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~ファリカ。過去1~

過去編

 ――魔力を持たずに生まれた。


 ひそひそひそ

『ミルキーウェイ公爵の顔に泥を塗っってますね』

『どこであんな出来損ないが生まれたんでしょうね』

 楽しげにひそひそとそれでいてこちらに聞かせる魂胆がありありと見て取れる態度をずっと取られて、そんな大人を見て、子供も同じようにこちらを馬鹿にして公爵令嬢という身分をお構いなしとばかりにありとあらゆるいたずらをされ続けてきた。


 それでもわたくしがわたくしらしくいられたのは、陰口にさらされていてもお構いなしにわたくしを愛してくださった家族がいたからだ。


『昔は魔力を持っている人は少なかったんだよ』

 お父さまはそう昔話を教えてくれた。


『じゃあ、なんで魔力を持つ人が増えたんですかっ⁉』

 お母さまの膝の上に座りながら尋ねるとお父さまは笑いながら隣に座っていたお兄さまに一声掛けて立ち上がる。


『知りたいなら、調べなさい』

 立ち上がり、本棚から取り出した一冊の本を渡してくれる。


『僕も前読んだから。ファリカも読むといい。分からない言葉は辞書を引いて調べるんだよ。その方が面白いからね』

 どこか面白がるようなお兄さまの言葉に促されて、辞書を片手に本を読む続けた。


 分からない言葉は辞書で調べる。

 辞書で調べた言葉の意味が分からないのでその言葉もまた辞書で調べる。

 辞書と本の傍にはメモ用の紙が置かれるようになり、読み進めていき………。


『神様が与えた罰……』

 と言う目から鱗の内容を知った。


 昔、魔力は選ばれた人たちしか持てなかった。

 選ばれた人たちは神様に一番近い【聖女】と【神子】の言葉に従って、世界をより良くしようとしていたのだが、そのうち魔力を持ち、選ばれた存在であると言う事が驕りを生み。【聖女】と【神子】を殺害した。


 神は怒り狂い、選ばれた人たちから魔力を奪い、一部の者が力を持つ事が危険だと判断して、この世界のほとんどの人たちに魔力を細かく砕いて与えたのだと。


『知らなかった…………』

 思ってもみなかった内容でそれが真実か偽りか分からないが、少なくてもそれが一般的に言われていない事実が興味を引いた。


 それが始まり――。


 それ以来いろんな書物を読み漁り、気になる事柄があるとすぐに調べに行くようになった。 


 たくさんの書物を読めること。知りたいと思ったらすぐに行動に移せることが出来るのもすべて自分が公爵令嬢という地位も財力もあるからだと知っているからこそ。自分は魔力が無いという事実を悔しく思わなかった。


 自分は恵まれている。

 そして、その手に入れた知識を活用したい。


 そんな思いの中。


 魔力測定とスキル把握のための儀式を行うために神殿に向かった。


 透明の平たい板が額に充てられたと思ったら。

『………何かの卵?』

 スキルの場所が文字化けをしていて、辛うじて卵という字が読める。


『………特殊スキルだな』

 ポーラ様と呼ばれた人が教えてくれる。【預言者】という特殊なスキルで人々のスキルなどを教えてくれる方だと聞いた。


『特殊スキル?』

『ある条件が発生すれば覚醒するスキルだ。かつてはきちんと表記されていたが、ある理由で表記されなくなった』

 だから、どんなスキルがあるか分からないと言われた。


 スキルが不明で、魔力がゼロだというわたくしの話を聞いてますますわたくしを嘲笑う声が耳に届いて悲しかった。


 わたくしは恵まれた環境にいて、たくさん大事にされたのに恩を返せず、こんな嘲笑われる立場でお父様とお母様に申し訳なく思った。


 だけど、それで落ち込んでいたらますます悲しませてしまうとキッと前を見て泣くのを堪えた。気にしないと振舞い続けた。


 そんな日々の中。


 ぴこーん

――特殊スキル【賢者】が孵化しました。

 という声と共に額に金色の瞳が出現したのだ。


『賢者?』

 特殊スキルの卵と聞いていたが、賢者とは何か、この金色の瞳は何だろうかと分からずに何か書かれていないかと本を探そうとするが、本棚に向かおうとする身体よりも先に金色の瞳が反応して、ある一冊の本に視線を送り、その本を読めばいいのだと何となく悟る。


 すぐにその本を取り出して、開いてみる。

「これ……古語で書かれているから読むのを後回しにしていた………」

 今では意味が分からない文字が多いので専用の辞書を取り寄せてもらおうと思って後回しにしていた本をぺらぺらと開くと以前は全く読めなかった古語がすべて理解できる。


 特殊スキル。

 聖女。

 神子。

 預言者。

 勇者。

 英雄。

 賢者。

 守護者。


 他にもいろいろあったが、どれも普通にはないスキル。


 そして、その特殊スキルの事が詳しく書かれていて、スキルが孵化……スキルとして覚醒するまで、すべて【**の卵】とスキルが表記されていて、何のスキルか分からないようになっている。


 それはかつて、そのスキルの卵と書かれていた時、そのスキルを持つ人を利用しようと近付いた人々によってスキルが覚醒するきっかけを失い、スキルが消失したことが続いたからと説明が書かれていた。


 その一例として、英雄というスキルで説明されていたが、その内容が。


 英雄というスキルを持つ者に多くの人が群がり、コネづくりのために近付いて、英雄になるための修練も経験も積む事が出来ずに、覚醒できず堕落してしまったとあった。


 ああ、納得と思ってしまったわたくしは、運よく孵化できたのだが、孵化してすぐに周りの環境に大きな変化が訪れたのだった。

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