雨粒から波紋が広がる
望月さんの言葉が上手く入ってこなかった。
言葉は理解出来るが、頭では理解出来なかった。
「なぜだ?ナノチップに不具合が出たら交換したらいいじゃないか?」
機械は交換したらいいんじゃないのか?
そんな単純な疑問をぶつけてみた。
「そっから先は俺が説明する!」
望月さんではない声が返ってきた。
ガラッ!
部屋の引き戸が勢い良く開いた。
その声と音に全員が驚き、開いた戸へ視線が向いた。
そこには、息を切らせた時任のおっさんが立っていた。
「よかった。みんな無事だな。」
急いで来たのか、相当息が荒い。
「「トキさん!!!」」
俺以外の全員はおっさんの姿を見ると安心した表情をしていた。
いや、俺の疑問はどこ行った?
おっさんの登場にぜんぶ持っていかれてるじゃないか。
ちょっとふてくされる。
肝心のおっさんは戸を閉め、疲れていたのか、そのまま座りこんだ。
「すまんな。俺が詳しく説明してなかったからな。」そう俺に謝って来た。
そして、そのままみんなに話し始めた。
「スミ、みんなを連れて来てくれてありがとう。
みんなも協力してくれてありがとう。」
そう言ってみんなに頭を下げた。
そして、おっさんは俺の方を向き
「晴希、お前には説明しないといけない事がある。」
真剣な顔で話始めた。
「お前が帰ろうとした世界は、政府がナノチップで支配した世界だ。」
何言いってんだ?
おっさんが真面目な顔で訳のわからない事をいい始めた。
そう思っていた。
だが、おっさんは真面目な顔で続ける。
「そもそもナノチップは政府が広めた国民管理ツールだ。
生まれたらすぐにナノチップを埋め込み、製造番号で管理する。
それと共に、個人情報も全て把握する。そんな代物だ。
買い物履歴から成績情報、行動パターン、思考パターン、プライバシー全て管理されてる。
もちろん国民は、プライバシーまでもが管理されているなんて一切知らない。
世の中には『便利で安全で必要なもの』そう謳って浸透させ、義務化する。
ナノチップがないと生活出来ないように、生活環境をナノチップ対応にしていく。
キャッシュレス、通話、メール、ニュース、学校の教科書もデータ化されてんだろ?
安全で便利だと分かれば広がるのは早い。
そこは上手くやったと思う。
だが、体内に、しかも脳に機械を埋め込むなんてリスクしかないんだよ。
どんだけ小さくても体内にとっては異物である事に変わりはない。
そして、ここにいるみんなのようにチップが破損したり、停止したり、初期不良が起こったりする。
体に異常が現れる可能性を知っておかなければならない。
なぜ、政府はそれを知らせないのか。
ナノチップで獲られる収益と個人情報の把握、両方が政府にとってメリットしかないからだ。
ナノチップが国民にリスクがあるとわかれば装着拒否をされる事がある。
ましてや、プライバシーが管理されてる事が分かればデモどころか暴動、反乱が起こる。
だから、それが知られないように、俺達のようなナノチップの故障や不具合者が見つかると処分されてしまう。
だから、全員ナノチップを破壊、もしくは停止させて死亡したかのように見せかけて、こっちで生活してるんだ。」
突然の情報量に頭がついていかない。
何、異世界ファンタジーみたいな事言ってるんだろう?
だが、他のみんなの反応が嘘だとは思えなかった。
そしておっさんは
「まさか、晴希がばあちゃん家から抜け出して戻るとは思ってなかった。
それは俺の誤算だったよ。」
はぁ〜と頭を抱える。
そのまま話続ける。
「晴希が向こうで目撃されてる。生きてる事がバレてしまった可能性がある。
晴希が生きて事が分かれば、追跡され、ばあちゃん家から向こうの世界までのルートが把握されてしまう。
だから、あのルートは封鎖した。
そして、もうばあちゃん家に戻る事は出来ない。」




