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雨降って地固まる

吸収出来るものは全て吸収したい。

その気持ちだけが先走っていた。


夏の大会が終わった後、3年生が引退し、部員が更に減った。


人数が少なくても、四六時中一緒に練習する事で、自然とお互いの事が手に取るように判るようになっていた。


その家族のような関係が俺達を更に強くした。


俺は更に自主トレを増やし、あらゆるチームの試合動画を見た。



強いチームはどんな戦略をしているのか。

どんな技術を持っているのか。



知らない事があればすぐに取り入れた。



毎日野球の事ばかり考える。

体を鍛える。

周りから野球バカだと言われた。

自分でも、本当にそうだと思った。


それでも飽きなかったし、むしろどんどん好きになっていった。

いかに外野を上手く守るか、長打を打てるか、考えるのが楽しくて仕方なかった。


俺が一人でトレーニングをしていると、自然と仲間も参加するようになった。


試合動画もみんなで共有する事で、新たな戦略が生まれる事もあった。



そうしてあっという間に一年が過ぎた。


2年生の夏の大会。

リベンジを果たすために頑張って来た。

今年は1年生があまり入ってこなかったため、部員11人だったが順調に勝ち進み、前年と同じ対戦が叶った。



彼は去年と同じ1番バッター。

去年のようには打たせない。

その思いが部員全員にあった。


体力もつけ、戦略も学んだ俺達は自信に満ち溢れていた。


序盤で俺達は1点先取。

相手チームは出塁しても、得点には繋がらなかった。


1-0で迎えた7回。


前回は、ここで相手ピッチャー交代だったが、今回は続投した。


流れはこっちにある!

このままなら勝てる!

俺達はそう思っていた。


彼の打順がまわってきた。

俺達全員、一気に警戒心が高まる。


何がなんでも打たせない。

『ここでホームランを打たれるよりは』と、フォアボールで出塁させ、他のバッターでアウトを取る事にした。


もちろん、他のバッターも強いのは充分承知している。


外野にいる俺も、それぞれのバッターに合わせて守備を変える。

ここを乗り越えて、俺達は先に進むんだ!


チーム全員そう思っていた。



2アウト1塁、2塁。

4番バッターは抑えた。

あと一人でこの回は終わる。

前回、ここから展開が変わった。

もう流れは渡さない。



その闘志で相手からアウトを取った。


無事に魔の7回を終えた。


勝てる!去年のリベンジが出来る!

俺達全員に希望の光が見えてきた!


勝てると自信がついた俺達は8回表に追加点を入れ


2-0と差を広げた。


裏の攻撃も順調に抑え、最後の攻撃を守るだけだ。


9回表、相手もこれ以上点数を入れまいとピッチャーを交代。

俺達は三振に終わった。


だが、9回裏守りきれば勝てる。

絶対勝つぞ!チーム全員一致団結していた。



相手チームは、先頭打者を交代させベンチの選手を出してきた。

きっと、バントで出塁させ、次の1番バッターからの長打にかけるんだろう。


守りを少し前衛にする。


そこで相手バッターは、バントの構えをする。

やはり、読み通りか。

簡単に出塁させてたまるか!


俺達この一年、戦略だって叩き込んで来たんだ!

全員が考え、バッターに合わせた最善の守備を作る。


ここでまず1アウトを取って…


そう思って前寄りに守備をしていた2球目。


バントの構えからバットを持ち直し、カーンと外野へ飛ばし2塁打となった。


俺達はバントと決めつけて守備が前寄りになっている所を狙われた。



大丈夫だ。

まだ点数が入ったわけじゃない。

全員、目を合わせ

「自信持って行こうぜ!」

そう心の中で言い、頷いた。



1番バッター、彼の順番が来た。

前の打席だって抑えたんだ。

何も恐れる事はない。


長打に備え、守備を固める。


一球目、彼に迷いはなかった。


カーーン


球場に響き渡る快音。


誰もがボールを追い空を仰ぐ。


長打に備え守備をしていた俺はボールを追いかけ走る。

どこまでも続く。

まだ追いつかないのか?

最後には球場の壁にぶつかり、ボールには追い付かなかった。



見事なホームランだった。



会場は大きな声援に包まれたそうだが、俺達の耳には入ってこなかった。



一瞬現実が受け止められなかった。



そのまま流れを相手チームに持って行かれ、サヨナラ負けだった。



悔しい。

俺達全員の全力で敵わないのか?


