悪戯っ子な寡男
山砕は拳を握り、早速と言わんばかりにけしかける。尖岩は許可もなく飛び込んできた拳を受け止めると、口角を上げ自身も戦闘態勢に入った。
二人は互いに楽しそうに自身の技を相手に打ち込む。戦闘術などは使われない、体術戦
互いの拳を交える中、山砕が話し出す。
「尖岩、俺の知らない間に捕まってさ。俺がどれだけ暇してたか知ってるのか⁈」
「知らねぇな! お前が自由に遊んでいる間、俺はあんな狭いところに五百年も入れられてたんだぞ」
「チビ助にはお似合いだよ! 俺との約束破りやがってよ!」
「そりゃ悪かったな弟クン、俺と数センチしかかわらねぇくせにさ! 俺がチビならお前もチビだぜ、三歳児!」
「チビに言われたない! チビ助!」
そんな事を言い合いながらまるで遊んでいるように戦う。それからしばらく遊んだ所で、満足した二人は同時に落ち着いた。
一拍の間が空いて、山砕は息をつく。
「はぁ。鈍っているお前にも勝てないとはなぁ……」
傍から見れば優劣が付いているかどうかは分かりにくいが、本人達なりの判断基準があるのだろう。
「ははっ、一昨日来やがれ。今日のお前、前より弱かったぞ」
「一昨日には来れないから、明後日くることにする。次こそ勝つからな! 覚悟してなよ!」
こんっとお互いの拳を軽くぶつけ、笑いあう。山砕はぴょんと飛び上がり、その場から去っていった。白刃と覇白の事には気が付いていなかったようだ。
尖岩は久しぶりに体を動かせてすっきりしている様子で。済んだところで、白刃に「すまねぇな」と言った。
「知り合いか?」
白刃が尋ねる。何の前触れもなしに現れて去っていったモンだから、こいつも理解が追い付いていないんだろうと解釈し、尖岩はそれに答えた。
「ん、あぁ。ガキん頃からのな! 山砕っていうんだ」
名前を教えたところで、白刃はどこか悪い顔をしている事に気が付いた。
その一方、とある屋敷の廊下では、帰宅してきた山砕と妻である女人が歩いていた。妻は山砕よりも身長が高く、見る人によっては夫婦というより姉弟に見えてしまうだろう。
山砕が来ている「猪」の文字が書かれている服も彼女のチョイスだ。どうやら異世界から仕入れた品だそうで、可愛いから買ってきたらしい。
よくわからないチョイスではあるが、妻が「旦那様に似合うと思って」と差し出されてしまっては、着ないという選択肢はなかったわけで。しかし、今では一番気に入っている服となっている。
「旦那様、どこにお出かけなさっていたのですか?」
歩いていると、彼女が笑顔で尋ねてくる。
「アイツに会いに行ったんだよ。話したことあるだろ、尖岩だよ」
「あぁ、旦那様のご兄弟の」
「まぁ、そうとも言うのかな? 兄弟兼友達って感じかなぁ」
嬉しそうに話す彼に、妻は可愛らしく笑う。そして、言い忘れていたことを思い出し、ぱぁっと表情を明るくした。
「そうだ旦那様、今日のお夕食はご馳走なのですよ! 精一杯作らせていただきましたの、どうかお召し上がりくださいませ」
「お、楽しみ! だけど、あまり食べるとまた太っちゃうかな……」
「あら、いっぱい食べる旦那様が大好きなのです。ですから遠慮なくっ」
愛妻の手作り御馳走となれば、喜ばない訳がない。また少し肉が付いてしまうかもしれないが、その分動けばいい話だ。尖岩もやっと出て来たところだし。
そう、とても楽しそうな山砕。そんな時、背後から恐る恐ると自分を呼ぶ声が聞こえる。
「あ、あの……」
「ん、どうした?」
「その、やはり奥様は……」
声をかけてきたその男は、様子を見ながらも、なんとか言いたいことを伝えようとしている。しかし、皆まで言わずとも何を言われようとしているかは分かった。
