雨の沼
ついにエピソード100まで来ました。
もっと内容を濃く出来るよう頑張って行きます!
晴希が俺との距離をあけるようになった気がした。
同じ高校に進み、相変わらず一緒に行動する事は多かったが、
「サッカー部一緒に入ろうぜ」
と誘ったが断られた。
あんなに好きだったのに、まさか入らないとは思わなかった。
受験に集中したいからと、あの試合以来一切サッカーをしてないのは知っていたが、きっぱり辞めるとは思っていなかった。
あの時とは違うんだ。
高校でリベンジしようぜ!
そう誘いたかったが、晴希はサッカーの話題さえ拒むようになった。
あれがトラウマになってるなら、少しでも拭ってやりたい。
でも、サッカーの話もしない。
俺にも遠慮しているように見える。
ひとこと相談してくれたっていいじゃないか?
抱え込んでいる晴希の力になれることはないのか?
何でも気の合う友達だと思っていたのは俺だけだったのか?
だが、晴希の性格上、邪魔をしたくないという気持ちが大きいことも知っていた。
だからこそ、『晴希が話してくれるまで待とう』という考えになり、無理に聞き出すことはしなかった。
それ以上距離を埋めることをしなかった。
だんだんと体が沈むように重くなっていく。
そうしている間に、晴希が亡くなった。
第一報を聞いたのは部活が終わったあとだった。
他の部活のやつらが騒いでいた。
「なんかうちの学校の生徒が重罪者で発光したらしい」
「怖っ。近くに犯罪者がいるってことか?」
「さっきニュース見たやつから、近くで発光者が出たらしい。しかも、発光者がうちの制服に似たの着てるから帰り気をつけろって」
「どんな重罪犯したんだよ?」
「知らねーよ。俺もこのメッセしか情報ねぇよ」
そんな会話だった。
どうせ発光したならすぐに捕まるだろうと思っていた。
それが晴希だとは思わなかった。
家に帰ると、種岡から連絡があった。
「ねぇ!晴希と連絡取れないんだけど、廣田くん連絡取れる?」
だいぶ慌てた声で通話してきた。
「なんだよ?あのあと喧嘩でもしたのか?」
と冗談っぽく返すと
「そうじゃなくて!晴希のGPS反応がないの!廣田くんには晴希のGPS表示されてるよね?」
と必死な様子だった。
「何言ってんだよ?GPSがないわけないだろ?」
と言いながら、晴希のGPSを表示させようとするが『該当データはありません』としか出なかった。
何度も確認するが、何度やっても同じだった。
「俺も表示されない…」
そのひとことを聞くと
「最後に晴希に会った時、何か言ってなかった?
あのあと追いかけてもいなくて、街中発光者のニュースばっかりで、警官とか警備ロボットが多くて探せなくて。そしたら、その発光者が……晴希だって…。
でも晴希は重罪どころか犯罪をするような人じゃないし、何か事件巻き込まれただけだと思うの。
…でも、GPSの反応どこ探してもなくて。
ごめん、ありがとう!もう少し探してみる」
そう言って一方的に通話が切れた。
俺自身も信じられないまま、ニュースを調べてみると
『駅前で高校生発光。
逃走中に川に飛び込み自殺』
と書かれていた。
未成年ため、顔や名前書かれていなかったが、ネットに上がっている画像や動画をみると、晴希のようだった。
その映像には
「俺は何もやってない!」
と叫んでいた。
そうだ、晴希は重罪を犯すようなやつじゃない!
それは俺がよく知っている。
自分よりも、他人を優先するようなやつが犯罪者になるはずがない。
それに、いくら他人に迷惑かけたくないからって、自殺するようなやつじゃないし、迷惑かけたくないから犯罪も犯さない。
そこは違和感しかなかった。
だが次の日、学校に行くと周囲は晴希が犯罪者という話題で持ち切りだった。
『普段そんな風に見えなかったのに、見かけによらずってやつ?』
『何考えてるかわかんないやつだったもんな』
『同じクラスにそんな人がいるなんて怖い』
などと好き勝手な言われようだった。
「よぉ、大地おはよう!
お前今まで大丈夫だったか?
犯罪者の近くいたんだろ?
何か取られたりしてないのか?」
などと声をかけてくるやつもいた。
晴希のこと何も知らないやつが、知った風に言うな!
そんな怒りがこみ上げてきた。
だが、高校になってから晴希の本心を知らない俺には、言い返すことが出来なかった。
そのままお通夜が終わり、あっという間に時間が過ぎ、いつも隣にいた晴希が、いないのが当たり前になってしまった。
周りも時間が経つにつれ、晴希がいなかったかのような日常を送るようになっていた。
俺は親友だと思っていたのに、一方的だったのか?
だんだんと暗闇が迫ってくる。
どこを見渡しても、真っ暗だ。
息苦しくもなってきた。
もう、前みたいに他愛もない話で笑ったり、サッカー出来ないのか?
何でも話してくれよ!
俺じゃ頼りなくても、話するだけでも気持ちが楽になることってあるじゃないか!
だから、あの日種岡が
『晴希は生きてる』
と言い張り、晴希を探して本当によかった。
あのまま諦めていたら、俺は親友を失ったままだった。
すると、目の前にぼんやりとひかる場所が現れた。
その光の方へ走って行く。
晴希が生きてるって知って、再会して、やっぱり一緒にいると楽しいんだ!
発光させられても、めげずに帰って来たり、トキさん達を助けようとしたり、すごいよ!
俺ならそんな事は出来ない。
すぐに落ち込んで、行動になんか移せない。
だから、今度は俺が晴希の力になりたいんだ!
いつもフォローしてもらってばかりだったから、俺が返す番だ。
足元が沼のようで足を取られて動きづらい。
でも、晴希はもっと辛い中駆け回って来たんだ!
どれだけ足が重くても、光の方へ這い上がって行く。
ここで負けてたまるか!
サッカーで鍛えた足腰舐めるなよ!
まだ、晴希の役に立ててないんだ!
その精神で光の先へ辿りついた。
そこには扉があり、開けると別の道へ続いていた。
扉の先が明るく、ふと今までいた部屋を振り返ると、真っ暗で蟻地獄のような沼になっていた。
そのまま飲み込まれていたら、出て来れなかっただろうと思うとゾッとした。
すぐに部屋の外に出て扉を閉めた。
こんなところで時間を使っている場合じゃない。
少しでも早く先へ、その思いで走り出した。




