雨から逃げる
突然水中に入ると思ってなかった俺はパニック状態だった。
手足をバタバタと動かし、呼吸が苦し……くない?
「大丈夫か?晴希」
空翔が話しかけてきた。
ん?水中だぞ?
空翔の方を向くと、水中なのに呼吸も会話も普通にしている。
「え?なんで?」
と混乱してる俺もつい声がもれる。
「さっきつけたコレのおかげで呼吸も会話も普通に出来るんだよ。」
と泳ぎながら空翔が鼻の辺りを指さし、答えてくれた。
そして急ぐように
「驚いてる場合じゃないんだ。とにかく急ぐぞ!」
と言った。
空翔のあとをついて泳ぎ、見慣れた田舎の風景まで戻って来た。
川から上がり、さすがに体力の限界と横たわっていると
「大丈夫か?」
と空翔に覗き込まれた。
「いや、もう限界…」
息も上がり応えるのがやっとな程だった。
さすが空翔は体力無限大かよと思いながら呼吸を整える。
呼吸は出来るとはいえ、水中を泳ぐという事は全力疾走で走ったようなものだ。
散々街中を走り回った俺には動く体力が残ってなかった。
「空翔、無事か?」
そこに聞き覚えのある声が聞こえて来た。
望月さんの声だった。
「はい!俺は大丈夫なんだけど、晴希がもう限界みたいで。」
「とにかく、ほらタオル。」
望月さんは空翔にはタオルを手渡し、俺にはタオルで体を包んでくれた。
泳いで冷え切った体がくるまれ温かかった。
「風邪引くと大変だからな。」
その言葉が嬉しかった。
勝手に居なくなった人間の体調を心配してくれる優しさに涙が出そうになった。
「悪い晴希、あそこまで動けるか?
時間がないんだ。」
望月さんはそう言うと、その先には車が止まっていた。
そこにはばあちゃんも蓮樹も奏さんも乗っていた。
帰って来たのに何を急いでるのか?と思いながら、二人の肩を借り車に乗りこんだ。
俺達を乗せた車は、望月さんが運転しすぐに発進した。