「いいじゃん、誰にも迷惑をかけているわけじゃないし。俺の勝手でしょ」
山砕の声がワントーン下がる。沈んだ表情を浮かべ、妻の手をギュッと握った。
「しかし、やはり……」
男は、言いたかったその一言を口にすることはできなかった。山砕の意識が離れた途端に生気を宿さなくなった「それ」の瞳が、じっと己を睨みつけているように見えたから。
底冷えするような感覚が走り、男は慌てて視線を逸らす。
「申し訳ありません、過ぎた真似を、失礼しますっ」
男はたったと廊下を駆けていく。
やはり自分ではダメなのだ。幸せであるならそれでいいのかもしれない、たがしかし、過去に執着しすぎて現実を見ないというのであれば、それはいけない。
「超越者様。おいでください、お話が……」
屋敷から少し離れた所で、天に呼びかける。そうすると、超越者は呼びかけに応え空からふよふよと降りてきた。
『はぁい、山砕の様子はどう?』
「それが……」
言いづらそうに淀ませる様子を見て、超越者は『まぁそうだよねぇ』と苦笑いする。
『大体分かるから、言わなくて大乗だよ。うん、見守りご苦労さまね』
ぽんぽんと、男の頭を撫でる。十分に成長しきった大人でも、彼にとっては子ども同然なのだろう。
その後に、超越者はニコリと笑う。
『大丈夫だよ。もうすぐね、強制的に終止符打ってくれる人が来るから! ちょっと、耳貸して』
ひょいひょいと手招きをされ、男が耳を寄せる。ごにょごにょと耳打ちで話すと、その言葉を聞いた彼は少しだけ目をも開きいてから、覚悟を決めたように頷く。
「わかりました」
『うん、よろしくねー』
ひらひらと手を振って帰っていく超越者を見送ると、彼は安堵と不安が混じった笑みを浮かべた。
あのお方の言うことが正しいのであれば、あとは待つだけだ。男は屋敷の方向に戻って行った。
荒野を抜けて少し歩いた先、山道に入ったところを歩いている間、尖岩は考えていた。今から古くからの友人に会いにいくのだが、何か手土産でも持って行った方が良いかと。しかし、渡す暇なく白刃がなにかよからぬことをする可能性もあるなぁと考え、白刃を見てみる。
白刃が乗っているこの白馬は、間違いなく覇白だ。龍でしかも第二王子である彼が馬に化けて人を乗せているなんて前代未聞だろうと、尖岩は苦笑いを浮かべる。
その時ふと、いつだったか「山砕が結婚した」という情報をもらったなと思い出した。何年前だか覚えていないが結婚したと言う事は間違いない。だってあれ程驚いた記憶があるのだ、記憶違いな訳がない。
何か、お祝いの品でも持っていくべきだろうか。
尖岩は、愉快そうな白刃に声を掛ける。
「なぁ白刃。ご祝儀というか、結婚祝いになりそうなもの持ってない?」
「結婚祝い? 誰のだ」
「三歳児の。アイツ結婚してたからさ。せっかくだし祝ってやろうと思ってな」
白刃に尋ねてみると、やはり特には持ってないそうだ。
ちらっと馬として白刃を乗せている覇白にも目をやるが、持ってはいないだろう。何せ今馬の姿なのだから。
まぁそういうのはいらないだろう、今更プレゼントを渡しあうような仲でもない。適当に奥さんの顔でも見て、それで既婚をからかってやれば十分な結婚祝いだ。
そんな事を考えながら山道を進むと、屋敷が見えてくる。引っ越しをしていなければ、あそこにまだ住んでいるはずだ。
白刃達が向かっていると、屋敷の方から急いで駆けてくる人の影があった。
「いらっしゃいませ! もしかして、白刃様でございますか?」
その男は白刃達の前に立ち止まると、必死な様子で尋ねてくる。白刃はすっと笑みを作り、それに答えた。
