雨を止める方法
いつでも邪魔されることなく調べることが出来るようになってからは、時間なんか気にしなくなった。
ひかりは今はどこにいるのか?
パソコンでも調べたが、親の目もあるため、あまり詳細までは調べられなかった。
しかし、ナノチップを装着してからは、気にせず全て調べられる。
あんなにナノチップが怖かったのに、便利さを知ってからは、僕はナノチップにのめり込んでいった。
毎日ナノチップで調べていると、みるみるうちに使いこなせるようになっていった。
自力で全てを調べるのには時間がかかる。
だから、検索機能を少し操作し、自動検索機能を開発した。
寝ていようが、誰かと会話していようが、無意識でも勝手に調査を進める。関連記事はもちろん、周辺情報、SNSの些細な書き込みまで全て拾い上げ、あらゆる可能性を探知し自動で原因を突き止める。
その機能で検索を進めつつ、自分は更にナノチップ機能の向上をさせていった。
ただ、検索途中で『これ以上進めません』とエラーが出る時があった。
それは決まって政府機関のデータへ潜入する時だった。そりゃ国家機密に入り込もうとする侵入者がいれば弾かれるのは当たり前だ。
しかし、あからさまに『政府は安全な事しかしていないので調べない下さい』と言われても疑いたくなるものだ。
ナノチップに関してメリットしか掲げていない時点で違和感を抱くのは僕だけでないはずだ。
それに、ひかりのことを調べていると、どうしたって政府関係に行き着いてしまいエラーが発生する。
つまり、ひかりは政府に関係していたということだ。政府について調べてみた。
もちろんいいことしか出てこない。
無敵の性能、無敵のセキュリティ。
そんなものがあるなら、ひかりの居場所なんかすぐにわかるはずだろ!
どこが無敵だ!
無敵のセキュリティ。
そこまで言うなら、その自信を利用しようと思った。
セキュリティは確かに破れなかった。
しかし、突破しなくてもすんなり入れる人がいるじゃないか。政府関係者だ。
政府関係者になりましたら内部に入れるんじゃないか?
そこから、政府と全く同じシステムを作りあげた。
すると、セキュリティをあっさり突破し、内部資料まで閲覧出来るようになった。
そしてわかったことは、ひかりの両親は政府に依頼され、ナノチップの量産をしていたシステムエンジニア。
両親がナノチップに関わっていたことで、ひかりはナノチップを装着することになった。
しかし、装着してなにか異常が起きたんだろう。拒絶反応なのか、動作不良なのかはわからない。
それにより、ひかりは意識を失い救急車で運ばれたが、もう手遅れだった。
それが原因で、ひかりも両親も政府から消されたいうことだった。
内部資料には、世の中に知られていないナノチップの不具合、事故などが全てが記されていた。
難しい言葉で淡々と書いてあったが、それは子供の僕でも政府がいけない事をしているのは明らかで、知らない方がいいことばかりだった。
だが、子供が喚いたところで、消されるだけだ。
何か手はないかと思った時に、ナノチップなんかなくしてしまえばいいと思った。
国民全員の頭の中から取り出す事は出来ないのか?
それを調べるために、ナノチップの仕組み、ナノチップはなぜ開発されたのか?
なんのために国民装着義務になったのか?
ナノチップの事を詳しく調べはじめた。
そこで初めてトキトウという名前を知った。
今度はトキトウの事を調べ始めた。
何故、こんなモノを作ったんだろう。
すると、トキトウは身体の不自由な人のためにナノチップを開発したことを知った。
この人は今、どうなっている?
政府に消されたのか?それとも、今も政府に協力しているのか?
政府の内部資料では、トキトウの行方は書かれていなかった。
このトキトウに会えたら、ナノチップを取り外せるかも知れない。そう思った。
しかし、そこに辿り着くまで、10年かかっていた。
トキトウは、もう政府に消された可能性が高い。と諦めていた。
他に政府の資料から、ナノチップを取り出せる方法は載ってないのか?と探していると、今も不具合が出ていることがわかった。
この不具合者達が、ある建物に集められ消されている。
もし、そこでナノチップを取り外しているんだったら、取り出す方法がわかるはずだ!
それからは、不具合者が集められるいう建物近くの防犯カメラを全て傍受した。
数日、その防犯カメラを確認しているとおかしなこと気がついた。
防犯カメラの映像に細工しているところがあった。
よく見ないとわからないが、わずかに影が切れている場所があった。
それは決まって同じ場所だった。
まるで、そこに誰か立っていたかのような切れ方だった。
こんなこと出来る人がいるのか?
そもそも、この政府の建物に近付くということは政府の人間に違いない。なのに、なぜ防犯カメラの映像を細工する必要がある?
これは現場に行ってみないとわからない。
そう思い、建物の近くに来てみた。
防犯カメラの映像はリアルタイムで監視し、もし怪しい人物がいたら、その人を顔認証で特定したらいい。
そうすれば、誰かすぐにわかる。
もし、政府がカメラ映像を細工しなければならない程、危険なことをしているなら、一刻も早く突き止めなければ。
これ以上犠牲者を増やしたくない。
自分の姿を防犯カメラの映像から消去させ、しかも、自分の姿を目撃されないように注意しないと意味がない。
それに、その人物が都合よく今日現れるかもわからない。
緊張感が走る。
GPSで周囲に怪しい人がいないか、警備ロボットが近付いていないかもチェックする。
特に変な動きをする人はいない。
それよりも警備ロボットの数が多くて、目撃されないように隠れる方が大変だった。
これじゃあゆっくり待ち構えていることも出来ない。
警備ロボットの視界から離れようと後ろを振り返った瞬間、
ドンッ
と人にぶつかった。
お互いに驚き、
「びっくりしたー。
こんなところでうろついてたら危ないぞ。
さっさと帰りな」
とおじさんが言った。
僕も
「すみません」
と言って、警備ロボットから逃げなければと慌てていた。
GPSで警備ロボットの場所を確認した。
すると、違和感があった。
あれ?待てよ?
GPSには、周辺いる警備ロボットも人も全て感知し表示されるはずだ。
なのにさっきの人は、このGPSに表示されていない。
どういうことだ?
顔認証にかけようと防犯カメラの映像を見てみるが写っていない。
映像にもGPSにも反応しないなんておかしい。幽霊?いや、確かにぶつかった。
あとを追うことにした。
おじさんは、建物の近く行き、中の様子を伺っているようだった。
そのおじさんの顔を見て、ようやく誰か思い出した。
おじさんは建物を離れ、人気の少ない道へ逸れた。
警備ロボットも近くいない、これは今しかないと思い、おじさんの背中に向かって
「トキトウさん」
と声をかけた。
すると、おじさんは驚いた様子で止まり、ゆっくり振り返って僕の顔を確認した。
「誰だ?お前は」




