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まだストックあるので

 ゼファが武器を持って出ていくのを二人で見送った。が、

「さて、先に食べちゃいましょう」

 冷めたらもったいないわ。

 ファリカの言葉に。


「は~い」

 と席に着いて食事を始める。


 心配はしない。

 だって、大丈夫だから。


「ゼファの食事が冷めないといいけど」

「そうね~。何か温め直せる方法はないかしら……」

 ファリカの額の目が動く。


 賢者のスキルを持つファリカは()()()()()()()()()()以外なら調べようと思えばいくらでも知れべられる。

 その知識は、異世界の知識を含んでいると言われる。


 異世界の知識と言われてもぴんと来ないのだが、この家にある道具のほとんどはその異世界の知識をもとにしてこの世界に合うように改良して作られたものだと教えられた。


「まあ、そんな事が出来るのはゼファのおかげだけどね」

「ゼファはすごいですよね。森に来た人たちもきちんと対応できるだろうし」

 できないはずはない。だって、ゼファは。


「【守護者】のスキル持ちだからね」

 守る者が居れば、無敵だと言われるスキル。守るという基準は身体攻撃だけではなく、生活基準や精神的なものも含むというのだから常識の範疇を超えている。


 ファリカが【賢者】としての力を思う存分発揮できるのはゼファの【守護者】というスキルでファリカの知識をきちんと再現する事が出来るからだと教えてもらって、【守護者】ってなんだったっけと疑問を抱くほどだから。


 そんな事を考えながら食事を再開していたら予想よりも早くゼファが帰ってくる音がした。


「ただいま~」

 にこやかに大勢の騎士たちを縄で引き連れて外にある大木に縛り付けて放置。本当なら突っ込むところだが、ゼファは森に密猟者を見付けて樹に釣らしたり、ヘアラを連れていた奴隷商人を樹に結びつけたりetc.etc.


 つまりいつもの事だからと気にならなくなってしまったのだ。慣れって怖い。


「まだ暖かいといいけど」

 と連れてこられた騎士たちよりも食事の方に意識が向いているファリカに。


「暖かい料理でも冷めてしまってもファリカの料理はおいしいのでどちらでも構いませんよ」

 とにこやかに口説き文句を告げるゼファにファリカの顔が赤らむ。


「で、でも……ゼファには一番おいしい物を食べてもらいたいから……」

 顔を赤らめたままファリカが告げると。


「ファリカ……」

 嬉しそうに微笑むゼファ。ますます顔を赤らめて恥ずかしそうに笑うファリカ。


 二人の世界が出来上がっている。


「料理冷めるよ~」

 そんな二人につい突っ込みを入れると顔を赤らめたまま動き出して、

「そ、そうね」

「冷める前に食べないとー」

 とねじを巻いたブリキの人形のように動き出す。


 で、顔を赤らめたままゼファは食べて、時折ファリカの料理にほおを緩ませて褒めまくってファリカはそれを嬉しそうに聞いていたが、食べ終わるとすぐに放置していた問題に取り掛かる事になる。


「――で」

 ファリカが切り出す。


()()は何?」

 ちらりとファリカが木に縛り付けられている兵たちを見る。


「ああ。本当だったら森の獣に食べさせ(捨ててきた)かったけど、それをすると厄介そうだから仕方なく拾ってきた。すっごく残念だけど」

 かなり実感がこもっている口調だ。


「面倒ごとなのは分かるけど、放置しといた方が厄介だからね」

 と縛ってある樹に近づいて縄を解く。


「ほら、解いたから。でも、ファリカやヘアラに何かしたら」

 仕方ないなというばかりで解き、塀のい一人で一番偉そうな男に向かって、耳元で、

「死んだ方がましだという目に合わせる」

 一瞬殺気が出ていた。


「なんてね」

 にこっ

 冗談だよ告げるような口調だが、本気で殺気を放っていたし、冗談じゃないだろうなとこの場にいる誰もが気づいている。


「ゼファリウム……アルデバラン」

 ぼそっ

 兵の隊長さんがゼファの方を見て呟く。


「お前たちに危害を加えるつもりはない。ポーラ様の命令で森の奥に住む灰色の髪の少女を探しに来ただけだ」

 何か知らない単語………人の名前が出たなと思ったらゼファとファリカの表情が険しくなった。


「ポーラ様はわたくしがここにいる事を……」

「はっ、はい。ですが、あの騒動の際に王家に失望なされて伝えておりませんでした」

 聞かれていなかったなどというのもありますが。

 隊長の話を聞きながら、二人が険しい表情で頷くのが見える。


 いったいなんの話だろう。

 ファリカとゼファは駆け落ち夫婦なんだよね………。


「本来なら、このままお二人をそのままにしたかったようですが、民に被害が出ている現状で放置しておけないと」

「預言を出したのね………」

 ファリカの言葉に隊長が頷く。


「で、なんで、ヘアラなの?」

 そうだ。なんでそこで私の名前が出るんだろうと首を傾げると。


「…………聖女が力を失い、神の怒りを買いました。それを打破する方法は魔力を持たない灰色の髪の少女という預言を出して、その子供の両親の元に向かったのですが……」

「すでに人買いに売り飛ばした後と言う事ね」

「大方。売り飛ばしたと言えずに攫われたと言っていてもおかしくない」

 と言い出して、こちらが意味が分からずに困惑していると。隊長はどばどばと汗を流して、

「よ…よくご存じで……」

 と話をしたのだった。




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