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「冤罪……?」

 ファリカの口から零れる言葉。


「人聞きの悪い!! 【賢者】のスキルを持っていながら私利私欲のために使い、聖女を害しようとしたのは事実だろう!!」

「私利私欲? 何の事でしょうか。少なくてもわたくしの【賢者】のスキルは私利私欲のために扱えばスキルをはく奪される代物です。もちろんそれは【賢者】だけではなくそれは、特殊スキルを持つ者全員に言える事ですけどね」

 ファリカの金色の瞳が現れる。


「久しぶりにこの国に戻りましたが、雨がよく降るようになりましたね。()()()()()()()でしょうか」

 それにしてはいささか……。

 と、どこか含みを持った言い方をするファリカの目は冷たい。


「お前の所為だろうっ!!」

 王子様が苛立ったようにファリカに向かって殴ろうと手を伸ばす。だが、

「ファリカに触らないでください」

 にこやかに微笑みながら間にすっと入ってきたゼファ。そのゼファの身体から透明な亀の甲羅のようなものが現れていて、王子を拒んでいる。


 そのいきなり現れた甲羅のような光に王子様が驚いたように目を見開いたが、すぐにそれを作り出したのがゼファに今更気付いたように忌々しそうに、

「化け物が………」

 と呟く。


「なるほど。ファリカを連れ去ったのはお前だったようだな!! 化け物同士お似合いだなっ!!」

 とこちらを馬鹿にしているように笑いだす。


「あ…貴方が……もしかして【守護者】?」

 そんなゼファに向かって王子様と共に現れた女性が馴れ馴れしく手を伸ばしてくるのを、

「ゼファに触れないでください」

 とファリカが手で制す。


「何でですかっ⁉ どうしてそんな意地悪をっ」

 と目に涙をためてくる女性。その女性を見て、王子が慌てたようにその女性を抱きしめ。


「マリスっ!! マリスに何をするんだっ⁉」

「何をおっしゃいますか。わたくしはわたくしの家族を守ったにすぎません」

 にこやかに微笑んでいるが目は笑っていない。


「ああ。そういえば、先程、わたくしの可愛いヘアラを無理やり連れて行こうとしましたね……」

 何をしようとしたのですか。

 殺気のこもった眼差しで問い詰めると。


「ヘアラ……?」

 誰の事だと言いかけて、王子様がこちらに視線を送る。


「もしかして、その【神子の卵】の事かっ⁉ お前っ!! 自分のスキルを利用して【神子の卵】を奪ったなっ!!」

 いきなりそんな結論をしたかと思ったら、

「さっさとこの犯罪者を捕らえよっ!!」

 と自分の後ろに向かって命じる。だが、後ろには誰もいない。


「何をしているっ⁉」

 それはこっちの言葉だ。

 この人は、この女の人と二人だけで入ってきたのだ。


「部下をどこにやったんだっ⁉」

「――それは異なき事」

 ポーラ様がどこかおかしそうに淡々としつつも口を開く。


「もともと招かざる者は入れない場所。()()次期王とその婚約者が権力を笠に掛けて入ってきたので仕方なく通しただけ」

 部下は入れるわけないだろうと告げる声に、

「そんなっ⁉ イザルド様は攫われた子供を助け出そうとしただけですよっ!!」

 それなのに。

「攫われた子供?」

 何を言っていると呆れた口調。


「ええ。人買いに攫われて、今もなお、あたしを酷い目に合わせたラウファリカ様に捕まっている可哀そうなその女の子ですっ!!」

「ファリカを悪く言わないでっ!!」

 なんなのこの人。ファリカに酷い目? 何でそんな噓を言い出すの。


「ファリカはヘアラを助けてくれた!! ヘアラという名前をくれて、毎日服を用意してくれて、ご飯もしっかりくれて………」

 馬小屋で馬と一緒に捨て置かれていない。

 服などなく、時折気まぐれにぼろぼろの物を与えられるだけ。着方も分からないのを馬鹿にしない。ご飯も残飯じゃない。


「攫われたんじゃない。魔力なしだから人買いに売り飛ばした!! 嘘を言ってファリカに酷い事言っているのは貴方でしょう!!」

 きっと睨むと、

「イザルド様……。ゼファリウム様………」

 縋るような声に、

「馴れ馴れしく呼ばないでください」

 とゼファが一刀両断する。


 そんなゼファに、マリスと呼ばれた女性がぽろぽろと保護欲を誘うような大粒の涙を流して、

「ひどい……貴方は私の【守護者】なのに……」

「貴様!! よくもマリスを泣かせたなっ!!」

 ぽろぽろと涙を流すそんなマリスを慰めるように王子がマリスを抱きしめてこちらに向かって怒鳴ってくる。

 そんな二人に冷めた目でゼファが、

「貴方の【守護者】になったつもりもないですし、いらないとも言っていましたよね」

 忘れたんですか?

 静かに淡々と事実を告げているような様に、ひどいとますます涙を流す。


「ひどい……なんでそんな事を……」

 しくしくと涙を流すが、その様に二人が呆れたような冷たい眼差しを向けている。


「ポーラ様」

 この二人はいつまでいるんですかともうさっさと追い出しましょうと言外に告げるファリカに、

「ああ。そのようだな」

 とぱちんと指を鳴らすと同時に魔術を展開させて、二人の姿が目の前から消えていく。


「これでもう大丈夫だろう。だが、外に出しただけですぐに付きまとってくるだろう」

「あの人たち何なの……? ヘアラに猫なで声をするし、ゼファに馴れ馴れしいし」

 気持ち悪いと告げると。


「ははっ。確かに気持ち悪いね」

「崖っぷちのお二人ですからね。ヘアラが特殊スキルの持ち主だから起死回生に利用しようと思ったんでしょうね」

 といい迷惑だわと告げてファリカは、

「ヘアラがここまで巻き込まれたのだから話をしましょうか。長い長い、不愉快な話」

「不愉快ってね」

 ファリカの言葉に、ゼファが苦笑いをした。


 なら、場所を用意させようと落ち着いて話せる場所をポーラ様が用意してくださった。




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