水分が集まって雲になり、雨が降る
舞華もひとり、闘っていた。
前から急にライトに照らされ
「まぶしっ」
それ以降、みんなの声が聞こえない。
「みんな大丈夫?」
誰の反応もない。
「ねぇ、誰か返事して!」
しかし、奥から違う声が聞こえてきた。
『同じもの求められても出来ないよ』
その声は聞き覚えがあった。
小さい頃から踊るのが大好きだった。
音に合わせて体を動かし、表現することが楽しくて仕方がなかった。
中学一年生の頃、クラス対抗で出し物をすることなった。
私はみんなでダンスがしたい!と提案をし、それに決まった。
私はダンスが出来るいうだけでも嬉しかったのに、みんなで出来るということに更に喜びが増していた。
みんなにも、この楽しみを知ってもらえるんだとワクワクが止まらなかった。
曲も決まり、振り付けも私が考え、みんなに教えていくことになった。
最初は、みんな頑張って覚えようとしてくれていた。
しかし次第に、
「舞華ちゃん、ちょっと待って。そんな風に出来ないよ」
「難しいね、どうするんだっけ?」
「全員で合わせるなんて無理だよ」
と弱音が目立つようになってきた。
「みんなで出来たらすごいんだよ?だから頑張ろうよ」
と言っても、苦笑いしか返って来なくなり、練習するクラスメイトがだんだんと減って行った。
そして、最後には誰も練習に来なくなった。
クラスのみんなを捜しに行っていると、
「舞華ちゃんはダンスが上手いから出来るけど、私達は無理だよ。なのに同じレベルを求められても出来ないよねー」
「練習すればっていうけど、さすがにあんな難しいの覚えられないよ」
「出来ればカッコいいっていうけど、舞華ちゃんの当たり前を押し付けられてもね」
などと話している声が聞こえた。
みんなで力を合わせて出来ると思っていたのに、みんなも楽しんでいると思っていたのに、みんなで完成させた時の喜びを知りたかっただけなのに、私ひとりで空回りしていたのにようやく気がついた。
その日は家にも帰りたくなくて、公園のブランコにいた。
だんだんと夕焼けが沈んでいき、辺りが暗くなろうとした時、サッカー帰りの晴希が現れた。
「舞華どうしたの?家に帰らないの?」
晴希の眼差しが優しくて、さっきまで言われてたことが悔しくて、ひとり除け者扱いされた寂しさが、涙となって溢れてきた。
ポロポロと目から流れたのを見て、晴希は黙って隣のブランコを漕ぎ出した。
何も聞かずに、ただブランコをゆっくり漕ぐだけだった。
キィキィと鳴る軋む音に、私の泣き声がかき消されていく。
「ねぇ、晴希。
もし友達がサッカーやりたくないって言い出したらどうする?」
「じゃあ、サッカーじゃないのやる!」
「でも、サッカーグランド集合でサッカーボールも持ってきたのに、それでもやめるの?」
「うん。だってサッカーはみんなのコンビネーションが大事なんだ。ひとりでもやりたくないの無理しても楽しくないだけじゃん」
その言葉に追い打ちをかけられたかように、更に涙が止まらなかった。
晴希はその涙に少し驚いていたが、
「なんでやりたくないか聞いた?」
と聞いてきた。
「難しいんだって、、私と同じようにするのは無理だって、私の当たり前を、、押し付け、、ないで、って、、」
泣きながら一生懸命伝えた。
すると晴希はブランコを降り、私の前に来て
「舞華は伝えた?自分の気持ち」
私に目を見て真っ直ぐ言った。
私も晴希の目を見て頷いた。
「じゃあ、相手の気持ち考えた?」
「相手の、、、気持ち?」
「俺、サッカーするとき仲間がどこにパスをもらったら嬉しいかを考えるんだ。
そして、パスが上手く通って、ゴールに繋がった瞬間すごく嬉しいんだ。
だから、サッカー以外の時も、相手が何を考えてるか、どうしてほしいか考えてみるんだ。それでもわからない時は聞いてみる。そして自分の気持ちも伝える。」
「みんなレベルが高くて無理だって言ってた」
「じゃあ、そのレベルを下げたらいいんじゃない?」
「そしたら、カッコよくない!」
「舞華はカッコいいのがいいの?」
「みんなで揃ったらカッコいいから、完成したらみんな喜ぶかなって」
「じゃあ、みんな喜ぶカッコよさにしたら?」
「みんな、、喜ぶ、、カッコよさ???」
「舞華の言うカッコいいって何?」
「ダンスに切れがあって、全員揃って、フォーメーションがきれいに出来てるの」
「ごめん、舞華。俺それ出来ない」
「でも、練習すれば!」
「じゃあ、舞華、明日ボールを落とさずにリフティング100回やってって言ってるのと一緒だよ」
言い返せなかった。
「確かに練習したら上手くなるし、出来るようになる。でも、得意じゃないものが急に出来るわけじゃないから。
お互い出来ることをしていったらいいじゃん」
「出来ること」
「うん、舞華だってリフティング10回だったら出来そうだろ?
それと一緒で、みんな出来ることをやったら楽しくなるさ」
私が出来たから、みんなも出来ると思い込んでいた。でも私は好きだから続けいて、しんどくてもやってこれた。
でもみんなは違う。
ダンスが好きじゃない子、得意じゃない子、しょうがなくやっている子、いろんな子がいることを忘れていた。
クラスの出し物だから、一生懸命やってくれると勘違いしていた。
そうじゃなかった。
もっとみんなの考えをひとつにしなくちゃ!
目標をひとつに!
私だけ出来ても完成しない!
「晴希、ありがとう!」
「舞華なら出来るさ」
絶望にいた私を晴希は救い出してくれた。
次の日、クラスのみんなと話し合いダンスの振り付けを変更し、練習を再開、見事成功をおさめた。
あの時の孤独感は今でも忘れてはいけない。
それを教えてくれた晴希のことも。
あれがあって私は大事な事に気付く事が出来た。