「なぁ、俺達全員でも敵わないのか?

これって悔しくないか?

勝つまでやりたくないか?」


涙が止まらないままだったが、俺達には目標を倒すまで下を向くわけには行かなかった。






負けてからは、時間がいくらあっても足りなかった。


どれだけ鍛えても、戦略を叩き込んでも追いつけない気がした。


明確な目標がある事は有り難いが、どこまでも距離が縮まらない感じがして、焦っていた。


俺は3年生になり、野球部のキャプテンを任された。

他にも最適者はいるんじゃないか?と言ったが満場一致で決まった。

自覚はなかったが、俺が野球にのめり込む程、みんなも感化されて、一緒にポテンシャルを上げていた。

その引っ張っていく力をみんなが認めてくれた。



そして、新しく1年も入り、部員総勢18人。

仲間も増え、俺達は更に上を目指して部活に励んだ。


そして、この年、俺はホームランを連発した。

今までのトレーニングで体がしっかり鍛えられた事。

また、フォームやボールの見極めなど、培ってきた事が技術として開花した。



俺達のチームは、去年の大会の結果と、俺のバッターとしての評価が広がり、今年は優勝候補として県内で知れ渡っていた。



中学最後の大会。

俺達もシード校となり、彼らとは決勝で対戦する事になった。



彼は4番バッターだった。

そして、俺も4番バッターとして出場した。


向こうも警戒しているようで、ピンチになればすぐに選手交代や代打、代走を使い、あらゆる戦略で勝とうとしてきた。


しかし、こちらも人数増え、交代出来る選手

がいるという心の余裕と、今まで厳しいトレーニングや多くの戦略を学んで来た分、簡単に負けるわけにはいかなかった。

むしろ勝つためにやって来たんだ!



初回から俺はホームランを打った。

勝ちたい相手に打つホームランは格別だった。

でも、これだけじゃ足りない。

俺が打ちたいのは、会場全員を虜にする、そんなホームランだ。


試合は7回になり、3-2で勝っていた。


これまで、試合後半で点数を取られていた俺達は今まで以上に警戒する。


決勝という事もあり、お互い緊張感が高まっていた。

これに勝てば全国!

両チーム、譲れない、負けてたまるか!

その思いが強かった。


7回の裏。相手の攻撃。


彼がバッターボックスに立つ。



お互いの緊張が伝わる。

打つ!

守る!

その攻防を制した方が勝つ。


そして、カーンと快音が響き渡る。


外野ゴロとなる。

そこから打線が続き


3-3の同点となった。



そして、9回表、俺達の最後の攻撃。


俺の順番が回って来た。

バッターボックスに立つ。


客席から応援の声が聞こえる。

ベンチからみんなの声が聞こえる。


こんなにも多くの人に支えられてる。

自分一人じゃ叶わなかったが、みんながいる事でこんなにも強くなれた。


その期待に応えたい。


その瞬間、ピッチャーの投げたボールがスローモーションのようにゆっくりに見えた。


ここだ!



カーーーン



会場は一瞬静まり、球場全員がボールの行方を追う。


ボールは、まさに空を翔けるように綺麗なアーチを描き客席吸い込まれていった。


まさに俺が打ちたかったホームランはこれだ!!


拳を天高く振り上げ、グランドを一周する。

帰った先には、仲間全員が大喜びで迎えてくれた。


4-3。

勝ち越しに成功した。


そして9回裏。相手の攻撃。


2アウト。


バッターボックスには彼が立った。

いつも、ここで打たれていた。


でも、いつもの俺達じゃないんだ!


ピッチャーが投げたボールに彼が反応し、


カーンと音が響く。



ボールは伸びていく。

俺は瞬時に判断し、ボールを追いかける。

そして、ボールはグローブに収まる。



初めて、彼を自分の手で抑えられた。

グローブに収まったボールの重みは、手にずっしりと伝わってきた。

こんなに重い打球だと初めて知った。



試合終了。


初めての彼に勝利した!!

そして全国だ!!!



マウンドに全員集まり歓喜した!

今までやってきた事は間違いじゃなかった!

やっぱり野球って面白い!!


何より、自分の打ちたかったホームランで決勝点を入れられた事!!


もうこれ以上の喜びはなかった!!!


野球小説みたいになりました。

おかしいな。

次回もちょっとだけ続きますが、ちゃんと晴希戻って来ますのでご安心を。

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