「はい。私が白刃ですが、何か御用でしょうか?」
「それはよかった。お待ちしておりました、少々お話よろしいでしょうか。旦那様……山砕様についてなのですが」
様子が普通ではない。尖岩は彼奴がどうしたのだろうと不安に思いながら、視線を白刃に移す。
「えぇ、聞きましょう」
「ありがとうございます! 今旦那様は奥様とお部屋にいらっしゃるので、悟られないようにご案内いたします」
深く頭を下げ、その先に案内する。そして、あまり物音を立てぬようにしながら屋敷の裏の部屋に渡った。
小さめな座敷に白刃と尖岩が座り、その外では馬としての覇白が繋がれる形で待機している。勿論彼は不服そうだったが、流石に一般人の前で馬として喋る訳にも行かず、何も言わずに座っていた。
「それで、お話とは一体?」
白刃が人のいい笑顔で尋ねると、男はゆっくりと話だす。
「……数年前、旦那様は奥様とご結婚なさいました」
「しかし、奥様は生まれつき病を患っている方でして。大人になってからは病状も落ち着き、元気だったのですが、ご結婚なされてから一年ほど経った頃に病状が悪化し、急死してしまわれまして……」
物悲し気な暗い表情で話した男。しかし、矛盾点があった事に当然白刃も尖岩も気付いていた。
「だけどさっき、嫁さんと部屋にいるって」
尖岩がそのことを言うと、男は悲しそうに笑う。
「はい。奥様はその時確かに亡くなられました。しかし、旦那様は、奥様の体に無理やり魂を呼び戻し、再び動けるようにしたのです」
「山砕様が力を共有なされた時だけ、奥様は一時的に生き返ります」
その話を聞いて白刃はピンときた。聞いた感じで、当てはまる術が知識にある。
「なるほど。疑似蘇生の術ですか」
頷くと、隣で尖岩が首を傾げた。
「なにそれ?」
尖岩からすれば聞き馴染のない言葉だった。名前から推測は出来るが、どんなものか気になり訊いてみる。
「簡単に言えば、先ほどこのお方が話してくれた通りの術ですよ。死んだ者の体に魂を、正確に言えば魂の模造品を入れることによって、自身の力を注いでいる間だけ疑似的に生き返らせるのです」
「しかし、これはあくまでも模造であり、本当に生き返った訳ではありません。偽物に生きるそれは確かに生きている時と同じ言葉を話し、同じ動きをします。ですが、これは飽く迄も紛い物です。どう足掻いても、その魂は模造品ですから。ですから、疑似蘇生という名なのですよ」
確かに、山砕ならそんな事もしそうだ。長い付き合いである尖岩にとっては、容易く想像出来た。
昔から一つの物に惚れ込むと執着する質で、言えば捨てられない人だったのだ。好きで結婚した女人相手となれば、そうなってしまうのだろう。しかも、別れが来たのは一緒になってまだ一年しか経っていない頃だ。
「旦那様が幸せなら邪魔はしないほうがいいのかもしれません。ですが、紛い物は紛い物……。お願いします、どうか彼を説得してください」
深いお辞儀から、どれほど本気の願いかは伝わってきた。
それに、山砕を連れていくには、どちらにせよ叶えてやらねばならないだろう。
「分かりました。では、こちらでお待ちください」
笑みを浮かべて答えると、男から部屋を教えてもらう。場所を把握すると、白刃は立ち上がり尖岩もそれに付いて行った。
「どうするつもりなんだよ?」
白刃の横で、心配した様子で尋ねてくる。
「どうするもこうするも、教えてやればいいだけの話だ」
いつもの白刃が、平然とそう答える。そんなとこを話している内に、話し声が聞こえる部屋の前に付いた。
この声は、確かに山砕だ。そしてもう一つ聞こえるものが、彼の妻であった者だろう。
「なぁ白刃」
