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第94話 校舎案内

 柊先輩の先導でやっと校舎案内が始まった。

 

 俺は景樹(カゲキ)と岡崎先生の3人で一番後ろからついていく。


 柊先輩はこのクラスの積極的な女子に囲まれてるか。


 あやねるは何とか柊先輩のところに行こうとしてるようだが、なかなか難しそうだ。


 ああ、村さんが助けに来たようだな。

 朝の件で、事情知ってるからな。


 結構時間がかかってる感じだな。

 先生もさっきから腕時計に視線落としてる。


 そう思っていると、前から違う組が歩いてきた。

 先頭は委員会説明の時、司会をしていた男子の先輩だ。確か辺見先輩って言ったかな。


 柊先輩が辺見先輩に何か話しかけてるな。

 謝ってるっぽい。

 やっぱり遅れてるんだ。


 そんなことを考えていたら伊乃莉(イノリ)があやねるに声を掛けていた。

 ってことは、1-Fか。ああ、やっぱりあいつがいた。

 相変わらず、すべてに対して気に食わないような感じ、丸出しだな。


(まったくだな。大江戸天(オオエドタカシ)か。親御さんは腰の低い人だったんで、本人迄話をしてなかったな。)


(えっ、それ、初めて聞いた)


(オオエドさんのところは、義理の父親になるんだ。実の母親と再婚でな。結構、お子さんとの対応に心を痛めていた感じだったよ。いじめのリーダーは岩谷勝(イワタニマサル)君だったから、主にそちらに私と鶴来(ツルギ)さんで対応したってのもあってな)


 こっちに気付いたみたいだな。

 思いっきり睨んできやがった。


(本当に成長というものがないな。充分更生の機会を与えたつもりだったんだが。本人には全く通じてないって訳か)


(らしいね。以前の俺ならビビってしまうところだが、見る限り弱い犬程よく吠えるって感じだ)


 何に不満があるんだか、こちらを睨む大江戸の顔は醜く歪んでる。


(まあ、すべてを人のせいにしてると、あんな顔になるな。よく覚えておけ、光人(ライト)


(自分で努力せず、そして自分の思い通りにならないとすべて人が悪いと言い出す。そんなとこか)


 奴一人で何か出来るわけがないが…。


(同じ学校だ。注意はしておかないとな。もし、何かあるようなら全面的にバックアップする。心配するな、光人。お前の大事な人も含めて)


(頼む、親父)


 俺は自分の大事な人を守りたい。

 その思いを瞳に込めて、睨み続ける大江戸の視線に真っ向からぶつける。


 不安そうな目で俺を見ているあやねるの姿が視界の隅に映っている。


 大江戸の視線がぐらつく。

 そして、外した。


 1-Fとすれ違う。

 伊乃莉が軽く手を振ってる。

 俺も軽く笑いながら手を振っておく。

 あやねるがまた微妙な顔で俺を見ていた。

 隣に村さんも来て何か話しているようだが、ここまでは内容は聞こえない。


「大丈夫か、光人。あいつとなんかあったのか?」


 景樹が聞いてきた。

 横で先生も困った顔をしてる。


「うーん、ちょっとな。あいつ、大江戸って言うんだけど、同じ伊薙(イナギ)中なんだ。俺は気にしてないんだが、あっちは違うらしい。」


 景樹がまた変に興味を持ってきたらしい。


 まさかそっちの気があるのかと思って言ったら、頭をはたかれた。


 横で岡崎先生がまた腹を抱えてる。


 そんな俺たちを見ていた須藤が寄ってきた。


「白石ってさ、このたった2日で、いろいろやってくれるよな。」


「いや、まあ、別に俺がしたくてやってるわけではないんだが…。」


「平穏な日常を求めている人物には、見えんよな。」


 景樹がそう言って会話に入ってきた。


「ああ、俺、まだ自己紹介してなかったよな。佐藤景樹、よろしく、須藤。」


「あれ、僕のこと知ってんの。」


「さっき結構ユニークな自己紹介してただろう。光人の悲惨な結末の小説出来たら、ぜってー読ませてくれよな!」


「是非とも。本気で書くつもりだから。ということで、白石はもっと吹っ飛んだことして、ネタの提供してくれ。」


「やだよ。俺は平穏な日常をこよなく愛する一般男子生徒のモブ男くんなんだよ。お前の小説のネタ作りのために生きてるわけじゃない。」


「ごめん、言い方が悪かった。普通に生きてくれれば十分。俺が面白くしてやる。」


 須藤が胸を張って言った。

 なに自信持ってんだか。


「でも、須藤が面白く書くより、多分光人はその斜め上を行くと思うぜ。」


「確かに。」


 この二人は俺を何だと思ってるんだ。


(面白い見世物?期待には答えてやれよ、光人)


「ほら、お前ら、こんなところで漫才なんかしないで、柊に…って、あれ、なんであいつ。」


 前を見ると、何故か近くまで柊先輩が来てこっちを見てる。

 あ、村さんに怒られてる。


 結構案内が遅れてるはずなんだけど…。


「ほら、お前ら、早くしろ!」


 あっ、先生らしいことした!珍しい。


「白石、その意外そうな顔、やめろ!」


 先生は俺にそう言って、柊先輩を促す。

 先輩は少し舌を出して可愛い顔を先生に向けた。

 しかし先生は柊先輩のそんなコケティッシュな顔に冷ややかな目を向けた。


「怒られちゃった。」


 周りの生徒にそう笑いながら、柊先輩は駆け足で残りの施設を回った。




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