雨があがり水たまりが残る
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「廣田くん、ちょっといい?」
昼休みにそう言って引き止めたのは、種岡舞華だった。
俺、廣田大地は、晴希と中学で同じクラスで部活も一緒。自然と仲良くなり、いつも一緒に行動していた。
そこに話しかけにくる種岡は、お互い《晴希》という共通点があるだけで、特別仲がいいわけではなかった。
晴希の葬式の日に
「晴希が犯罪者なんておかしい。
自殺なんて信じられない。」
と言った種岡と同じ思いだった。
晴希が犯罪者扱いされてから種岡は、晴希の家族を匿ったり、晴希の家の落書きを消したり、投げ込まれたゴミを片付けに行っていた。
それもいたちごっこのように毎日繰り返されるが決してやめなかった。
種岡は毎日部活と晴希の家の片付けで忙しそうにしていたので、会話するのも葬式以来だった。
まぁ、そもそも晴希がいなきゃ種岡は話しかけにこないから、以前とたいして変わらないか。
「どうした?」
話しかけて来るという事は、晴希の事だろう。
「いいから来て」と、人の少ない校舎の裏庭に場所を移動させられた。
辺りに人がいないのを確認すると、
「晴希は死んでない!」
種岡は開口一番に言い切った。
あまりにも自信満々に言い切るので、呆気にとられた。
「信じたくないのはわかる。
でも、晴希の葬式だってしたろ?
今更…」
と言いかけた時に、種岡は被せて話だした。
「晴希の遺体が見つかったわけじゃない!
それにGPSのデータが消失したってだけじゃない!」
俺だって晴希が死んだなんて信じたくない。
あれだけ気の合う友達は他にいない。
だから、種岡の言いたい事は判る。だが、
「なんで今更そんな事言うんだよ?
GPSが反応ないって事は、晴希は生きてない。
生きてたら必ずGPSでもメールでもデータが反応する。
データが消失=死を意味するのはわかってるだろ?
反応がないって事は…。
俺だって信じたくない!
でもこれは事実なんだ。」
説得するように種岡を見るが、
信じない!そう目が訴えていた。
その目に負けてしまった。
はぁー。
と俺はため息が出る。
「何の自信があって生きてるって思うんだよ?」
単に好きなヤツが死んだなんて信じたくないんだろ?
根拠なんてないのにその自信はなんだ?
何故葬式も終わった今、言い出すんだ?
そう思っていた。
その一言を聞くと、種岡はにんまりと笑みを浮かべ、
「さすが。廣田くんならわかってくれると思った!」
……いや、何もわかってないが?
「今まで友達に言っても、可哀想な目で見られて『現実受け入れたくないんだね』って、誰も話も聞いてくれなかった。
みんな晴希が犯罪者だって思ってる。
晴希の事何も知らないのに、発光者ってなった途端態度が変わったの。
でも、廣田くんは晴希が犯罪者じゃないってわかってる。
だから私の話をわかってくれると思って!!」
確かにそうだ。
晴希は犯罪を犯すようなヤツじゃないし、自殺するようなヤツでもない。
『発光して、川に飛び込んで死んだ。』
そう聞いた時は違和感しかなかった。
とはいえ、
それが何故生きてるってなるんだ?
俺の疑問に答えるように、種岡は話を続けた。
「データが消失=死は私も知ってる。
何回もGPS探したし、メッセージも送った。
だから、諦めてた。
もう晴希はいないんだって。
でも、おばあちゃんが
晴希らしい子を見たって言うの。
雰囲気が似てたって。
おばあちゃん、晴希が小学校の時に数回しか会った事ないし、顔は確認出来なかったって言ってたから、家族みんな、おばあちゃんがボケたかもしれないって心配してる。
でも私には、そうは思えなくて。
近所を探してみたの。
そしたら、これが置いてあった。」
そう言って
種岡はポケットからハンカチに包んだ花を見せた。
どこにでも咲いてそうな小さな花。
それをとても大事にしていた。
その花が何だって言うんだ?
全く話が見えない俺に、種岡は話を続けた。
「小学校の頃、晴希と一緒に登校してたんだけど、日直で晴希だけ先に登校しちゃって。私、晴希をずっと待ってて遅刻した事があったの。
その時、先に行く時は待ち合わせのベンチに目印を置いておくって約束したの。
そして、おばあちゃんが晴希らしい子を見た日、ベンチにこの花が置いてあった。
これは絶対に晴希が残してくれたメッセージだと思うの。
『俺は先に行く』
って。」
いくらなんでも偶然じゃないのか?
雰囲気が似てる子を見たってだけで、顔を確認したわけでもない。
それに、花なんて誰でも置ける。
たまたま置いただけかもしれない。
なのに、あまりにもその花を大切そうに見つめている種岡。
『勘違いじゃないのか?』とは言えなかった。
「それで、種岡はどうしたいんだ?」
その言葉を聞き、種岡は俺に
「晴希を探したいの。」
迷いなく言った。