尖岩が声を掛けるより先に。白刃は何の前触れもなしに部屋の襖を荒々しく開け、驚いている奴等の事は気にせずに言い放つ。
「来い」
本当に、その一言だけだった。初対面であるのになんの装いもなしに。
山砕は驚くと同時に突然やってきた知らない奴に対しての怯えも見せていた。これは良くない空気だと、尖岩は白刃の後ろからひょこっと顔を出して、小さく手を振る。
「よ、よぉ山砕。来ちゃった」
「尖岩! えっと、これはどういう……」
困惑している山砕の身の横には、動かない妻の体があった。それを見て尖岩は先ほどの話を確信に変えて、しょんぼりとした顔になる。
「な、なぁ山砕。その人が奥さん?」
「あ、うん! そうそう、そう言えば紹介してなかったよな! お前牢屋にいるんだもん、会いに行けないっての」
尖岩に言われ、再び妻に意識を向ける。そうすれば、彼女は再び動き出し、まぁと声をあげる。
立ち上がったそれは、尖岩の前に立つと、にこりと笑う。
「もしかして貴方が尖岩さん?」
「おう、そうだぜ」
「そうですか! 旦那様から幾度か話は聞いていまして、お会いしてみたかったのです。それでそちらのお方は、尖岩さんのご友人さんですか?」
自分に話を向けられても、白刃は答えずにじっと見詰めて観察していた。肌にも血色があり、その眼も生きている人間のモノだ。何も知らなければ誰も彼女を死人だとは思わないだろう。
今度は山砕に視線を移す。そして、どこか後ろめたさを感じていそうなそいつに、一つ問うてみた。
「おい、山砕。訊くぞ、これは本当にお前の妻か?」
「本当に俺の妻だよ、それは間違いない」
「そうか」
確かに、何の嘘も言っていない。しかし、それで逃げられるわけもない。
「じゃあ、訊き方を変えよう」
「こいつは、本当に生きているのか?」
それには何も、答えられなかった。
重い空気が流れているその中で、妻の方がゆっくりと口を開く。
「……旦那様」
「もう、終わらせませんか?」
小さい笑みを見せ、そう告げる。山砕は少し間を開けてから「嫌だ」とだけ答えた。
こういう時、何をすればいいかを尖岩は知っていた。だが、どうにか説得する形に持っていこうとしてみる。
「なぁ山砕。やっぱし、それはやめた方がいいと思うぞ。どっちにしろ奥さんは死んでいるんだ、そんな事しても、虚しいだけだろ?」
それでも何も答えてくれなかった。
「分かった」
白刃が一言だけ発して、手の中に力を集めはじめる。
「ま、待って。何をするつもり……?」
「お前が止めることが出来ないのなら、俺が終わらせる。模造の魂を壊してしまえば、全て終わる事だろう」
それを聞いて、山砕の中で血の気が引く気配がした。
それをされたら、本当に全てが無くなってしまう。
「嫌なら、お前が終わらせろ。選択できるのはそのどちらかだ」
終わらせなければいけない。受け止めなければならない。怖くて、目を背けていた事実を目の当たりにする日が来てしまったのだ。
妻は何も言わずにこちらを見ている。
嫌だ。嫌だけど、今ここで、どうしても終わせなければならないというのなら。この、己の手で。
彼女に近寄ると、彼女は優しく微笑む。
「旦那様。短い間でしたが、楽しかったです。貴方と過ごすことが出来て、嬉しかった」
「……うん。俺も」
力を浮かべた山砕の手を取り、自身の胸に押し当てる。最期にまた笑うと、彼女の中の魂が壊され、核を失った肉体はその場に倒れこんだ。
昔から物を捨てられなかった。何に使うかも分からない空き箱を大切に取っていれば、捨てろと言っても捨てなかった。そういう時、何をすればいいのか。山砕の場合、それは強制的に捨てる事だった。
