悔しい雨
あの角を曲がったら、もう家は目の前だ。
気持ちが早まるのと同時に足も自然と軽くなる。
やっと家に帰れる!
俺の居場所に!
希望の光が目の前に。
満ち溢れた気持ちで角を曲がる。
しかしそこには見なれない景色だった。
家は落書きだらけで、周囲にはゴミが散乱し窓ガラスは割られている。
出ていけ
殺人犯
地域の恥
など心無い言葉がスプレーで書かれている。
「なんだこれは…」
さっきまで心踊り走っていた足が急に止まり、その場に崩れ落ちた。
希望としていた光がなくなってしまった。
ここに帰れば自分の居場所があるって、ここだけは自分の味方だって思ってたのに。
まさか自分が家族にこんな状況に追い込んでいたとは。
苦しんでいる間、俺は何もせずに家族なら無条件で迎えてくれると思っていた。
でもこの状況はなんだ?
見るも無惨な光景に、温かくお帰りって迎えてくれるはずないだろ。
そもそも、死んだはずの俺とは家族は関係ないだろう。
死んだはずなのにこの仕打ちだぞ。
無実なのに犯罪者扱いされて、死んだ後も家族に迷惑かけてちゃ
「とんだ親不孝者じゃないか。」
半分笑いながら涙を堪えた。
俺は泣いたらダメだ。
泣く資格はない。
ただ、何も逃げてノウノウと暮らして畑仕事に文句言ってただけだ。
とにかく悔しかった。
何の力もない自分に。
犯罪者という情報だけに振り回される世間に。
帰ったら自分の場所があると思っていた自分に。
この状況を頭の片隅にも考えてなかった自分に。
「クソっ」
思いっ切り地面に拳を振り落とす。
地面には跡形も残らず、ただ自分に痛みが返って来るだけ。
「何やってんだよ。俺は。」




