷静でいられる人などいるだろうか?
恐怖で固まっていると、おじさんは続けて言う。
「重罪だから、殺人か?そんな顔に見えないのにな。」
「…し、してない…。」
怯えながらも答える。何もしてないのは事実だ。
「犯罪者はな、みんなそういうんだよ。俺はやってない。信じてくれ。そして油断した隙にこっちが殺される。人を騙すならもっと上手くやれ。教科書通りで笑えるな。」
何故だ。本当の事を言って信じてもらえない。
「本当にやってないんだ!いつも通り学校行って帰りに電車に乗ろうとしたら発光しだして。そうだ、学校の友達に…大地に聞いてくれてもいい!俺の性格も知ってるし、一緒にいた!大地なら知ってるから!」
とにかく証明しようと、思い付く事を言う。
ここまでしないといけないのか。無実を認めてもらうって、こんなに大変なのか?
俺が持ってるモノってなんだ。俺の武器は?人を言い包めるだけの説得力なんてない。
赤の他人から見て俺はどう見える?どこにでもいる高校生でも発光してしまえば、何を言っても、どんな身なりをしてようが見てくれないのか?
悔しい。惨めだ。情けない。心が壊れそうだ。その思いが涙として溢れてくる。
「なんだ。今度は涙か?それも教科書通りだよ。」
カチャリと銃のロックが解除された。
もう終わりなのか?
なんで信じてくれないんだ?
そもそも俺の話さえ聞いてないじゃないか!
それで俺の何がわかるんだよ!
誰も彼も見た目でしか判断しないのか!
そんな思いが込み上げて目に力が入る。
涙を流しながらも強くきつく睨みつける。
「何と言われようと俺は何もやってない!!」
パァーン
トンネル内に響き渡る銃声。
その目を見た瞬間、おじさんは迷いなく打った。