この場合も、強制的に捨てたと同じだろう。尖岩は静かに泣き崩れる彼に気の利いた一言でもかけてやろうかと考えるが、何も思いつかなかった。
時が過ぎるのが数倍早く感じる。白刃は何も言わないし、これは自分が何かをしなければいけない。そう思って焦っていると、はっと思いついたことを口走る。
「そうだ山砕! いっちょ戦うか! そんでもって、一緒にうまいモンでも食べに行ってさ!」
そう言われると、山砕は顔を上げる。
「約束、やっと果たしてくれる気になったんだ」
「あぁ、戦わせろ。今度こそ、俺が勝つから!」
安心した尖岩は笑みを浮かべ、拳を突きだす。山砕は小さく笑って己の拳をこつんとぶつけた。
お互いに、五百年前から変わっていなかったようだ。
その様子を見届けると、白刃は部屋から出て、頼み事をしてきた男が待っている場所に戻る。
「白刃様、どうだったでしょうか……?」
「えぇ、問題なく」
いつもの装いで答えると、男は安心したように顔を綻ばせ、大きく頭を下げた。
「ありがとうございます」
「お礼には及びませんよ。最終的に踏み出したのは彼ですから」
「しかし、代わりにと言っては何ですが、一つお願いがありまして」
ここぞとばかりに、そんな風に切り出す。
「はい! なんでもお申し付けください」
「では、山砕を私に預けていただきたいのです」
そう申し出てみると、彼はなんとも快く受け入れてくれた。結局は本人に訊かなければならない事なのだが、そこは大丈夫だ。何故かと言うと、嫌がっても関係なく強制的に連れて行く予定だから。
庭の方に出てみると、二人が見事な戦いを繰り広げて、溜まっていた物やそれらすべてを発散していた。それを横目に、覇白を繋いでいる所に戻って顔を見せる。
覇白は白刃を見ると、直ぐに立ち上がって話しかけてきた。
「終わったか?」
「あぁ、終わったぞ」
「そうか。ではこの縄を早急に解いてくれ、飼われているみたいで嫌だ」
やはりこれは嫌みたいだ。解いてやってもいいが、なんだろう、嫌だと言われると放置したくなる。
白刃はすっとその場から離れ、近くの縁側に座って眺めていることにした。
「おい、白刃」
とりあえず、こいつの抗議は無視していた。
普通に、人の形になって自分で解けばいいのに。こいつ馬鹿なんかな。そう思いながら見ていると、本人もそれに気付いたようで人の形になると、首に結ばれていたその縄を解いた。
そして何事もなかったかのように、白刃から少し離れた所に腰を下ろす。
「白刃、何を考えている?」
無言で何かを考えている白刃に、一応問うてみる。答えは覇白の予想していたものと同じであった。
「ん、束縛ってのもいいなって」
「そうか……」
その時、向こうでの戦いが終わったのか、二人の話し声が聞こえてきた。その後に、尖岩が山砕の腕を引っ張ってこちらにやってくる。
「白刃ー!」
「終わったか」
「おう」
尖岩はちらりと山砕に目をやり、その背中を押す。
「白刃、確かこいつも連れていくんだろ?」
「あぁ、その通りだ」
なぜだろう、白刃は今とてもワクワクしていた。そんな空気を山砕は察したようで。
「なぁ、なんかこいつ、怖いんだけど……」
本能的に察知した危険だ。尖岩は「一日一緒にいれば慣れる!」という暴論をかまして、背中をバシンバシンと叩いてやった。
「俺は白刃で、こいつは覇白。龍で、俺の馬だ」
龍を馬として扱っている時点でなぁと、覇白に目をやると、否定も
しないで視線を逸らされた。
「い、一応訊くけど、尖岩はお前の何なの?」
「玩具」
その問いに、白刃は悪い笑みでそう答える。あ、聞かなきゃよかった。山砕は軽く後悔をした。